短編 | ナノ


タークスBBQ大会


暑い!暑すぎる!!
でも、今日はそんな暑さも吹っ飛んでしまうくらい楽しみにしていたタークスBBQ大会。社長の計らいでミッドガルでNo.1とも言われる高級ホテルのお庭を借りられることになった。周りの目を気にすることなく楽しめるの嬉しいな。

プールも付いてるから今日は暑苦しいタークススーツは脱ぎ捨て思い切って水着。先日イリーナと一緒に買いに行った水色のビキニ。ちょっと恥ずかしいから上から白のパーカーを着て。うん、すっごく夏っぽい!

「ナマエせんぱーい! 日焼け止め塗りましょうー!」

いつも以上に明るく元気なイリーナ。そんな彼女は黄色のビキニがよく似合ってる。「水着可愛いね」と伝えると、ほんのり顔を染める彼女はどう見たって可愛い。

「さ、塗ろっか」

二人で仲良く塗り合いっこしてると、「おーい」と聞き慣れた声。

「はよ。日焼け止め? 俺にも塗ってくれよ、と」
「レノ! おはよー」

赤いハーフパンツに黒のパーカーを羽織っているレノ。スーツの時とはだけ具合はあんまり変わらないけど、トレードマークのゴーグルをしてないから何か不思議な感じ。

「俺、焼けると赤くなっていてぇんだよな」

確かに色白いし赤くなってヒリヒリしそうな肌してる。「いいよ」と了承すると、パーカーを脱ぎだした。ま、眩しい。白く綺麗な肌と、引き締まった筋肉。裸なんてこんなちゃんと見ることないからドキドキしちゃう。

「お? 顔赤いぞ、と。えっちなこと考えてんの?」
「そ、んなことないもん。ほら、塗るよ!」

手に日焼け止めを取り出し、レノの背中に塗っていく。スーツ着てる時は細く見えるのにしっかり鍛えられてる。ちょっと、かっこいいな。

「んっ、……やらしい手つきだな、と」

ニヤリと口の端を上げたレノが振り返る。

「もう! はい、終わり!」
「はは、サンキュー。じゃあルード手伝ってくるわ」

ルードは今BBQグリルなどをセッティングしてくれている。私も後で手伝いに行こっと。さて、次は何しようかな、と思ってたら。

「おいナマエ、こっちを頼む」

声を掛けられ振り向くと大きな袋を運んできた主任。いつもの美髪が今日は一つに結ばれ、ちょっと涼しそう。滅多に見ることのできないうなじ、なんだかすごく色っぽい……。黒のハーフパンツに黒パーカーで黒づくしなのは暑苦しいけど。

「社長からの差し入れだ。クーラーボックスに入れておいてくれ」
「はーい! ……え、すっごい!! なにこれ、めっちゃ美味しそうなお肉!!」

袋を覗くと最高級A5ランクと書かれた霜降りのお肉がたっぷり。さ、さすが社長……。これはめちゃくちゃ嬉しい。

「ナマエは食材を頼む。俺は飲み物を持っていく」
「飲み物もすごい量ですねぇ。あ、そういえば社長は?」
「後から合流するそうだ」

おお、社長も一緒にBBQ!? 珍しい〜。嬉しいな、みんな一緒だ。
主任と二人でルードとレノがグリルやテーブルなどの準備しているところまで荷物を運び、大きなクーラーボックスに入れていく。

「あちぃー! なぁ、ビールねぇの?」
「あるよー! もう飲む?」
「飲む!」

汗だくで準備してるレノにビールを手渡し、ルードにも何か飲むか聞かないと。

「ルード、おはよ。何か飲む?」
「おはよう。そうだな、俺もビールを頼む」

はい、と渡すとルードの格好が気になった。黒いスパッツのような水着のみ。みんなと違いパーカーなどは着てない。肌、焼きたいのかな。

「ね、ルード。暑くないの? 焼けちゃうよ」
「暑いは暑いが、少し焼けてるくらいがちょうどいい」
「サンオイルとか持ってきてるの? 塗った?」
「持ってきてはいるがまだ塗っていないな。……ナマエ塗ってくれるか?」

そんなこと頼まれると思わなかったから驚いたけど、ルードにお願いされるの、なんか嬉しいな。

「いいよ。これだよね?」

近くのテーブルに置いてあったサンオイルを手に取り、ルードの大きな背中に塗っていく。レノとはまた違う男らしさにドキッとしちゃう。タークスのみんな、実はすごくクオリティーの高い男性ばっかりだよね。

あ。ふと思いついたイタズラ。ルードの背中にちょっとだけイタズラを仕込んで、ひひひ、とほくそ笑む。

「何を笑っているんだ」
「ふふ、何でもないよ! グリルの火当番ありがとね」

サングラスをカチャ、と押し上げ、「問題ない」とほんのり照れるルード。端正な出で立ちなのに、照れ屋さんなの可愛いよね。
(次の日。私がしでかしたイタズラが大成功していたようですごく怒られた……)
(サンオイル塗るついでに、日焼け止めでニコちゃんマーク描いただけなのに……)


