短編 | ナノ


わかりやすいもの


ルードは、存外、わかりやすいものが好きだ。本人は物静かで、言葉もそう多くはない。でも、その瞳や、行動が物語る。

例えば、タイトなスカートを履いている時、すぐ腰に手を回してくる。

例えば、彼が好きな淡いベージュを爪先に纏うと、よく手を握ってくれる。

例えば、新しい香水をつけていると、抱きしめて首筋に顔を埋める。

そんな、わかりやすいものに、わかりやすく反応してくれる彼が大好き。すぐに気付いてくれるのも嬉しい。彼しか気付かないのも嬉しい。


そして、今日はというと、彼の好きなルージュをつけてみた。案の定、サングラス越しの瞳は私の唇を見つめてる。

「……ナマエかわいいな」

そう呟くと私の顎を掬う。革手袋の感触が心地いい。

そのまま、その端正な顔を傾けて近づいてくると、重なる唇。フレンチから、だんだん深くなり、舌を絡ませ、息が、苦しくなる。

は、と息を漏らし、離れると名残惜しそうに繋がっていた銀色がつぷん、と途切れる。ルードの唇に、ルージュがぐちゃぐちゃに付いてる。きっと、私の唇もルードが暴れたおかげでリップラインは滲み、取れかけてる。

私も、わかりやすいものが好き。

例えば、私のルージュでぐちゃぐちゃの彼の唇。扇情的で、もっともっと、と、求めたくなる。

わかりやすい者同士、そのまま本能に従いますか。

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