38度のキス
俺様美形×流されちゃう平凡





友人が風邪を引いた
大学3年目の付き合いになるが、初めての看病になる。というか初めて他人を看病することになってしまった。
はっきり言って、俺が世話する義理はない。友達だけど、俺はこいつに結構な恨みを持っているからだ。それでも友達をやってるのは、俺が優しいから。


「彰〜っ!ポカリ派かアクエリ派かわかんねーからどっちも買ってきてやったぞ!!」


バーンッと少々乱暴に玄関を開けながら友人にそう告げる。両方の腕は袋でふさがっていて足で開けた。バレたらたぶんシバかれる

昼なのに薄暗い部屋へと行くと、ベッドで苦しそうに寝ている友人がいた。
大学でやれイケメンやれ素敵やれ抱いてと騒がれてる友人、彰(ショウ)
いつも俺様で飄々としている奴の苦しんでいる姿を見るのはなんだか気分が良い


そんな俺の考えていることを感じ取ったのか彰がうっすら目を開いてこちらを見てきた


「…静かに入ってくることも出来ねーのかよ」

「買ってきてもらっといてその態度はなんだこのやろー!」

小声で怒鳴ってやったのは俺の優しさだ!
そんな俺に彰は軽く笑いながら、ゆっくりと体を起こす
その様子にいつもよりかなり弱ってるのが、見て取れた。


「ポカリ」


・・・お礼じゃなくて、寄越せってことか・・・。

頬を上気させてダルそうにこちらを見る彰。風邪のお陰で、いつもの10倍は色気が増している。

これは女の子達の恰好の餌食となりますわ


「熱は下がんないの?」

「…まだ測ってねえ」


彰がはあ、と大きくため息をついたあと俺からペットボトルを受け取った
夏だというのに、寒いのかグルグル毛布にくるまってる姿は少し面白い

…それにしても驚いたな。
まさか彰が風邪をひくとは。

いや、人間だから彰が風邪を引くことはあるんだけど、いつも余裕そうな顔して俺を見下している奴が、俺に助けを求めてきた事がびっくりすぎて

助けてもらう側の態度じゃなかったけど。


『今から来て』

それだけ言って電話切られた俺。普通の人だったらこんな一方的なこと言う相手のとこには行かないと思う。けど俺は優しいから来てやった。なんでかっていうと彰の通常運転は『今すぐ来い』とかもっと高圧的なしゃべり方だけど、今回は違ったから。

