!Attention!

・千歳×涼
・本編とは関係ないです!
・付き合ってます
・社会人千歳と大学院生涼です。

以上を踏まえてお読みください。



ーーー




久々に恋人の住むマンションに足を運ぶことになった。


まだ学生の俺に対して、社会人の俺の恋人。
相手の仕事の繁忙期と出張が続いたため久々になる。最後に会ったのは2ヵ月くらい前。

昨日その恋人から連絡が来て、ようやく会えることに。

・・・ようやくっていうとまるで俺がずっと会いたかったみたいになる感じだからちょっと納得がいかない。一応彼氏さまからの連絡だから、無視をするわけにはいかなかった、そういうこと。…にしとく。


とか強がる割には俺の心臓は落ち着きなく脈打っていた。


2カ月ぶりの恋人。
ちょくちょく連絡は取ってたけど、直接顔を見るのは久々だし、どんな顔して会えばいいかわからない。なんなら声を聴くのですら、二か月ぶりだ。

変に緊張してたら相手に馬鹿にされるのはわかっている。
あの、神様に作られたような端整な顔で俺を見下ろしながら、ひっそりと笑ってくるのだ。『風邪でも引いた?』とか煽ってきながら。

そんなの絶対嫌だから、余裕のある態度で接したいと思う。
俺ももう大人だ。絶対に、緊張なんか顔に出さない。

・・・が、俺の覚悟は相手の顔を見た瞬間に消滅した。


「涼」


俺を玄関で出迎えてくれた恋人。
久しぶりに顔をみたせいなのか、俺の記憶よりも数倍も良い男に見える。神様に作られたどころか、愛されすぎなのでは?と疑うレベル。

ただ一言、俺の名前を呼んだだけなのに。
2カ月ぶりに聞いた声と、以前より若干伸びた前髪から僅かに覗く瞳に、心臓を誰かに鷲掴みされたかのような感覚に陥った。


ぐっ…!
こいつの顔、こんなに殺傷力あったっけ…!?


「う、ひ、ひさしぶり千歳」


千歳の顔を直視できず、首らへんを見ながら挨拶をした俺。

ついさっきまで余裕のある態度で、とか強がっていた自分が情けない。
顔どころか全身が熱湯を浴びたかのように熱いから、俺の顔は真っ赤になっていることだろう。おまけにこのしどろもどろ具合。


「・・・」


え、なにこの沈黙。

一瞬の沈黙が気になり、千歳の顔をチラリと見上げる。
恐る恐る見上げる俺と違って、じっと俺を見下ろしてる千歳は、目を細め、唇には弧を描いていた。


こいつ、案の定面白がっている・・・!
そしてこの、余裕の表情!

くやしい!!


「なに馬鹿にしてっ…ン」


千歳の余裕たっぷりの態度にキレかけたら、キスされた。
振り上げかけた拳を、手首から掴まれながら、唇に一つ。俺の情けなくも小さな拳は千歳に手の中にすっぽり入ってしまう。


「!!!??」

「俺もお前に会えて嬉しいよ」


キス一つでガッチガチに固まった俺に、そう告げた千歳。
煙草の匂いと安心する声。2カ月ぶり。

掴んだ手首をそのまま引かれ、部屋の中に招かれる。

いや、てか、”俺も”の”も”ってなに。
俺一言も会えて嬉しいなんて言ってないんだけど。

つっこんでやろうにも、うまく口が動かず唇が僅かに動くだけ。
それをみた千歳が俺を見下ろす。


「…なに。もう一回しろって?」

「誰も言ってねえだろ!!」


千歳はこういうやつだったことを改めて思い出したよ!

もう一回キスされそうになって、ダッシュでリビングに逃げる。
別に今更キスとかどうでもいいけど、クソ恥ずかしくてなんか無理。

逃げた先のだだっ広いリビングの机の上には電源がつきっぱなしのPCが。

あれっ?


