透明傘 | ナノ
4



今日は夜ご飯涼しめのメニューにしよう

頭のなかでそう練って再び窓の外を見る


「もうすぐ夏休みかー。夏休みつったら祭りか?」

「今度市民プールいこうぜ」

「いいな。」


つっても夏休みまでまだ一ヶ月ある。
それでも妄想するのが俺ら男子だ。


「その前に期末だけどな。」

「やめろ」
「まじで緑川空気読め。」


緑川の発言に一気にテンションさがる
いつだっけ。
あ、2週間後か。最悪だろ、うげえ。


「また松本の兄ちゃんに家庭教師頼もうぜ」

「ぇえ゛え俺やだよ」

「いいななんだそれ。」


松本の兄ちゃんは大学生で頭が良いと聞いていたが。
俺はまだ教わったことがない
見てすらない。


「…超見てみてえ!」

「そんなテンションあがる?全然似てねーんだよ。」

「へー。」


それは楽しみだな。
松本も悪くない顔をしてると思うよ俺は。


「松本、予約頼んだぞ」

「えーマジでやんのー」

「俺すげえ期待。」


いやがる松本を他所に緑川と同盟を組む


「授業料は○○のケーキ5つて言っといて。」


うお、高級…!
というか5つって。甘党なのか。


「もー決定事項じゃねえか…わかった、聞いとく」


松本の言葉にハイタッチする緑川と俺

夏ってほんといい
去年はこんな夏がやってくるとは思ってなかった。
天気も絶好調だし

ふと感じた視線
窓から顔を逸らしそちらを見ると松本がこちらをみていて。


「…なんだよ。」


気色わりーな。


「加賀楽しそうだな」


松本がそんな事を嬉しそうに言ってきた
楽しそう……?

確かに窓の鉄枠に写った俺の顔は確かに頬が緩んでいて。

・・・。


「だ、だからなんだよ!」


ダラけた顔の自分に無条件に恥ずかしくなった


「照れんなよー」


二人に総掛かりで頭をモシャモシャされて手で必死に払い除ける
あー、松本が調子のってニヤニヤしてるし


「笑ってんじゃねーよ。」


ペシンと頬を叩いたら「ひでえ!」と言われた。
慣れっこなくせに。


「いやあ、双葉最近雰囲気柔らかくなったよなあ。」

「え、そう?」


最近、なのか。


「そうなの緑川?」

「そうだなあ。いや、お前中学ん時はもともとこんなんだったよ。一時期表情固かっただけで。」


一時期…。
……ああ、そうか。


「ちょ、中学の話すんなよ俺しんねーし!」

「そうだな。」


俺って前はこんなんだったんだっけ。
数年前の話なのにどこか遠く感じながら思い出す。

……そうだったかも。


「しかもさ、なんかクラスの女子がちょっと双葉をな…」

「え、ま、まじ?」

「まじまじ。」


それも初耳だ。
緑川と松本がさらに俺の頭をもしゃもしゃしはじめた。…これは絶対俺に対しての嫌がらせだな。


「やめろ阿呆共。つかそれも、あれじゃん…ただの噂だろ…」

「はあーお前わかってねーな。お前が笑ったときの女子の目みたことあるか?」


そんなの見ねーよ、とか思いつつ自分の顔を覆う
なんか、急に恥ずかしくて仕方がない。なんだこの気分。


「俺って今までなんだと思われてたの…」

「クールな人とかじゃね。」

「それは緑川だろ」

「じゃあ地味」

「………」


それはやだな…でもそれが一番妥当だ。
高校に入ってから女子とは無縁の俺

なんか、突然そんな事を言われると視線を気にしてしまうじゃないか。

ニヤけちゃうのは、これでも一応男ですからね。


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bkm