ピンポン押したら、彰が倒れかけながら出てきたのにはびっくりしたけど。


「ん、38度7分。やっぱ熱さがんねーな…病院行った方が良くね?俺運転するよ」

「今動いたら余計悪化しそうだからいいわ。」


いや絶対病院行った方がいいだろ、何その意味不明な言い訳。
一応薬買ってきたけど…


「食欲は?」

「…ない」

「じゃあプリンとゼリーどっちがいい?」

「強いて言うならプリン」


ッチ、俺がプリン食べようと思ったのに
袋からプリンを出してしぶしぶ彰に渡してやる

…つかこいつ汗すげえな…拭いてやるか。
Tシャツから覗く首筋に汗が浮いていて、気持ち悪そう。


お湯で濡らしたタオルを準備して、彰の所に行く
プリンをぼーっとしながら食べてる彰。もう一生風邪引いてればいいのに。あの傲慢な彰を見ずに済む。


「彰、体拭くからついでに着替えろ」

「・・・むしろ風呂入りたいんだけど」

「馬鹿か。服脱げるか?」


無言でプリンを横において、襟元を引っ張って頭から脱いだ彰の服を受け取ってやる
くそ…良い体してやがるな。


「何見てんの?有料なんですが」

「俺が金取りてえくらいだわ」


弱弱しい顔してるのにこの減らず口を叩く気力はどこから湧いてくるのか。
ニヤニヤしやがって腹立つ。帰るぞ畜生。

一発殴りたくなるけど、病人相手にそんなこと出来ないのでしょうがなく体を拭いてやる

本当にいい体をしている。引き締まった身体割れた腹筋。貧相な俺の身体とは大違いだ。


「寒い。」

「えぇ?んなこといったって、体拭けなくなんじゃん」

「はー…まじ風邪腹立つわ。早く慧に移ればいいのに」


おい。ざけんなコラ
風邪うつされたら慰謝料要求するわ。

一通り体を拭いて、最後にもう一枚の濡れタオルで彰に自分で顔を拭かせる
丁度ハンガーに掛かっていたTシャツを着せて薬を渡した

「つかさ、なんで俺呼んだの。やっぱ女の子の方が喜んでやるんじゃない?」

くっそダルいわ。
男の世話したことなんかないし、看病の仕方もわかんねーし。
何が一番いいのかわかんないから、こいつのことちゃんと面倒みれてるのか不安だし


「お前は下心も見返りも求めねーからね。まあ、お前が俺の恋人になりたいなら話は別だけど」

「なりたいわけねーだろ。」


俺の即答振りに微かに笑う彰
ひでー、と言っているけど、お前だって俺を恋人にする気はサラサラねーだろーが。


「つかいつ風邪だって気づいたの」

「朝歯磨いてる時、寒いしクラクラするし立ってられなくて風邪だって気づいた」

「ふーん・・・。」


本当に病院行かなくていいのかな。
俺はメンタル的にもつらいからすぐ病院行くけど。


「…とりあえず、寝てたら」


こいつが病院行きたくないって言うなら、無理に連れてけねーし
あ、てか俺いたら逆にゆっくりできねーかな?

そう思って立ち上がる。
俺を見上げる彰。


「あー、お前も気遣って寝れねーだろうから、俺一回帰るわ」

「は?」

車のカギと財布をケツポケに入れて彰にそう言ったら、彰が目を見開いた。パシッ、と腕を掴まれる。
?なんだよ。


「なんで。」

「はぁ?俺いたら寝れねーだろ。」

「んなことねえから。…ここいろよ。」


彰のその言葉に、今度は俺が驚く番だった。こ、ここにいろよ?
もしかして、寂しいのか。ハハーン。
だとしたらそれこそ女連れて来いって思うけど。


「ここにいてくださいだろ〜?なんだよ、彰も風邪ひくと可愛いもんだなあ」


ニヤニヤしながら彰の頬をペチペチ叩く。すると彰が鋭い眼光を俺に向けながら舌打ちした


「…調子乗ってると風邪うつすぞ」

「え〜?移せるもんなら移してみろよ。そんな簡単にうつんねーから」


いつも俺が彰に馬鹿にされてる側だが、今日は俺に主導権がある。

なんって気持ちいいんだ!
最高!

そう思いながら買っておいて俺のゼリーでも食べようかと踵を返した


その時、


「うわっ!?」


急に後ろ側に引力が働いた
引力ではなく、彰が俺の腕を引っ張ってきたんだけど

その強さに彰の腕の中に倒れこむ羽目に。

なんなんだよもー!


「彰〜…?」


彰に確認しようと少し後ろをみたらギョッとした
俺がちょっと動けば彰とキスしそうな距離に彰がいたから

あ、あっぶね!!


顔の前に手を持ってきてズザッと横に体をスライドさせる


そんな俺の慌てぶりに笑う彰


「なに?どうしたの」

「えっ?い、いや、お前こそなんだよ急に腕引っ張ったりして…」


つかなんか、
近い…?

少し横にスライドしたはずなのに、じわじわ近づいてくる彰の整った顔

具合が悪いせいか余裕がなく、色っぽい顔をしている。しかも、熱がこっちにまで伝わってくるほど、彰の身体が熱い


「なんでそんな顔赤くなってんの」


ニヤニヤとむかつく笑みを浮かべながら俺の頬をちょいちょい触る彰

なんかまずいぞ、って思ってもう一回ズレようとしたら右腰を掴まれた

ひっ!!

そのまま左に持ってかれ、彰の身体と密着する羽目に。


な、なにを考えてんだこいつ!?


「さっきお前、風邪なんかそんな簡単にうつんねえって言ったよな?」


右腰を抑えてる手にビビっていたら、彰がそう聞いてきた。背後から耳元に熱い吐息がかかる

か、風邪?

「い、ったけど…なぅわあっ!!?」

なんだよ、って聞こうとしたのに日本語でなくなった。理由は彰の手が、服の上ではなく俺の服の中に入ってきたからだ。

熱い指先が俺の右腰を撫でている

な、なん、
え?
なにこの雰囲気?


「し、しょうさん…?」


なんか嫌な予感がした。
サァーッて、血の気が引いていくのがわかる。

確かに俺はさっき、風邪なんてそんな簡単にうつんねーよって彰を馬鹿にした。あと寂しいのか、とかなんか色々馬鹿にした。

もしかして俺、仕返しされてる?


「俺お前に一発で風邪移してあげられる方法思いついたんだけど、聞きたい?」

「えっ、聞きたくないです」


嫌な予感しかしなくて即答したら舌打ちされた。本日何回目の舌打ちなのか。

そんなこと考えながらブルブル震えていると、突然左手で胸ぐらを掴まれた

ひ、ひぃいっ!!!?

殴られるか!?と思ってたらそのまま引っ張られベッドの上にボスンと倒される羽目に。目の前には俺に覆いかぶさってる彰がいて。

な、なにこの、たいせいは…?