「諸君、おはよう」

背後から聞こえるのは社長の声。

「あ、社長! おはようございます」
「ああ。楽しそうだな」
「はい! 社長、場所も差し入れもありがとうございます」
「普段の頑張りへの労いだ。楽しみたまえ」
「はい!」

社長も参加するみたいだけど、大きなパラソルの下のビーチベッドに寝転んだ。白いハーフパンツに白のパーカー。薄めのティアドロップサングラスをかけてバカンス風な装いに目が眩む。パーカーの隙間から見える割れた腹筋……。 うん、とてもセクシーだ。

「なんだ、見惚れてるのか?」
「え! あ、いや、珍しい格好だな、と思いまして」
「ふむ。そういうナマエも珍しい格好だな、よく似合っている」
「あ、ありがとうございます……」

社長に褒められた! 恥ずかしかったけど、水着着てきて良かったかも。

「おーい、肉焼くぞー!」
「ナマエせんぱーい、こっちこっち〜」

レノとイリーナが私を呼ぶので、社長に会釈をしてBBQグリルのところへ戻る。

「あ? なんで顔あけーの? 社長になんかされたのかよ、と」
「される訳ないでしょ。水着、褒めてくれただけだよ」
「あー。その水着可愛いよな。すげぇ似合ってるぞ、と」
「ええ! レノまで……。あ、ありがとね」
「まぁ、俺としてはその水着を脱がしてやりてぇけどな」

な、なんて事を言い出すのこのひと!! イリーナが隣でセクハラだってキャンキャン吠えてる。

「焼けたぞ、食べろ」
「わぁ! ありがと」

私のお皿にルードがお肉を取り分けてくれた。最高級A5ランクのお肉、めちゃくちゃ美味しい!! 社長最高!! ずっと着いてく!!
もぐもぐはふはふしてたら、ルードが私に手を伸ばす。

「タレが付いてる」

そう言って唇の横を指で拭うと、ルードの指についたタレをぺろっと舐めた。……な、舐めた!? 驚き狼狽える私を横目にくつくつ笑っている。こ、この男、侮れない。こうやって女を手玉に取っているのか。うう、絶対、今顔赤い。


***


美味しいお肉とおいしいお酒を楽しんでいたら、なんやかんやともう夕方に。楽しい時間はすぎるのが早いなぁ。

「ふぅ〜、お腹いっぱい。もう無理、入らない」
「先輩! プール入りましょうよ!」

元気いっぱいのイリーナに誘われてプールに入ると、温水なのかほどよいぬるさで心地よい。大きな浮き輪の中に入ってプカプカ。はぁ〜。これはたまらない。

「ね、イリーナ。最近いいコトあった?」
「ええ、いいコトっすか。そうですねぇ…」

この前食べたパンケーキが美味しかった、主任と任務がかぶって嬉しかった、タピオカにハマってる、などなど。出てくる出てくるたくさんの楽しそうな話。もし、もしも、タークスなんて入ってなかったら普通の女の子なんだよなって改めて痛感してしまう。

でも、私たちはタークスだから、普通ではないから。だからこそ、こんな普通の人がしているような、私たちにとっては非日常な今日がとても楽しくて。また、こんな日があるといいなって願ってしまう。もちろん、全員で。

「おい、イリーナ。主任が呼んでたぞ、と」
「え!? ちょっと行ってきます!!」

は、はや……。レノに声を掛けられ俊足でかけていったイリーナ。プールサイドから声を掛けたレノがちゃぷんとプールに入り、プカプカ浮かぶ私の浮き輪に抱きつくように捕まって、なんだか真剣な顔で私をじっと見てくる。

「レノ? どうしたの?」

どうしたの、なんて冷静を装ってるけど、内心かなりドキドキしてる。ち、近いよレノ。

「なぁ、ナマエ。今日この後時間ある?」
「え……、なん、で?」

夏の夕日に照らされて赤い髪を際立たせる。綺麗だなぁ、なんて思いながら話の続きを促すと、太ももに違和感が。こ、れはレノの手が足を触ってる……。

「レ、ノ、なに、してるの」
「んー。触ってんの」
「それは、わかってる……」
「ナマエの水着、すげぇ可愛いんだけどよー。他の野郎も見てるってのが気にくわないんだよな、と」

タークスのメンバーを野郎なんて言わないの。唇を尖らせて本当に拗ねたように、そんなことを言うレノ。ちょっと可愛く見えちゃって、本当はその手を払いのけないといけないはずなのに、何故かできない。

「この後、俺と二人きりの時間、作ってほしいんだけど」

レノのほっぺたが朱に染まっているのはきっと夕日のせいだけじゃ、ない。きっと私のほっぺたも。

「う……、ちょっとだけ、なら」
「楽しみだな、と。あ、でもその前にちょっとだけ」

レノの手が私の頬を撫で、唇にたどり着くと、顔が近づいてきてレノの指越しにキス、された。正確にはキスではないけれど、指の隙間から感じる吐息があまりにも生々しくて。

「後でする時は指、なしで」

私、この後、心臓が爆発してしまうかもしれない。レノと二人きりの時間に何があったのかは内緒。



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