09*
侑くんの熱い唇が触れたその部分から、熱がじわじわ広がって痺れが走った。
微かに漏れる相手の吐息から甘い感覚が背筋に流れて、息が詰まる
な、なにこれ…
何が起きて、
「ゆっ……ン…はぁ…」
名前を呼ぼうとしたら、自分でも耳を疑う変な声が漏れた。女みたいな声。
理由は、ヌルリとしたものが俺の首筋を舐めたから。
見なくてもわかる、この感覚は、舌だ。
ゆ、ゆ、
侑くんが、俺の首を舐めてる…?
その事実に驚愕した
不思議なことに、あの男とは全く違う反応をしてしまってる俺。
同じく首を舐められてるというのに、ビクビク反応する身体と変な声がそれを物語っている
や、やばい、
なんか、身体、変、
「ど、どうしたの、ゆぅ…ぁ…っ」
意味がわからないでいたら『カプ、』と首を甘噛みされた。
鼻にかかる甘い声を漏らしながらビクッと跳ねる身体。
肌にじんわり突き刺さる歯。
決して痛くはないけれど、舌とは違う刺激に目の前がクラクラした。
「っ、ふぁ…、ァ、」
やばい、変な声ばっか出てる俺。
そんなつもりじゃないのに、恥ずかしくて死にそう。
なんで俺こんな、
「ぅ、…、ゆ、…ッ」
どんなに声を抑えようとしても漏れてしまう声の恥ずかしさと、全身を駆け巡る甘い痺れで立ってらなくなった。
侑くんのTシャツに頑張ってしがみつくと、腰に手を当てられて余計腰が砕けそうになる。
「ッ」
何度も繰り返される、首へのキス、這う舌、甘噛みに脳みそがデロデロと溶けていってしまってるかのようだった
俺は変な声を漏らしながら侑くんにひたすらしがみついているだけ。侑くんに支えられてないと立ってられないほど足を震わせながら。
…なんでこんなことしてるの侑くん
こんなこと、兄弟でやるなんて間違ってるよ
そう思うけれど侑くんを突き放すことが出来ない。だめだよ、って言わなきゃいけないのに、身体が動いてくれない
どうして、侑くん
「い゛ッ」
そう考えてたら、ジリッという鋭い痛みが走った。その痛みに小さく呻く
い、痛い
さっきあの男に食らったのと似てる
すると侑くんが「ごめん」と耳元で囁いてきた。その吐息にもゾクゾクしちゃう俺
はぁ、と甘ったるい息を零して侑くんを見上げたら、侑くんと目があった
初めて見た、侑くんの熱っぽい瞳
俺をしっかりと捉えていて、でもなにを考えてるのかわからない
「俺相手ですらそんな可愛い反応すんの」
侑くんがボソっと呟いた。
眉を寄せて、どこか苦しそうな表情。
同時に首筋をそっと指でなぞられてビクッとした。身体が熱が出たみたいに火照っていて、触られたところから痺れが全身に流れていくみたい。
あつい、
きっと今、顔真っ赤だ
「どうしたの侑くん、こ、こんな…首…」
舐めるなんて、
と声が途切れ途切れになりながら侑くんに尋ねた。完全に俺、腰が抜けてるな、普通に立ってらんない。ださすぎ。
「嫉妬した」
し、
嫉妬?
なにに?
投げやりに答えられた言葉にキョトンとした。どういうことなの。
「つか涼、抵抗くらいしろよ」
「で、出来ないよ、」
「なんで」
なんでと聞かれても…
侑くんの言葉に戸惑う
だって、出来なかったんだもん。侑くんはあの男とは別物なんだし、抵抗なんてそんな、…。
「そんなんじゃまじで食われるぞ」
侑くんに顎を掴まれた。
唇がつきそうな至近距離にギョッと目を見開く。悲しみにも怒りにも捉えられる表情の侑くん。
どうしてさっきからそんな顔ばかりするの
俺まで心臓が痛くなるような侑くんの顔。初めて見る一面ばかりで頭が追いつかない。
俺は弟を理解してるようで、全く理解できてないんだと悲しくなった。
「お、俺は…侑くんを否定するなんて、できな…」
言いかけたその時、
バーーン!と大きな音を立てて、
トイレのドアが思い切り開いた
「っ!?」
俺から慌てて離れた侑くん。
俺も突然の事に頭が追いつかず唖然としながらドアを見る
するとそこには、升谷が立っていた
俺と侑くんを見て、乗り込んできた側の癖にびっくりした様子の升谷
けれど数秒してハッとしたように「うわああっ」と叫んだ
「住吉様から離れてー!!!」
そう言ってボールを投げる升谷
さすがの侑くんも驚きには勝てなかったらしく、避ける暇もなくTシャツにビシャっとインクがかかってしまった
シーンとする室内。
わ、忘れてた…
今ゲーム中だった。
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bkm