「近寄らないでください熱い」 「熱くたっていいじゃないの、そういう季節だし」 「孫市に近寄られると吐き気がします」 「そんなお前も俺は愛し抜くぜ」 「きもちわる」 沿岸に座って布団をかぶっている彼女は、顔が真っ赤であった。そう、風邪。寝ていると頭が痛くなるので、黙って座ることにしたのだが、孫市に邪魔される始末だった。 「あの、ここにいないで町の可愛い子でもナンパしてきたらどうですか」 「熱くてだるいからここにいるのに」 「今日は戦いに出かける予定無いんですか?」 「無いね」 孫市が笑顔で言うと、彼女は舌打ちして、布団に横になった。どうせ座っても変わらないことが分かってしまったから。めまいがして、冗談抜きで吐き気がした。夏風邪を甘く見るんじゃなかった。 「早くどっか行ってくださいよ、風邪酷くなってきたんで、移りますよ」 彼女はいい加減に疲れてきたので、もう寝てしまおうと思った。それから薬に手を伸ばそうとした。 「なら俺に移せば良いよ」 ぱっと手を払いのけられて、孫市が薬を取った。それから口に含むと、素早く彼女の口に含ませ飲ませた。 「ちゃんと飲んだな。よし、これで早く治るだろ」 「ふ、普通に飲ませる方法は無いんですか…!」 「何?もう一回?」 「頼んでません!」 「顔真っ赤にしちゃって」 「風邪なんですけど」 「…悪くはないだろ?」 「悪くは…ない、かもしれないです」 110420 |