!Attention!
・以下の短編は捧げものです!
・ぱくり、のさよならメランコリックワールドから。彼方×慧
・軽く紹介
・さよならメランコリックワールドは学園ファンタジーものです。
受け:慧。クール、平凡でいたいけど巻き込まれ体質。シコい。
攻め:彼方。受けの先輩。人の心を読む能力がある。とにかくイケメン。
以上を踏まえ、お読みください。
-------------
彼方先輩の目は宝石みたいで惚れ惚れするほど綺麗だ。
ガーネットのような、ルビーのような、燃えるような赤。この宝石が俺を捉えた時、俺はその中に吸い込まれそうになる。自分から吸い込まれに行ってるのかもしれないけれど、とにかく、夢中になってしまうのだ。
「……そんなに俺の目好きなの、慧ちゃん」
「え」
ガン見していたのがばれていた。
今まで本に向けられていたその目が突然俺を見る。俺はビックリして手に持っていたマグカップを落としそうになった。けれど、彼方先輩が「おっと」といいながらギリギリのところでマグカップの下に手を置いてくれたから、それが免れる
「全部だだ漏れ。…ほら、マグカップ」
そう言って彼方先輩は俺にマグカップを戻してくれた。…先輩は心の声が聞こえてしまう人だというのを忘れていたわけではないが、先輩に笑われたことで顔が熱くなる。先輩は聞いてないふりをして、本当はずっと聞いてたのだ。俺が惚れ惚れとしながら先輩の目を賞賛していたことを。
「ど、どこから聞いてたんです」
「慧ちゃんが『暇だな』って思ってるあとに『それにしても本当に綺麗な目だな』って思い始めたところから」
「最初からじゃないですか!」
くそ、本当にこの人は…!
涼しい顔して本に視線を落としていたくせに内心ではずっと面白がっていたんだ。
照れるといじられるのが目に見えてるので俺は平常心を装ってるふりしてマグカップに口をつける。隣で本を閉じる音がしたと思ったら先輩が俺の肩に腕を回してきた。
同時に香る甘い匂い。いつも嗅いでる匂いだけどいつまでたっても俺はこの匂いに弱い。バニラ。匂いまで好みだなんて、本当に、どこまでもずるい人。
「まあまあ拗ねるなって、俺も慧ちゃんのデレを聞いてたくてさ。なんだっけ?ルビーみたい?」
「…っ、忘れてください」
「んー?目逸らすなよ。」
顎をグッとつかまれて無理やり目を合わせられた。あの綺麗な宝石が楽しそうに歪む。
むかつくけど、やっぱり綺麗だ。
取り出したらきっとそれは血のように透き通っててきらきら輝くに違いない。光に当たって余計美しさは増すことだろう。…取り出せたらの話だけど
「…怖いこと考えてんね」
「褒めてるんですよ」
「そう?それなら有難く受け取っておこうかな。俺が先に死んだらくり抜いていいよ、好きにして。」
そう言って先輩は小さく笑った。先輩が冗談で言ってるのか本気で言ってるのかわからなくて今度は俺がギョッとする番。俺は真相を知ろうとその目をじっと見つめた。
軽く首を傾げながら俺の視線を受け止める彼方先輩。口元も楽しそうに緩まってて完全に面白がってんなって思った。
…先輩が死んだら。
ふと想像してみようとする、けれどどうしても死んだ先輩が思い浮かばなくて顔をそらした
「先輩が死んだ姿なんて想像できないです」
普通に俺より長生きしそうだし。この人自分の欲求に素直だから。
そう言った俺に彼方先輩は「そ?」と言いながら俺の髪を撫でた。そもそもこの人も俺より先に死ぬ予定なんて無いだろう。俺より2歳年上ではあるが。
「なら俺の顔にある目で満足するしかねえな」
飽きるまでどうぞ、と言った先輩に視線を戻す。するとゴツンと当たったおでこ。やっぱり先輩は笑ってる。
「・・・」
いや、これ近すぎて逆に見えないんですけど。
わざとか。