久しぶりに政宗殿の元に遊びに来たのに、部屋には誰もいないし、侍女に聞いても今は会わない方が良いと言ってそそくさと逃げてしまった。会わない方が良いと言われても、逆に気になって仕方ない。ぐるぐると屋敷を巡ると、庭に彼の姿を見た。なにやらガチャガチャと音を立てている。私はなるべく気配を消して、彼に近づいた。
彼はさっきから銃を出してはくるくると回してしまってはまた銃を出してはくるくると回している。そしてたまに、手が滑って銃を落としてしまうと、慌てて拾って再開する。そしてそれは、とても滑稽に見えた。
私が思わずくすくすと笑ってしまうと、隣りにあった木に銃弾が撃ち込まれた。おお、怖い。

「そこにいるのは誰じゃ!」
「…はい、名前です」
「何だ名前か」

政宗殿は手招きをして、私を縁側に座らせた。彼はいつの間にか銃をしまって、腕組みをして隣りに座った。

「今日は何の用じゃ、名前」
「孫市殿が出掛けて暇だったので」
「そうか…名前、聞きたいことがある」
「何でしょうか」

私がこう尋ねると、政宗殿は首を捻ってあーだのうーだの唸り始めた。そして若干だが、頬が赤い。頬を赤くする政宗殿なんて見たことが無い。貴重な表情だと思ってじっと横顔を見たのもつかの間、政宗殿はバッと勢い良くこちらを振り返った。

「あのだな、さっきの…見たか?」
「…へ?」
「だからさっきの、その、見たのか聞いておるのだ」
「さっきの、って何ですか」
「…ええい!ちゃんと聞け!さっきわしが銃の練習をしているのを見たのかと聞いておるのだ!」
「あれ、銃の練習です、か…ふふっ」
「わ、笑うでないわ馬鹿め!」

必死に馬鹿め馬鹿めと私を罵倒する政宗殿をよそに、私はくすくすと笑ってしまった。いつもは格好良くて頼れる方なのに、先ほど見た彼はまるで少年のようなあどけなさが残っているし。

「今日はこっちに誰も近寄らせるなと言っておったのに…!」
「すみません、いつもは格好良いのにあんな一面があったなんて」
「それは誉めておるのか?」
「じゃあそういうことにしといてください」
「…生意気なやつめ…」

政宗殿は納得がいかないという顔をしていたが、私はまたくすくすと笑ってしまった。なんだか今日の彼は子供のように不安定である。

「わしを馬鹿にするのもいい加減にしろ…!」

とうとう怒った政宗殿は立ち上がって銃を構えたが、手が滑ってまたもや銃を落としてしまった。慌てて拾ったがもう遅い。私はまたくすくすと笑って、政宗殿は顔を赤くして馬鹿め馬鹿めと喚くことになった。
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