!Attention!

・侑介×涼
・付き合ってる
・甘い

以上を踏まえてお読みください



ーーー


ふとお風呂上りの侑くんを眺めていたら、小さな狼と目があった。

勿論ここは自宅で、狼なんているわけがなく本物ではない。何なら狼の頭だけ。
大きさでいうと、3~5cmくらいか。

その狼は、侑くんの肌の中にいて、鋭い目でこちらを見ていた。


「えっ」


俺は思わず、ベッドから頭をあげながら声をあげた。

いわゆる、タトゥーというものだろう。位置は侑くんの腰骨よりほんのちょっと下あたり。
緩めのスウェットのせいで覗いているそれに初めて気づいた。

いつの間に、
というか、全く気付かなかった。


「なに」


俺が声をあげたことに対して、聞いてきた侑くん
ベッドの淵の俺の隣に腰かけ、濡れた髪を拭きながら見下ろしてきた。
目の前には引き締まった、何も纏われていない侑君の上半身。


ぐうっ・・・!!


その輝かしい姿に喚き散らしそうになるが、一旦我慢する。何度も見ている光景だというのに、毎回頭がクラクラする。はあ・・・なに・・・?国宝級すぎる…


「狼さん、が…」


色々なことに耐えながら、ポツリ、と腰あたりを指さしながらそれを指摘する。
座ったことによってそれは隠れてしまったが、確かにいた。
黒色のインクで描かれた、狼の頭。

俺の指摘に、「狼…?」と聞き返してきた侑くんだったが、「ああ、」と気づいたようだった。


「先週入れた。気づかなかった?」

「全然!痛くないの…?」

「今はな」


今は、ということは入れたときは痛かったんだろうか。
ギャー!想像もしたくない!
というか、侑くんの肌に傷をつけるなんて、くっ…本人が望んだことと言えど、彫り師許せん…!


「肌が落ち着くまであと2週間かかるっぽいけど」


侑君はスウェットを捲ってそれを再度見せてくれた。
まだ完成していない、という割には綺麗に描かれているように見えるそれ。


「…かっこいいね」

「大してそう思ってないだろ」


俺がカタコトで言ったからか、侑くんは笑いながらそう返してきた。
いや、とってもかっこいいと思う。なんてたって、素材が侑くんなのだから、侑君が身に着けるものはすべてかっこよくなる。当たり前だろ。
でも、何度でも言うが、侑くんの肌に傷っていうのがこう、…モヤッとするっていうか…


「友達と行ってきたの?」


狼と睨めっこしながら侑くんに聞く。ハンサムな顔をしてる狼。
ついでを装って侑くんの膝の上に頭を乗せてみた。膝枕。

ふへへ、これは俺だけの特権だ。


「ああ、小鳥遊と」

「たたたた小鳥遊ィ!?」


膝枕で上機嫌になった途端、爆撃がやってきた。なんだって?小鳥遊と?
俺を差し置いて!?
小鳥遊この野郎!


「まさかペアルックじゃないよね!?」

「なんであいつとお揃いにしなきゃなんねーんだよ…」

「いやいやいやちょっと待ってよ…なんで俺を誘ってくれなかったの…!小鳥遊誘うくらいなら、俺誘ってよぉ!」


昔から小鳥遊に対して謎の対抗心がある俺は、小鳥遊の名前を聞いただけでもむかつく。あいつはいつもそうだ、侑くんの友達だから、一緒にやれることが多い。侑くんのよき理解者でもあるのであろうが、その立ち位置が羨ましい。今でもあいつの憎たらしい声が頭の中で反響しやがる。


「ううっ…俺もタトゥー彫る…!一緒のところに、狼、彫る…!」


侑君にしがみつきながら、タトゥー入れる宣言を告げる。狼なんて絶対似合わないけれど、侑君とお揃いが良い。
俺のしがみつく勢いに流され、そのままベッドに倒れる侑くん。
俺は侑くんを見下ろす形となり、侑くんが俺を見上げている。


