透明傘 | ナノ
10


「はいお疲れさま。今日はこれくらいにしとこうか」


そう言って参考書をパタンと閉じる成幸さん
対して俺らはぐったりだった

つ…………
疲れた………!

なんとか講義?を終えてノートに突っ伏す

あまりにも使わない脳を一気にフル起動させたから疲労がハンパない。
休憩を挟んだり夜食を挟んだりしたが、やはりなかなかツラいものがあった

ただいま夜の11時。


「みんなよく頑張った。偉い偉い。」


ポンポンと肩を叩かれる
松本なんて床に寝転がって寝る体制だ

…緑川はまだ続けているけれど。
すげえなこいつ。


「やっぱ数学一気にやりすぎちゃったかな。…わかった?」

「いやめっちゃくちゃわかりました。学校の先生よりずっと!」


教えかたが今までで一番上手だった。
ベクトルとかめっちゃわかったし。


「俺今回かなり上行く自信ありますよー」

「そっか、なら良かった」


ゆったりと微笑まれ疲れが和らぐ

松本羨ましいな。こんないいお兄さんいるなんて
全然鬼じゃないしむしろ仏だろ


「寝るなら布団で寝ろって」

「あー」


寝る松本を起こす成幸さん
俺も片付けをして電源を切っていた携帯を見る

しかし、


「……あれ。」


湊さんの事だからなにかしら連絡を寄越していると思いきや、特にメールの通知も着信もなく。

珍しい。

いつもなにかとメールをしてきたりしたのに…
泊まりならなおさらだ。


「どうしたの?」

「あ、いや、別に。」

「親御さんから連絡?」


親って訳でもないけど…。


「まあ、そんな感じです。」


苦笑しながら携帯をしまう
…なんだか、変な気分だ。


「あ、双葉くんは従兄弟と暮らしてるんだっけ」

「……どうしてそれを?」

「弟からいろいろね。」


そう言って爆睡してる松本を指差す成幸さん。

あいつなんでも喋るのな
まあ松本らしいけど。つかもう寝てるんかーい。


「何歳差なの?」

「あー、っと、あの人は26ですね。」


9歳差
兄弟としてはかなり歳の差だけれど従兄弟としては別に離れてるってわけではない。…はず。
社会人と高校生ってなるとちょっとあれだけど。


「そっかぁー…気まずくなったりしない?」

「いやぁ、でも、」

「こいつめっちゃ溺愛されてるんですよ」


俺の言葉を遮って続ける緑川
で、溺愛って…

そこまでじゃねえよ


「あ、双葉くん溺愛されてるのかぁ。されそうだもんね」

「どういうことですか…」


俺むしろしっかりものって言われるタイプなんだけど


「すごいんですよ、泊まりとか雨の日とか心配メール送ってきたり電話してきたり」

「溺愛って言うか過保護なんですよね。なんか。」


過保護すぎる。
このままじゃ俺がダメ人間になってしまうってくらい。

俺らの話に「そうなんだ」と笑う成幸さん


「愛されてるなぁー。じゃあ今もその人から?」

「いえ、珍しく連絡きてないんですよ今日」

「え、珍しいな。」

「……あぁ。」


やっぱあれかな
俺に気使ってるのかな

最近俺の様子が変だから。



prev mokuji next
bkm