「今日はポッキーの日だぞ、名前」
「う、うん、そだね」
「それでだ。お前が好きなポッキー買っておいたぞ」
「あ、ありがとう」
「・・・・・・」
「・・・どしたの清正」

せっかくの日曜日だ、家に来ないかと清正に誘われて、夕方に家に着いたのだが。
いつもは清正の部屋で一緒にゲームしたり喋ったりして、それから家まで送ってもらって、みたいな流れなのに今日はなんでかそわそわしている。
もしかして、と思ったらポッキーを差し出してきた。いくら鈍感とかそういうのじゃなくても、ポッキーの日といえば、恋人がやることは、その、あれだろう。でも目の前の清正はポッキーを差し出したままじっとこちらを見たまま。

「えっと、ポッキー、もらうね」
「お、おう」
「・・・どしたの?」
「お前が食ってると美味しそうに見える」
「食べる?」

ちょっと意地悪してやろうと思ってポッキーをくわえて待ってみた。するとじわじわと距離をつ詰めて、ぽきんと少しだけ食べた。それを食べ終わると、ちょっとずつ、ちょっとずつ、ぽきんぽきんと食べていく。ときどき聞こえる息が、静かな部屋に溶けていく。

「あと少しだな」

ニヤッと笑う余裕も見せ始めたのには、こちらが赤面するしかなかった。すると、まだ長さはあったはずなのに、いつのまにか頬に両手を添えられて一度にぎりぎりの距離まで食べてしまった。キスをしたわけじゃないけれど、息がそばで聞こえてきて背筋がぴんとした。

「も、もう無くなったよ」
「まだ足りないから、そのままじっとしてろ」

そのままぺろりと口のあたりを舐められた。舌でなぞられる度にちゅる、と音が鳴る。もうなんだか清正はこの状況を楽しんでるみたいだった。息が出来なくなって、頬を押さえている手を握ると、離してくれて呼吸が出来たが、すぐまた塞がれてしまった。もう頭の酸素が無くなってきたような感覚がしてくらくらする。それなのに清正と来たら、同じく顔を真っ赤にしたまま一生懸命口づけをしてくる。
私はすっかり清正のペースにのせられているような気がして、むりやり清正を引き剥がした。

「美味しかったか?」
「何が美味しかった、って、苦しかった」
「だろうな」
「でも、いつもよりは、その、美味しかったかな」
「お、お前から誘ってきたんだからな…!!」

まだポッキーはたくさんあるわけで。
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それにしてもこの清正ノリノリである