!Attention!
・これは、777777HITのキリ番を踏んだ倉科さんへのリクエスト小説です!
・リクエスト内容:侑介×涼の『侑介呼びチャレンジ』
・付き合ってる
Present for 倉科さん!
そして、777777HITありがとうございました!
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「いつまでそうしてるつもりだよ。」
俺の下でソファに沈んでいる弟が、明らかに飽きた様子でそう言った。
今までテレビを見ていた視線が俺に向けられる。ダークブラウン色の真っ直ぐな目。俺はその目のせいで余計に言葉に詰まる。
「いい加減重い」
俺が侑君のお腹に跨った状態から、たぶん、5分は経った。何故この体勢になったかというと、俺が勢い任せに飛び込んだから。
俺の両手は、侑くんの固い胸の上。
出てきそうでなかなか出てこない言葉を出そうと奮闘しながら侑君の顔を見下ろしていたが、さすがに重たいらしい。
「ご、ごめ、侑く、」
「そうじゃねーだろ。」
「うあっ」
慌てて侑くんの上から退こうとしたら、侑くんの膝が俺の背中をゴツンと押した。
俺はそれのせいでガクンと前のめりに倒れかける。倒れる前に手を侑くんの顔の横に置いたけれど、侑くんの顔が、ドアップに。
く、唇が、
つきそうなんだけど
「俺をなんて呼ぶ気でいるんだっけ」
俺とは違って狼狽えることなく近距離のままそう聞いてきた。普段あまり表情を変えない侑くんが、薄く笑みを浮かべる。意地悪な顔だ。
俺はその顔を見下ろしながら、ううっ、と唇を噛み締めた。
こうなってしまったのには、俺に原因がある。
何気なくテレビを眺めていたらテレビの中の兄妹の妹が兄に対して『お兄ちゃん』と呼んでいた。それを見て俺はふと考える。あれ、俺そういえばいつから『お兄ちゃん』って呼んで貰えなくなってたんだっけって。
そして俺は、俺の後ろでソファに寝転んでいた侑くんに言ってみたのだ。
『俺のこと【お兄ちゃん】って呼んでみて』と。
侑くんは俺を見る事すらしないまま、『断る』と即答だった。
そこから俺の駄々っ子攻撃だ。
『俺もお兄ちゃんって呼ばれたい』
『俺はいつからこう呼ばれなくなった』
『一生のお願いだよ』
言いながら俺は全く話を聞いてくれない侑くんのお腹の上に跨る。
跨った時、『う゛っ』と苦しそうに呻きながら俺を苛立った目で睨みつけてきたけど。そんな顔も可愛い。
『お前の一生ってそんな安いの』
『侑くんの『お兄ちゃん』呼びはそれくらい価値がある』
『アホらし』
身体を起こしながら俺の胸を押してどかそうとする侑くん。俺は負けじと身体を前に倒して退くまいと必死になる。
いいじゃないか別に減るもんじゃないし!
しかも昔はそれで俺を呼んでいたんだし!確か!
『じゃあお前は俺のこと侑介って呼べるか?』
俺があまりにも粘るから諦めたらしい。俺の胸から手をどけて、顔をグッと近づけてきた。お、俺が侑くんを呼び捨て?
『で、出来るよ?』
言いつつも、俺が侑くんを呼び捨てで呼んだことがあっただろうかと過去を振り返る。少なくとも、俺の記憶にはない。ずっとユウクン呼びだ。
そんな俺の心情を察したのかそれとも全く気付いてないのか、どちらかわからないけれど侑くんは口許を緩めた。
俺はその、子供みたいな笑みに目を見開く。
なんだそのハチャメチャに可愛い笑顔は!!!
『じゃあ、お前が俺を呼び捨てで呼んだら俺もお前の望んでる愛称で返してやるよ』
そう言って侑君はまた、ソファに沈んだ。
侑くんを侑介呼びなんて、そんな簡単な挑戦でいいなら、と俺は口を開こうとする。
が、これが不思議なことに、
全く出てこなかった。
そして冒頭に戻る。
5分間、ずっと、俺は「ゆ、ゆーーーーー」を繰り替えしていた気がする。
あとは無言。頭の中で何回もユウスケという四文字を反復していたのに、全くの無駄。
「別に呼ばなくてもいいけど。」
「いや!絶対呼んでみせる!俺は何が何でも侑くんのお兄ちゃん呼びを聞きたい!」
「うるさ」
ただでさえ距離が近いのに声を荒げてしまった。
だって、なんか、照れちゃうんだもん。今までずっと呼び捨てでなんか呼んだことないんだから。
とりあえず、落ち着け俺。
恥ずかしいって思うから口に出せないんだ。
ふーっと大きく息を吐いてから侑くんを見下ろす。うっ、めっちゃ見られてる。
あー、だめだめ、無になれ。無に。
侑介って呼ぶだけだ。業務的なものだと思えば。そう、弟と思わないことが大事。
ゆうすけって呼べば、お兄ちゃん呼びを聞けるんだぞ、俺!
すると、突然侑君が笑いだした。
声に出して笑うもんだから吃驚する。
「な、なに…」
「いや、お前があまりにも真面目な顔するもんだから」
「へ?」
「必死すぎ」
どうやら、俺が真剣な顔をしていたのが笑ってしまったことの原因らしい。
たっ、確かに、俺は侑くんの前で真剣な顔なんてしないけれど!
そんな笑う事?
「いいよ、続けて」
ひとしきり笑った侑くん
けれど俺は余計にどんな顔をすればいいかわからなくなる。
続けてって言ったって…
俺の真顔ってそんなにおかしいのかな。
もう!