「涼は却下」


温かい指が、俺の頬に伸びてきた。


「どうして」

「なんでも」

「小鳥遊ばっかり狡い」

「・・・。別にお揃いじゃねーって。」


拗ねる俺に苦笑を浮かべる侑くん。
それでも、俺は納得がいかない。俺だって良いじゃないか。俺の身体なんだし、どうしてだめなの。


「痛いの嫌いだろ、涼」


頬を滑っていた手がじわじわと下に滑っていく。顎、首筋、肩、腕の順で降りていき、手首を掴まれた。俺の手首をすっぽり包み込んでしまう侑くんの手。


「別に…我慢できるし…」


侑くんの手を意識しているからか、途端に見下ろしているのが恥ずかしくなってきた。
ここはベッドで、侑くんは上半身裸の状態。おまけに髪は濡れていて、色っぽい。


「どっちにしろ却下」


侑君は俺の手首を優しく引っ張り、腰を支えてきながらゆっくりと態勢を逆転させた。
今度は侑くんが俺を押し倒すような態勢になる。俺を見下ろす侑くん

ポタリ、と濡れた髪からの水滴が俺の頬に落ちてきて、心臓が縮こまった。


「………どうしてぇ…」


却下される理由がわからず、拗ね切った声で聞き返す。
もはや兄と弟の立場、完全に逆だ。俺の方が圧倒的に子供だし、我儘。侑君はいつもそれを「はいはい」と流すことが多い。
だけど今回は侑君も譲ってくれないようだった。


「涼は俺がタトゥー入れて、まずどう思った?」


俺の顔についた水滴を拭いながら、質問をしてきた侑くん。
どう思ったか?なんでそんなこと聞いてくるんだろう。


「侑くんの綺麗な体に傷が・・・って思った。彫り師許さねえって」

「彫り師さんは悪くねーだろ。…でもそう思うよな、俺も同じ。涼の綺麗な身体に跡を残してほしくねえ。」


綺麗な体。
その言葉を聞いた瞬間、グワッと身体が熱くなる感じがする。


「べ、別に、綺麗じゃ、」

「…透き通ってて、こんなに柔らかい肌に、どこの男かわかんねー奴が一生残る跡を残すんだろ?許すわけねーだろ」


侑くんは、ふっと口元のみで笑いながら静かな声でそういってきた。

真っ赤な顔をして固まる俺に、顔を近づけてくる侑くん。ベッドに放り投げられている俺の手を掴み、スルスルと指を絡めてくる。


「だからだめ」


侑くんは、本当に、狡い男だった。

そんな、普段使わないような柔らかい言葉遣い。今使うの、狡すぎる。

俺が、その顔とその声に完全に蕩けた状態で「ひゃい…」なんて間抜け返事をしそうになったところで侑くんがキスをしてきた。呼吸をするために開いていた口に、そのまま熱い舌が絡んでくる。


「ん、んぅ、…ふ」


最初はゆっくりと重なる唇だったが徐々に深くなり、チュ、クチュ、と絡み合う唾液の音。

いつも声を我慢しようと思うのに、結局それはかなわない。甘ったるい吐息と共に、情けない声が漏れてしまう。

つい、癖で侑君のシャツに手を伸ばしたつもりだったが、今侑くんは何も着ていない状態だったから、侑君の肌に直に触れる形に。
熱い侑くんの肌。胸板もしっかりしていて、男らしい。好き。


「っ、は、ぁ…ッ…ぅ…?」


キスに翻弄され酸欠気味になり、一度唇が離れたタイミング目が合った。
俺の様子を見て、目を緩めて笑う侑君。

今、絶対、『すぐ流されるな』って思ったに違いない。

それもこれも全部侑くんだからなのに。
まるで俺自身が誰にでもチョロすぎる奴みたいじゃないか。

まあ実際、キス一つで流されてしまってるのですが。

………タトゥーは諦めますかぁ………
グスン。




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あとがき

タトゥーの代わりに、侑介と同じところにキスマつけられる涼
恥ずかしいが嬉しいのもあって、「ありがとうございます」って謎の返答を繰り出す。

侑介は、腰骨と二の腕裏にタトゥー
小鳥遊は、耳の後ろ(首の上の方)と中指付け根にワンポイントタトゥーしてる。それが涼に見つかり「剥がせえ!!!」と無理なことを言われる。


ありがとうございました!
(何か御座いましたら気兼ねなく↓)



誘惑と狼