唖然となる俺。
そんな俺に彰が小さく笑みを零した


「今から直接教えてやるよ。身体に。」


まるで狼みたいな雰囲気だった。


えっ、どういう、
ことなの…?


すぐ目の前には、熱で頬を染めてエッロい顔をしてる彰くん
たぶん、彰からみたら俺はブルブル震えてる子ヤギって感じなんだろう

恐怖のあまり動けなくなる


そして、

「覚悟しろよ」

という言葉を最後に口を封じられた。


物理的に。
彰の唇で。


何でこうなったのか俺でもわからない。俺は看病しに来たのに、気付いたらこんな事に。

しかも、いくら彰を怒らせたとはいえ、まさか、まさか、


キスどころか、
セックスをする羽目になるとは。


もう何が何だかわかんなかった。めっちゃ深くてエロいキスをされ、服をあっという間に脱がされ、彰のテクに翻弄され、

ケツに彰のアレをぶっこまれ。

何故かローションとかも準備されてて(しかも未開封)、それで俺の処女を彰に捧げる羽目に。

男同士、初めてのセックス
だというのにはっきり言って、めっちゃくちゃ気持ちよかった
これがイケメンのテクなのかと。
男にもそれが通用する程なのかと。
声を枯らしてしまうまで喘がされた。

そして目が覚めた今。


さ、

寒い…!!!



裸で気を失っていたせいなのか、めちゃくちゃ寒かった。しかも喉が痛い。鼻もつまってる。


「ぇ、ぇえ…?」


今の時間は深夜の0時
それを見てまたビビる羽目に

まて、待てよ?
俺が彰の家に来たのは14時じゃなかったか?それがなんでこんな時間に?

しかも彰いねえし!!!
つか何から突っ込めばいいんだよ!!!


「あ、起きた?」


その声にドキィッてすると、どうやら風呂に入っていたらしい彰。上半身裸にジャージを履いていて頭にはタオル

ふ、風呂…?
なにこいつ、風呂に入る余裕あったの…?


いやつかそれよりも!!!
俺!!!お前にすごい酷いことされたんですが!!!?


「お、おま、なんて事を俺に…!」

「んー?つか声やばいね。大丈夫?」


ボスンとベッドに腰掛けてきた彰
大丈夫?と聞いてる割に、なんか口元緩んでませんか。しかもなんかやたら声甘くないですか。


「震えてるし顔も赤いじゃん。もしかして寒い?」

「さ、寒いから服とって…」


ぶっちゃけ我慢できないくらい寒い
なんでお前はそんな平気な顔してんの。風邪ひいてたんじゃねーの。

脱がされた服はたぶんベッド横のどこかに落ちてるはず

そんな俺にニヤ、と笑みを浮かべる彰


「風邪、引いちゃった?」


そう言って、俺に服を渡してきた
だらだらと変な汗が止まらなくなる俺。
もしかしなくても、俺もそんな気しかしない

「そりゃあ風邪引いてる奴とあんなことしたら誰だってうつるわ!!なんであんなことしたんだよ!!」

「でもお前すっげえ善がってたんだからいいだろ?後半女みてーに『もっとぉ、もっと奥突いt「殺すぞ!!」

恥ずかしい事を思い出させんじゃねえよ!

彰の口を両手で塞ぎ、思いっきり睨む。
けれど、不思議と身体に力が入らなくて、フラァっと彰の胸の中に倒れこんでしまった


あ、あれ…?


「…なに急に可愛いことしてんの?」

「ち、ちが…」


なんか、
グラグラする…?

気持ち悪くもなってきた


動かなくなった俺に何かを察したのかベッドに戻してくれた彰

そして腹たつ一言


「ざまあねえな」

・・・。

お前のせいで…!
お前のせいで俺は今こんな目に!!

俺の顔を見下ろしながらニヤニヤしてる彰に思いっきり拳をあげる。が簡単に掴まれて、布団に戻されてしまった。


「い、いつか殺す…」

「その『いつか』はいつだろうな。とりあえず寝ろよ。看病ならしてやるからさ」


おでこを優しく撫でられた。
その手にゾッとするが、思いの外安心して瞼が重くなっていく

あれ…
こんなはずじゃなかったんだけどな…

なんか犯されたことに対しても謝罪がねえし…。

とか思いつつも、彰のマジックハンドによって意識が遠のいていく


つかなんで、
俺が看病される羽目になってんだよ。





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実はずっと受けを狙ってた攻め。ローションとかもいつか受けとセックスするためのもの。
犯すつもりはなかったけど、熱のせいで理性が保たなかった。