透明傘 | ナノ
6


そんなこんなで日々は巡り、
金曜日がやって来た

私服といってもほぼ家から出ないだろうから適当に準備をする

学校が終わったら一度家に帰るが、すぐに松本の家にいく予定なのでボストンバックを玄関のところに置いておいた


「ああ、松本くんの家に泊まりだっけ」


その荷物を見て湊さんが何気なく呟く


「んー、そう。日曜の夜には帰ってこようと思うけど…どうなっかわかんね」

「そうか」


相変わらず俺は湊さんに話しかけられるとドキィッとする
あからさまな対応をしない程度には落ち着いたけれど


「双葉と三日近く会えなくなんのかー」

「あー、ハハ」


湊さんの冗談に笑う
とはいっても内心いっぱいいっぱいだった

一応寂しがってくれてんのか
とか思うとニヤけそうになる

……我ながらやっぱおかしい


「勉強なら俺だって教えられるのに」

「俺は友達としてーの」


湊さんが拗ねる

あー、やめてほしいそういうの。
心臓がうるさくなるんだってば

頭をグシャグシャしながら湊さんに背を向ける

もう駄目だはやくどうにかしなければ危ない気がする
薄々感じてはいるんだ、でも、もしかしたら気のせいかもしれないから…つか気のせいであってほしいまじで。


「今日の夜ご飯は作ってくれねーの?」

「一応クラムチャウダーとかはある」

「明日の朝は?」

「自分で作れよ。つか湊さん自炊できねーの?」

「…………できない」


嘘つけ。
俺が来る前どうやって生活していたんだ


そう言ってやりそうになるが口をとじる


……彼女とかがやってたのかね
俺がここに来る前のことは、何もわからないけれど。


「まあ死にそうになったら電話すればいいから」

「…別に泊まりじゃなくてもよくね?」

「今さらだなおい」


もうどうもできねーよ
だいたい俺は落ち着くために松本の家に行くんだし


「つか学校遅刻するからもう行くわ。」

「はー…まじかー…」


だからなんでそんな顔すんだよ馬鹿
大人のくせに。


「じゃあまたね、湊さん」


休みの間、俺は自分の気持ちを整理することにしよう

なにか言いたげな湊さんが視界に入ったが、気づかないふりして扉を閉めた



prev mokuji next
bkm