※注意









少し開けた障子から月の光が差し込む。名前は布団の上に座って、その光を眺めていた。今日は満月なのだろう。その光は彼女のいる部屋をぼんやりと照らしていた。隣で寝ている清正は、すうすうと気持ちよさそうに寝息をたてていた。
ふと風が吹いてきて、名前の頬をなぞった。もう秋の匂いがした。彼女はもう少し障子を開こうと思って、掛け布団を隅に寄せて障子に近づこうとした。しかし、それは叶わなかった。隣で寝ていたはずの清正が、彼女の手を掴んでいたからだ。

「…行くな」
「あ、障子をもう少し開こうと思って」
「暑いのか?」
「ううん、月が綺麗だなぁって」

そこまで言うと、清正も起き上がって障子の向こう側を見た。そして二人は、同じように月を眺めた。ふと、清正は障子を閉めて、名前の隣に座った。

「その…怖いか、名前」
「何?」
「あー…えーっと、あれだよ、あれ」
「あれじゃ分からないけど」
「…お前、それ分かって言ってるな?」

清正の問いに、名前はくすくすと笑ってみせた。清正は少しカチンと来て、名前を組み敷いた。その時、彼女の長い髪がふわりと広がって落ちたのが見えた。

「もう言わずとも覚悟は出来てるな?」
「えっと、ちょっとまだ心の準備が…!」
「待たない」

清正は未だに言葉を紡ごうとする名前のに無理やり口づけて塞いでやった。それまでにやけ顔だった名前の顔はとろんと熱に浮かされたような色になった。その顔がひどく官能的で、彼の中でまだ見たことのない彼女をもっと見たいという感情が蜷局を巻いた。清正は一度顔を離して、名前の顔を見た。すると彼女はぽろぽろと涙を流していた。清正は静かに涙をぬぐい取ってやった。

「…やっぱり怖いんじゃないのか」
「怖くないよ、大丈夫だから」
「ならもう、止めないからな」

その言葉に名前が頷くと、清正は名前を強く抱きしめてやった。お互いの心臓の音が聞こえる。そしてまた名前に口づけて舌で口をこじ開けると、舌を絡ませてその味を味わった。控えめな水音が、部屋に響く。そして名前が背中をとんとんと叩くと、口を離してやった。それから耳元で囁いてやった。

「あんまりでかい声出すなよ、響くからな」

名前は頷いて、清正の首に腕を回した。その時、しゅるりと帯が外される音がした。
110910