!Attention!

・真澄×涼
・付き合ってる(同棲中)
・社会人設定

・ハロウィンネタ

以上を踏まえてお読みください。



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今日は10/31
世間ではハロウィンイベントが大賑わいしてる。

コスプレをして、謳い文句を言い、経済効果を狙うイベント。
そして俺もその風潮に乗っ取りハロウィンを楽しんでいる。

一人で。



「むなしすぎだろ。」



鏡の前で一人、高校時代の先輩から貰ったコスプレセットを頭につけながらボソ、と呟いた。誰もいない部屋。余計に虚しくなる。

時計はもう、日付が変わりそうな時間。
本来ならば同居人のもう一人がいるはずだけれども、連絡がない。正確には1時間ほど前に『そろそろ帰る』と連絡が来たが、全くそろそろではない。どうせ仕事が長引いているんだ。

お互い、こういうイベントに激しく乗っかるタイプではないから特に何か特別なことをするわけでもないし、楽しみにしてる訳でもない。

だったのだが、夕方ごろ、相変わらず女装が似合う先輩が突然俺らの家に来て『たまにはこういうイベントも楽しみなよ』と言ってコスプレセットとお菓子を置いて行ってくれたのだ。

ゾンビメイクをしていたけれど美人なのには変わらないし、いまだに女装をし続けられるのも本当にすごい。そしてそんな彼がおいてったコスプレセットは、赤ずきん一式と狼の耳と尻尾。あと首輪。なんだこれ。


そして、思いのほか帰りが遅すぎる同居人を待つのが暇で、俺はその紙袋を漁ったのだった。


ちなみに、赤ずきんではなく狼耳の方をつけてる。尻尾も。
有岡さん的には俺に赤ずきんを着せる気だったんだろうけど、着ない。なんかすげーんだもん。


「つか遅すぎ真澄!」


11時だぞ11時!
こんなに遅いの普段ないのに!なんで!!

もういっそ先にお風呂にでも入ってようか、と思い風呂場に向かったところで玄関のカギがガチャッと開く音がした。


あ。



「ただいま」

「…おかえり!」


走ってきた俺を見て、真澄は微笑んだ。外はやっぱり寒いのか、鼻と頬がうっすらピンクに染まってる。

それ以外はいつも通りで、特に何かがあったって訳でもないみたいで安心する。事故とかじゃなくてよかった。


「ごめんね、遅くなって。道がすごく混んでた」

「ハロウィン?」

「さあ?」


やっぱり興味があまりないらしい真澄。
靴を脱いで俺の隣を通り過ぎる際、俺の唇にキスを一つ。冷たい手が俺の頬に滑る。

そして、俺の頭をスル、と撫でてきた。


「今日は耳が多いね。尻尾もある。」


その言葉にハッとする。

俺、獣耳と尻尾つけっぱなしだ!!!


「っあ、これ、有岡さんが、今日くれて…!」

「有岡さん?わざわざ来たの?」

「そう。それ一式くれた」


ソファに乗っかったままの紙袋を指さすと、真澄がそれを拾った。
中を覗いて余った赤ずきんコスプレを手に取る。あと首輪。

俺はなんとなく気まずくなって耳と尻尾を慌てて外した


「外しちゃうの?可愛いのに」

「これは暇すぎてつけただけだから」


言い訳がましい。
少し早口になってしまった俺を横目に笑う真澄。


「これは着ないの」


真澄が言う『これ』は赤ずきんの方のコスプレだろう。
さっきチラっとみたけど、なんというか、男が着るようなものではない。赤いフードマントとは別に、メイド服みたいなものが付属されていた。


「着ないよ!」

「絶対似合うのに」


俺が照れてるとわかっているのだろう。
俯こうとする俺の顎の下に指を置いて顔を覗く真澄。真澄の綺麗な瞳がゆったりと細くなっている。そんな微笑み浮かべたって着ない。絶対着ないぞ。


「こんな可愛い子がいたならもっと早く帰って来たかったな。ずっと耳と尻尾つけてたの?」

「つけてない!あとそんな甘い言葉吐いたって着ないものは着ないから!」


そもそも真澄だってハロウィンとか馬鹿らしいって思ってる側だろ!!

俺を撫でる真澄の手を掴んで真澄のお願いを断固拒否する。冷たい手。
それがスル、と握り返されて心臓が揺れた。いまだにドキッてしちゃうんだよな、うっ。


「…ハロウィン、興味ないくせに。」

「他人のコスプレとかは全く興味ないけど恋人なら別じゃない?」

「・・・そうですか」


なんだよ、それ。お前俺のこと大好きかよ。
俺にとことん甘いとこ、狡すぎると思う。

昔から甘かったけれど、俺を褒める言葉も愛を囁くのも何倍も増えた。正直もうタジタジだ。


「つか、男がこんな服きても変だろ。俺ガリガリだし」

「…あれ、褒めたりなかった?」

「いえ、もういいです」


もっと甘い言葉吐かれそうで即答で拒否ると真澄が笑った。
つか何で俺着てやってもいいけど、みたいな雰囲気出しちゃってんだろ。着ないぞ。


とか思ってたら真澄がすでにパッケージを破り始めてる。え、着せる気満々なの。


「有岡さんは涼の事よくわかってるよね」


あまり甘すぎないそのコスチューム。胸元が白のふんわりしたもので、それに黒のコルセット、暗めの赤の膝丈フレアになってる。女の子がきてたら普通に可愛いと思うけれど、俺は胸も無ければお尻もないから、全体的に凹凸がない。残念体系だ。


「似合わないから着ない」

「有岡さんの御厚意を無駄にするの?」


厚意か?絶対面白がってるだけでしょ。
でも、もし真澄がチクったりして一度も着ずに捨てたと知ればそれはそれで有岡さんがご立腹になってしまう気がする。面倒臭い。

真澄のその一言に何となくすべてを察した俺は黙る事に。
でもまて、俺だけコスプレするっておかしくない?


「腑に落ちない!フェアじゃない!」

「俺がその耳つければいいなら全然つけるけど」

「ふ、フェアじゃない…!首輪と尻尾もつけろ!あと見返りを求める!」


俺は腕も胸元も膝から下も肌晒さなきゃいけないのに、真澄は耳だけって!
全くフェアじゃない!


「別になんでもつけるけど、見返りって…あ、カボチャのシフォンケーキあるよ」

「え」

「買っておいた。あとで食べて」


え。
めっちゃ食べたい。
一応お菓子買ってきてくれたんだ。嬉しい。興味ないくせに。

でもきっと、"あとで食べて"には、"(コスプレするなら)あとで食べて(いいよ)"が含まれているんだろうけど。っく!なんてやつだ!


「仕方ないから、着る」

「単純」

「感謝しろよ」


真澄からコスプレ一式を乱暴に奪い、脱衣場に足を進める。その前に、真澄の頭に狼耳のカチューシャをのせ、首輪をつけてから。尻尾は自分でつけろ。


「お座りしてベッドで待ってな、ワンちゃん」


首輪についたチェーンを引っ張ってそう吐き捨てると、真澄は目を細めた。挑戦的な笑み。むかつくくらいイケメンだ。耳も似合ってる。スーツ姿なのが少し違和感だけど。

つか俺が食べられる側なのに、なに言ってんだろ。

なんか恥ずかしくなってきた。





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(あとがき)

どうせイタズラするからトリックオアトリートとか聞かない。

スーツに首輪に耳に尻尾ってなんか良くないですか。








全ては君の言う通り