※注意




向かい合うと、彼の目には暁の光が溶け込んでいた。先ほどまで縁側でのんびりと話をしていただけなのに、今はひどく大人びた顔を私に向けている。私はその色を眺めた。

「俺の顔に何か付いているか?」
「いえ…光が溶け込んでいるように見えたので、綺麗だなって」
「そうか、ありがとう」
「いえ、こちらこそ…」
「…だが、俺が今興味があるのはそれじゃないな」

宗茂の目がすっと細められると、そっと顔を寄せた。このままだと、口づけをされそうだと思ってぎゅっと目を瞑ると、鼻筋の方に何かが触れる感触がした。恐る恐る目を開けると、彼の顔がすぐ前にあって、名前の鼻筋を甘噛みしていた。

「む、宗茂殿っ……あ…!」

宗茂はそのまま口づけたり、ちょっと舐めたりしてみた。名前はそのたびに体が震えた。それに口が空いているいるので、鼻にかかったような、自分でもびっくりするぐらいの甘い声が出てしまう。

「だ、駄目です、あ…っ」
「鎖骨の方が良かったか、」

宗茂は顔を離すと、名前の鎖骨へと顔をうずめた。さらりと揺れた髪が、体に触れる。そしてそこで呼吸をするおかげで、彼の息がかかった。そのたびに背筋がぞわりとしてしまう。しかし、この感覚は嫌ではなかった。

「証を付けておこうか」

その言葉に反応する前に、鎖骨にぴりっと電気が走った。名前はびっくりして、宗茂に抵抗しようと手を伸ばしたが絡め取られてしまった。また声が出そうになってしまったので、もう片方の手で口元を押さえたが、声は手をすり抜けてしまって意味が無かった。宗茂はようやく顔を離した。ふと自然に名前から涙が零れた。その涙はほぼを伝い首筋を通って、宗茂の手が触れている名前の鎖骨へと落ちた。宗茂はその涙を口ですくって味わうのだった。

「声を抑えるなんて勿体ないな」
「…宗茂殿は狡いです」
「まだまだ、序の口さ」
「また宗茂殿は…」
「だが、名前が俺のことを考えてくれるだけで満足だ」
「…宗茂殿は何でそんな恥ずかしい台詞を言えるのですか」
「何でだろうな」

宗茂は少し含み笑いをして、名前に手を差し出した。そして、部屋に入るように促した。外では暁の光がきらきらと光っている。
110922