「まだ仕事してた?」

「いや、暇つぶし」


俺がそのことを指摘すると、PCをさっさと閉じて鞄の中に閉まった千歳。

あー…まだ仕事してたのかもしれない…。
忙しい合間をぬって時間を作ってくれたのか。

ちょっと申し訳ない気持ちになりつつ、千歳の横に腰かける。
社会人って本当大変だな。


「いつ戻ってきたの、ここ」


3日前まで海外出張で、そのまま関西支社の方に連続出張っていうのは聞いていた。
まじでハードワークすぎる。

まじまじと千歳の顔を見てみて気づいたが、結構疲れた顔をしていた。
いつもやる気のない顔をしてるけど、今日はいつも以上に眠そう。大丈夫かな。


「三時間前」

「ええっ!!?や、休まなくていいの」

「だから今休んでんだろ」


ソファの背もたれにドサッと腰かけ、でっかいため息をつく千歳。
俺がいたら休めないんじゃないかと言ってやりたくなるが、下手に色々言うと疲れさせちゃうかなと思って黙る。

今日土曜日なのに…。
むしろ金曜日のギリギリまであっちで仕事だったってことか。


「…じゃあ、何か飲みますか?」


出来るだけリラックスしてもらうしかないと思って、俺なりの提案をする。
千歳んち割となんでも揃ってるから、ハーブティーとかもあった気がする。


「労わってくれんの?」

「あ?いつも労わってんだろ」

「…じゃあ、コーヒー」


コーヒー?
この時間に飲んだら逆に寝れなくならないか。


「寝れなくなっちゃうよ?」

「寝たら勿体ねえだろ」


…うん?
意味がよくわからず、隣にいる千歳の顔をうかがう。
眠そうな顔をしている千歳。今すぐにでも寝たほうが良さそう。


「死にそうな顔してるけど」


千歳の目元をなぞりながら、千歳にそう告げる。
本当に腹立つくらい良い顔してるな。目の形と言い、輪郭と言い、全て。

こんな美形、会社にいる女性陣がほっとかないだろう。
お誘いとか、たくさんあるんだろうな。

されるがまま、視線だけこちらに寄越す千歳


「俺が生き生きしてたことあるか?」

「・・・。」


それは見たことない。
そんでもってそんな千歳気持ち悪すぎる。想像したくもない。


「…でも今日コーヒーはやめとこ。体壊すよ。」


リラックスできる温かい飲み物のほうが絶対良い。
どうせ、馬鹿みたいにコーヒー飲みまくってたんだろうし。
そのうち胃に穴が開いちゃうと思う。

そうと決まれば少しでも千歳を労わろうとキッチンの方に向かう。
なんて俺は優しいんだ。

千歳のキッチンはいつも綺麗だ。
たぶん、料理なんかしないし、家にいる時間もそんなに無いからだと思う。こんなに広いのにもったいない。

お湯を沸かしている間に、お茶の葉が入ってる缶を探す。
缶が8種類くらいあるけど、全部俺が買ってきて勝手においていってるやつ。


「カモミールがいいかなぁ、レモングラス??」

「任せる」

「うわっ」


てっきりソファにいると思っていたのに、すぐ後ろに千歳がいて吃驚した。
思わず缶を落としそうになったけど、千歳はそれをなんなくキャッチする。
なにその運動神経の良さ。


「あ、ありがと…」


いつの間にか後ろにいたのか。
てか何しにこっち来た。

千歳から缶を受け取ろうと後ろを振り返ると、予想よりもずっと近くに居て心臓が止まりかける。

な、なんか近すぎるのですが?


「千歳?」


眠そうな目をしている千歳。その目で俺を捉えたまま、俺の手に缶を乗せてきた。
そのまま俺の身体を押し付けてきて、戸棚に背中がぶつかる。

えっ


「ン」


なぜか突然キスされた。
今、そんな雰囲気なかったよね?


「ひ…ひほへ…っ」


左手で缶を抱えながら、千歳の深いキスを受ける。
俺が息を吸い込む絶妙なタイミングで、千歳の舌が俺の舌に絡んできた。鼻にかかった甘い声が静かな室内に響き渡る。なぜこうも、俺のタイミングがわかるんだろう。


「んん、ン、っはぁ」


2カ月ぶりにも関わらず遠慮のないキスに、空いている手で千歳の胸倉を掴むが、千歳はその手に大きな手を重ねてくるだけ。何なら指先を絡めてきた。
長い指先が、一本一本俺の指に絡みつく。


違う、誰も手をつないでなんて言ってないんだよ。
俺もはっきりそう言えばいいのに、大人しくキスを受けてるなんて笑える。


【ガチャンッ】


その時、俺の手元から缶が落ちた。
ぴたりと止まるキス。


あ…。


嫌な予感を感じながら、足元を見ると、散らばっているカモミールの茶葉たち。
パラパラと綺麗なフローリングを汚してしまっている。


「ご、ごめ…」

「別にいい。」

「えっ?うわっ!」


慌てて片付けようとしゃがんだ途端、宙に浮いた体。
何事かと目を見開くと、千歳に担がれてるようだった。

なっ…なんで?

