透明傘 | ナノ
6 (湊目線)



!湊目線注意!



最近、夜中にふと目が覚めることがある


「(……………暑い。)」


その理由のせいかわからないけれど、
最近眠りが浅い

このままじゃ夏に負けてしまうのではないか、と思う。

扇風機…。
いや、いっそ冷たいシャワーでも浴びてこようか。

クーラーはギリギリまで使ってはいけないらしい。
俺はもう使おうと言ってるのだが、出来る限り節約すると双葉が煩い。きっと自分の負担を気にしてるのだろう。
未だに気にされてるのかと少し不安になる。別にいいのに。


「(…シャワーにしよう。)」


そう決断して起き上がった。

なるべく音を立てないようにして双葉の横を通りすぎる
静かに寝ている双葉

通常より少しだけ幼く見えるのは寝顔だからだろうか。

そう考えていたら体がさらに熱くなった気がしたのでさっさと部屋からでる。どこの部屋も変わらない暑さ。

携帯の時刻は2時過ぎ。
最悪だ。

さっさと入って上がろうと思って浴室の電気をつけ冷たいシャワーを一気に浴びた


「………あー…」


きもちいー。
その冷たさに目を一気に見開く

一気に目覚めてしまった。当たり前だけど。
でもこれであのむさっくるしい暑さから解放された気がする。てかされた。

数十秒浴びて完全に体内の血が冷やされたところでシャワーをとめ、浴室を出る

すっきりした。
手足が涼しい。

髪は濡らしたままでいいか。

ヒタヒタと自分の足音がやけに響くなか、タオルを持って部屋に戻る

そんな中、


「……みなとさん?」


部屋に戻ると掠れた双葉の声が響いた
その声に双葉の方を見てみると起きてしまったらしく

…起こしちゃったか……
内心悪いことしたな、と謝る

今なんじ、と聞かれ2時過ぎと答えると呻き声が聞こえた。
だからごめんて。

暑苦しい布団の上に倒れこむと、のびてきた手


「……つめたい」


そう言って俺の手のひらを握ってきた


「シャワー浴びてきたから。」


逆に双葉は手が熱い。
晒されているおでこを空いてる手で撫でると再び目が閉じられた。

暑くないのかと思いつつ頬に手をあてる
少し汗で湿っていてやっぱりクーラーかけたほうがいいじゃないかと思った。心持ち双葉に風が当たるように扇風機の首を折る


しっかり握られていた手の力が抜けたのを確認して俺も手を離した
手に残る双葉の体温。

ジワジワと冷たかった手に熱が拡がっていくのがわかる

その熱を冷やすように濡れた髪をつかみつつ溜め息を吐いた


……双葉に恋人ねえ…。


今日の夜にあげられた話題
あの珍しく上機嫌だった双葉の顔が何故か頭から離れない。

夏中に予定がいっぱい入った、とも笑っていた。
相当楽しみなんだろう。ペラペラとたくさんの話をしていた。

嬉しそうな双葉を見るのはこちらも嬉しいし安心する。
その話を聞いていたとき、俺自身も普通の態度でいられたと思う

けれど、最近俺の何かがいつもと違くなっている

双葉から他人の話を聞いてるときに、笑顔を浮かべてるのが辛い。頬がひきつるというか、なんというか。

しかも他人の話をされると無性に腹立たしい。
まるで最愛の娘が知らない男にとられたかのようだ。

とか、

親バカにもほどがあるだろ。
俺ってこんなに依存するタイプだっけかと自問してしまうくらい。

どんどん以前のような社交性のある人物に戻っていく双葉。
それを一番望んでいたのに今ではそれが嫌で仕方ない。

ほんと。
俺何様のつもりなんだろう。

夏が嫌いになりそうだ。




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bkm