15*
一瞬唇が触れ合っただけで、すぐに俺は身を引いた。
内心自分でも滅茶苦茶馬鹿だと思うし、恥ずかしくなるけど、その態度を見せないようにどうにか表情を作る
「どーだ…!」
口元を引き攣らせながらドヤ顔を浮かべた。真澄の短い襟足を遊ぶようにしてうなじに指を滑らせる。なんか首熱くねこいつ。
すると、案の定固まってる真澄。
動揺してる…
あの真澄が!
その予想外の反応が面白くて、ふはっ、と笑い声が漏れた
「真澄だって動揺してんンッ!?」
馬鹿にしようとしたら、その言葉が一瞬で封じられた。がぶ、ではないけれどそれに近い勢いで、真澄の唇が俺の口を塞ぐ
今度は俺が固まる番だった
え゛っ
「ぅあっ…!」
頭を真澄の手でホールドされて、俺の唇の隙間から真澄の舌が入ってきた
深く唇を合わせ、奥に引っ込んでいた俺の舌を絡め取る真澄の舌。はあ、と熱い吐息が唇にぶつかる。
その行為に、
俺は頭の中がパニックになった。
真澄の舌が、俺の口の中に、
舌が、
し・・・・、
「っぃ゛」
「っうわ、ごめんっっ!!」
訳が分からず身体を硬直させていたら、その拍子に真澄の口を噛んでしまったらしい。ガチンと嫌な音がした。
口を押さえて俯く真澄
う、うわあっ、えっ、
やばい?!
「ご、ごめん、そんなつもりじゃっ…!俺、わかんなくて、」
なんか結構強く噛んじゃった気がする!!!
俯く真澄の肩を掴んで必死に謝る。
いや、急にディープキスなんかしてくる真澄が悪い気がするけどね?いや本当急になにしてんだよこいつなんでディープキスとか…!
オロオロしながら真澄の顔を覗き込む。
押さえてる手を剥がすと真澄の唇からじんわりと血が滲んでいるのがわかった
う、うああっ
「ほ、本当にごめん、噛むつもりは無かった、ん、だけど…」
真澄の顎に手を添えてその傷を見る。
い、痛そう…
皮が破けて、そこから溢れてくる赤い液体。
それをどうしたもんかと眺めていたら真澄が口を動かした
「舐めて」
「・・・へっ?」
「血。申し訳ないと思ってるなら」
その言葉に俺の脳の活動が止まった。
な、なめ…?
吃驚して真澄の表情をうかがう。こいつ正気かと。
真澄は目をゆったりと細めて、口元も綻ばせている。そして壁に手をついて、俺に顔を近づけた。
「見て、舌も噛まれたの」
舌を見せられて、確かに舌も血が滲んでいて痛そうだと顔を歪めた。やめろよ、悪いことしたって、思っちゃうだろ
「い、痛いの…?」
「痛くないわけないでしょ。」
俺のアホな発言にクス、と笑みを零した真澄。そして口を開けて舌を出してきた
舐めろ、と有無を言わせない目。どこか頬も紅潮していて、その普通じゃない色っぽさに何故か顔が熱くなる
一体、真澄、どうしちゃったんだよ…!
「っ、」
この時、馬鹿言うな!と真澄を突き飛ばしてしまえばそれで済む話だったと思う。
けれど何故か俺は気づいたら恐る恐る唇を近づけていた。申し訳なさからくる罪悪感からなのか、なんなのか。いや、罪悪感以外何もないんだけど。
"申し訳ないと思ってるなら"
真澄の言葉を思い出して、息を飲んだ。
真澄の表情を上目遣いで確認しながら舌を少し出す。
ううっ、
お、俺が怪我させたんだしっ…!
そんなことを思いながら、ゆっくりと自分の舌先を真澄の舌につけた。恐る恐るそれを絡めるようにして自分の口内に引き寄せる
熱い真澄の舌と、
じんわりと広がる鉄の味。
それに顔を顰めつつも、真澄の傷がなるべく痛くならないようにそっと舌を動かした
「…ん、ぅ…」
は、はずかしすぎる…
呼吸がうまくできなくて、変な声が漏れるのが余計に。
つか、本当なんでこんなことしてんだろう。何かおかしいと思っても、真澄の言葉に従ってしまう癖がある俺は見事に操られている。
とにかく血を拭わなければと、頭にはそれだけ。
真澄の顔をそっと両手で挟み込みながら唇にも舌を這わした。
チュ、というキス独特の水音が響いて、耳がおかしくなりそうになる
こ、こんなの…
つか今日、俺の身に何が起こって…!!
「っ、はぁ、…もう、いい……ンッ」
そろそろいいかと思って息を吸おうと唇を離したら、追い打ちをかけるように真澄の舌が俺の口内に入ってきた。ぬるり、とした熱い舌が俺のに絡みつく。
えっ!?
「まっ…ふ、ぅ」
慌てる俺を無視して、両手首を握られた。
熱すぎる真澄の手。
俺の舌をゆっくりと舌で撫で、チュウ、と唇を吸われる。その刺激にビクッ、と身体が跳ねた
優しいけど強引な接吻。
同時に俺の頭をクラクラさせるほど、刺激の強いもの
な、なんで、
こんなことに
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bkm