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や・・・
ば、くないか、
誰この色男
真澄の顔と触れている部分がぞわぞわと、何かに犯されたみたいになった
真澄の色気が大変なことになってる。
飽和状態になって溢れまくってるみたい
「ほ、褒めて、たって…」
視線が定まらないまま、ひとりごとのように呟いた。
真澄が、こんな風に甘えてくるなんて。熱のせいでリミッターが外れてるとはいえ、やっぱりたじろぐ
手も、熱いし、
視界の端に、真澄のいい身体が映るし、
・・・くっ・・・、
「……ますみは、いけめんです…?」
どうにか真澄に掴まれてる手を外しながら、替えの服を手に取った。絞り出すような声で真澄の要望に応える
といっても、しょうもないこと。本当に、中身がない言葉。
だけれど、真澄は「そう」と相槌を打ちながら俺の言葉に満足そうに目を伏せた。
ええ?
嘘だろ、まじでこんなことでも満足するの?外見褒められただけでそんな満足そうな顔すんなよもう。
「冗談だって、おい、寝るなよ」
「…?」
「ええと…真澄は努力家で、でも才能もあって、あと、誰よりも俺に優しくて、厳しくて…」
優しいってのも、なんか在り来たりな言葉だけど…そんなことを思いながら真澄の頭からズボッと服を被せた。なんかムキになってるな、俺。いつもこうだ。
「俺、お前のことたくさん尊敬してるよ。あげればきりないけど、弱音吐かないとことかさ」
よいしょ、と真澄の腕を通してどうにか着替えを終わらせる。いつもの真澄。服を着たことによって幾分かマシになった。
「・・・」
マシになったけど、
すぐ目の前に、真澄の火照った色っぽい顔。
瞼も重たそうに開かれていて、熱のある目でぼんやりと俺を見つめてる。
なんだよその顔
そんな見つめられると恥ずかしいんだけど
「…真澄さあ、」
自分が今どれだけエロい顔してるのか自覚してんの?
そう聞こうとしたら、真澄のあっつい指先が俺のうなじに触れた。
本当に一瞬だったから、瞬きする暇もない。けれど、真澄の顔が急にどアップになった。
マスク越しに唇に圧迫感。
マスクしてるからボスッて感じ。
いや、
えっ、
驚いた俺の瞳と、真澄の蕩けそうな瞳との視線が数cmの距離でぶつかる。
それもまた2秒くらいの出来事で、そのあともたれかかるようにして真澄が俺の肩に顔を埋めてきた
ガクン、と急に重たくなる左肩
・・・あ??????
「真澄?」
今のなんだよ
またキスしなかった俺ら。
え?
熱い真澄の身体は、俺にもたれかかったまま。
そっと揺すってみても返事は聞こえてこない。
寝た。
俺にまたキスして寝たよこいつ!!
「お、おまえ、熱出るとキス魔になんの?」
やっぱり、返事はない。
…ま、いっか。
いや、よくないけど、俺もよくわかってないけど!こいつを叩き起こして問いただすわけにもいかない。
しかもディープキスしたんだから今更マスク越しのキスなんてたかがしれてる、と、おもう。あれ?なんか俺ちょっと正常じゃない?
「はあー、もう、なんなの…」
熱がある真澄は、相当罪深い奴だな。
相部屋が俺じゃなかったら、どうなってたんだろう。普段ストイックだからその反動がすごいんじゃないの。全く。
仕方なく、黙ったまま真澄の身体をそっとベッドに戻してやる
こてん、と枕に頭が転がりまるで気を失ったかのように眠り込んでいる真澄
キスもどうかと思うけど、あの真澄が『褒めて』なんてなあ…
あれを言ったことは、熱が下がってても覚えてるのかな。それともすっかり忘れてる?
忘れてたとしても、今度からさりげなく真澄褒めてあげよ…真澄も子供っぽいとこがあって逆に安心した。
真澄の髪をひと撫でして、真澄の部屋を出る。保健室にいって薬を取りに行かないとだから。いや、まじであいつの熱は今すぐにでも下げなければいけない。
俺制服のままだしこのまま行って大丈夫だよな。あと、ついでにポカリとか、ゼリーとか買ってこよ…
ご飯は食べれるんだろうか。
うどんとおかゆどっちがいいかなあ…
ーーー・・・
「佐々木先生〜解熱剤くださ〜い」
持っていた解熱剤が切れたから保健室に来た。
保健室の扉を開けながら担当の先生に声をかける。佐々木先生。今日はちゃんといるっぽい。
「あれ、涼くん。僕今からちょうど君たちの部屋に行こうとしてたところだよ。」
黒髪眼鏡の、白衣を着た割と若い佐々木先生。俺の姿を見て、「あららー」と言った。
「ごめんね、もう少し早く行けば良かったねえ」
「いえ、別にわざわざ先生に来て頂くのも気が引けますし…」
苦笑する先生に首を振る
あー、でも寮生が具合悪くしたら保健医が様子見に来んだっけ…
「そういう決まりだからね。…真澄くん、具合どうなの?症状は?」
長椅子に腰掛けた俺の隣に腰掛ける佐々木先生
白衣も、中に着ているシャツも、パリッとした皺のない服から几帳面な性格がうかがえる。真澄と同じタイプだ。
「…熱は最初39度あって、俺が持ってる薬飲ませたら37度後半くらいになりました。昨日は吐いたみたいでまだ何も口にしてません。水は飲ませました」
「高熱だね…今も吐き気とか下痢とかある?」
「…は、ないみたいですけど」
「んー、胃腸炎じゃないっぽいかなあ…?すぐ病院連れてってもいいけど…様子見しよっか。解熱剤と冷えピタ渡しとくね。」
先生からそれらを受け取って立ち上がる。何か変な病気じゃなきゃいいけど
「涼くん」
保健室を出ようとしたら佐々木先生に声をかけられた
「?はい」
「昨日、大変な目にあったんでしょう?怪我とか、ない?」
先生が心底心配そうな目を向けてきた。
あぁ、昨日。
もうこの短期間に色々ありすぎて、あんなこと大したことじゃないって思っちゃうんだよね
「俺は平気ですけど、むしろ相手が大怪我なんじゃないですかね」
侑くん、と、真澄によって殴られた彼
…そういえば、侑くん。まだ、俺昨日から一度も連絡してない。
というか、携帯の電源すらつけてない。
初めてかも。
侑くんに連絡を取ってない日なんて。
「二回も血だらけで来るもんだから吃驚したよ。君は本当に大事にされてるね。…あの真澄くんが…ふふ、彼も意外と熱い子なのかなあ」
先生が楽しそうに話す。
やっぱり、他人から見ても真澄が手を挙げたのは予想外だったらしい。なんで侑くんは驚かれないのか謎だけど。
「本当に君は大丈夫?」
「はい、いつもと何も変わらないです」
まあ他のことでは色々あるけれど。
考えてみたら、俺のレイプされかけたこと学校に広まってるのかな。変な目で見られるんだろうか。
んー…
まあいいか。
「また何かあったら連絡します。」
一応頭を下げてから保健室を出た。
早く部屋に戻りたいし。
真澄の熱早く下がってくれないかな
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bkm