片付けは?
てか、飲み物は?

え?


気づけば俺は寝室に連れ込まれて、ベッドの上に置かれた。
背中に若干の衝撃を感じるが、痛くも苦しくもない。
…苦しくはないけど、千歳の匂いに一気に包まれたせいで、頭が沸きそうになる。

なんでこうも、こいつの匂いに弱いんだろうか。


「おい!なに急にーー…!」


このまま流されるのも癪なので、反発しようと身体を起こす。

が、文句を言いきる前に、俺は口を閉ざす羽目に。


「眠い。限界」


視界の暴力ってこのことを言うんだろうか。
俺に覆いかぶさりながら、俺を見下ろす千歳に思わず唾を飲み込む。


気だるげな顔をしているだけで、こんなに色気を出せるもん?


そのままゆったりと、俺の脇腹に触れる千歳。
眠いとか言いながら、こんな官能的に俺の肌に触れるな。


「…なら、寝ればいいじゃん」


かなりお疲れのご様子ですし。
中途半端に触られるぐらいだったら、寝てくれたほうがマシだ。

…俺、今日お邪魔しないほうがよかったかな。


俺の一言に千歳は小さく鼻で笑うだけ。
おい、なんだその小馬鹿にした態度。


「拗ねるなよ」

「は?」

「さっきも言っただろ、お前より先に寝るつもりはねえよ。」


そう言って、千歳はゆったりとした手つきで腰から鎖骨の方まで掌を滑らせてきた。
まるで俺の身体の形を再確認してるかのように、指先でスルスルと肌の表面を撫でていく。


「っ…」


俺はその滑らかな手つきに吐息を漏らしそうになるが、千歳の言葉にハッとした。


待て待て待て。
俺が?
拗ねてるだと?


「拗ねてないですが!?」


異議ありと言わんばかりに肘で千歳の身体を押し上げる。
千歳に身体を触られてるせいで全然力は入らないけど。

この、主導権が常にこいつにある感じが凄く嫌!


「そうですか」


俺の肘をすんなりどけながら適当に流す千歳。
その流れでシャツを脱がされ、素肌が冷えた空気に晒される。

ぐぅ…!

結局こうだ。
俺はどうしたって千歳には勝てないし、なんなら千歳には全部お見通しだし。


「俺の事労わってくれんだろ?」


黙ったままの俺に、千歳は俺に問いかけてきた。
俺を見下ろしているだけなのにその無駄な色気は何なんだ。

確かに俺はさっきそう言ったけどさ。
俺もそのつもりだったし。

けれども、この『労わる』という言葉に色んな意味が含まれている気がしてならない。
おまけにさっき千歳の言っていた【お前が寝るまで寝ない】宣言が怖すぎる。


「…ねえ。」


視線を明後日の方に向けたまま、千歳に問いかける。


「やっぱりこのまま睡眠に入るってのはどうでしょう。」

「この状況で承認されると思うか?」


秒で却下された。
顎を掴まれ無理やり視線を合わせられる。

…いひゃい。
突然俺様になるなよ。


思い返してみれば、こう言う時俺の意見が通ったことがないんだよな
振り回されるのはいつも俺。
今回も千歳のターンだし。


いつになったら千歳に勝つことができるんだろうかと、
千歳の優しいキスを受けながら考えた。



============

【あとがき】

もし千歳が寝てしまったら、それはそれでシュンとしちゃう涼。千歳はそれもお見通し。
あと普通に2カ月ぶりの涼抱きたいので睡魔を頑張って殺した。

涼は『俺がいつも振り回されている側』と思ってるけど、千歳からしたら『付き合うまでどれだけ苦労したと思ってるんだ』ってなると思う。


何か御座いましたら↓



神様に伝えて