余計に呼びづらいじゃんかあ!
「う・・・ゆ、ゆう…侑くん」
「だめ」
「侑くん!」
「声大きくしろなんて言ってねーだろ」
「あー!もう!侑くんちょっと目瞑ってて!」
見られてるから余計に恥ずかしいんだ!
両の手のひらで侑くんの目を隠そうとする。
が、手首をぎゅっと握られてしまった。阻止された!
「なんで」
「恥ずかしいからだよ!」
「いいじゃん、真面目な顔。」
侑くんは目を瞑る気はこれっぽっちもないらしい。
むしろ俺の顔をじっと見上げてくるもんだからやりづらいったらありゃしない。
ぐ、ぐうっ〜!
その顔で俺を見つめてこないでよ〜!
「ゆう、」
「・・・」
「す、す、す、すすすすす」
ここでまた侑くんが笑った。「なんでそうなんだよ」とおかしそうに笑い声をあげている。
俺はもう恥ずかしくて仕方なくて、たぶん、顔が真っ赤。侑君の笑顔を見れるのはそりゃあもう滅茶苦茶嬉しいし、録画もしたいレベルだ。でもそれよりもずっとずっと恥ずかしい!
そんな俺を見て、さすがに見かねたのか侑くんがお手本を呟いてくれた。
「侑介。」
簡単だろ、とまるで、子供に教えるかのように優しく言ってくれる侑くん。
侑くんは、自分の名前を「ゆうすけ」と言うのではなく「ゆーすけ」と『う』を伸ばして発音するらしい。それがまた可愛くて、俺はきゅん、としてしまう。
そういえば、俺を呼ぶときも、「りょう」というよりはどちらかといえば「りょー」の方が近い気がする。新しい発見をしてしまった。
「ゆ…、す、け」
侑くんに手首を握られながらも、侑くんの言ったことを繰り返す
滅茶苦茶震えてる声。
侑くんの顔なんて見れなくて、視線は斜め右下。
あまりにも小さすぎたのか、侑君が「ん?」と聞き返してきた。
「…ゆ、ゆーすけ、侑介、」
今度こそ、はっきりと侑くんの名前を呼んでみせた。
侑介、と、俺は人生で初めて弟を呼び捨てにした。
めっっっっちゃくちゃ恥ずかしい。なんでこんな照れちゃうのかわからない。
頭からお湯被ったみたいに熱いし。
「・・・聞こえてますか?」
黙ったままの侑くんに確認してみる
すると、侑くんが身体を起こした。
俺はずるずると侑くんの太ももの方に体が落ちていく羽目に。
後ろにひっくり返りそうになったとき、侑くんが俺の腰に腕を回してくれた。
こ、腰、
腕っ!
しかもそれだけじゃなく、俺の顔を覗く侑くん。
ジッと見てくるもんだから、唇を噛んで目を瞑る。
そんなに見ないでください。
「顔真っ赤」
「・・・・うるさいよ、侑介」
調子に乗ってもう一回呼び捨てにしてみた。違和感しかない。
顔が赤いと指摘されつつも、うっすら目を開けて侑君の顔を両手で挟み込む。
目を細めて笑う侑くん。俺が侑くんに"うるさい"って言ったのが面白いのかもしれない。普段そんなこと言わないから。
「そんなことより早くお兄ちゃんって呼んでよ」
俺は侑くんに呼んでもらうために、侑くんを呼び捨てにしたんだ。
俺が呼び捨てで呼ぶことですら照れたんだから、侑くんだったらもっと照れるに違いない。侑君の照れ顔を拝もうと、目を開けて侑くんの顔を見つめる。
けれど予想と違って侑くんは照れる事もなく、俺の右手に触れた。
侑くんの顔から俺の右手を剥がすようにして、俺の手を取る侑くん。
「兄貴じゃだめ?」
「だめ。お兄ちゃんがいい。」
「・・・はあ。」
俺の手に触れながら大きなため息をつく侑くん。
そしてあろうことか、侑くんが俺の手のひらに唇を当ててきた。
えっ。
ちゅ、と柔らかい唇が俺の肌に吸い付く。そしてわずかに歯の感触。じりじりと甘い痺れが、その部分から神経を伝っていく
俺にとってはもう、髪の毛が全部逆立ってるんじゃないかと思うほどの衝撃で。
しかも、極め付けは破壊力満点の、色っぽい笑顔。
そんな顔で、
「仰せのままに、お兄ちゃん」
なんて言われてしまったら。
このたったの一文に死にそうになったのは言うまでもない。
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あとがき。
普段、涼は侑介のことを呼び捨てで呼ばないので書いてるこっちも何だか恥ずかしくなりながら書きました。如何でしたでしょうか、倉科さん!
真剣な顔をしてる涼がみたいとのことでしたが、申し訳ないことに、あまり書けなかった…。反省。
この一件のあと、侑介が涼に呼び捨てで呼ばれるのハマってそう。「侑介って呼べよ」って迫ったりして、涼パニックになると思う。性行為中に耳元で囁いてそうですね。
涼は、「小さいとき侑君は俺を『お兄ちゃん』って呼んでくれていた!」って言ってましたが、たぶん言ってません。記憶の改ざんです(笑)『涼ちゃん』か『兄さん』かのどっちかだと思います。
それでは、最後にもう一度、キリ番を踏んでくれた倉科さんに御礼申し上げます!
これからもどうぞ、仲良くしてください!
ありがとうございました!
2018.01.10
何か御座いましたら↓
その唇に求愛