07
「へー、書記さんのそんな怯えた顔初めて見た。最高ですねー!」
俺の眼鏡とヅラを取りながら興奮した様子を見せるモブ
き、気持ち悪い。し、まじで怖い。
泣くまいと、必死に目を瞑って男を視界から消す。
誰か、俺がここに居る事に気づいて迎えにくるだろ、と願いながら。
けれど、廊下の方からは色んな人の叫び声とかして今この階が大変な事になっていることがわかって絶望した。きっと、皆俺に構ってる暇なんてないんだろう。
誰か、まじで、誰でもいいから来てくれ。
そんでこの男ぶちのめしてくれ。
そう思ってる間にも、男が俺の顔を撫でて来てゾッとした。
生暖かい手。かなり顔が近いのか、男の吐息も頬に感じて鳥肌が止まらない。
「良い匂いだなあ、やっぱ高貴な人は体臭も違いますね〜」
「ッ、ン゛ン!」
首筋に男の吐息が当たった。
気持ちが悪すぎる。やめてくれ、本当に。
顔に置いてあった手も俺の脇腹の方に移動していて、気持ちの悪い手つきで触られていく。
身体の側面を上から下まで、ゆっくり撫でる男。
怖さのあまり、くすぐったさも感じない俺は小刻みに震えた
けれどそれを、良い感度だと思った男が、笑う
「やっぱり書記さんなだけあって、感度が良いですね。いつも会長とか副会長のお世話をしてるからかなあ?」
なんでそこで二人が出てくんだよ。
助けて欲しいけど、そいつら関係ねーだろ。
「ン゛ッ」
すると、首筋にヌルリとしたものが這った。
鎖骨らへんから、顎の方まで伝っていくそれ。
目を瞑っていてもわかる。
首を舐められているのだと。
くそっ…
その気持ち悪さに今度こそ涙が零れた。
ハアハア、と首筋に当たる生暖かい吐息も、ピチャピチャとなる水音も、何もかもが恐怖を引き立てていく。しかも身体撫でられまくってるし。
「肌も白いし、滑らかだし、いいよ書記さん」
うるせえ、耳元で囁くな。
なんかもう、舐められたところはもちろんだけど全部が腐っていく感じがする。
何で俺こんな目に遭ってんの。生徒会の人間だからか。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してくださいね」
え・・・
その言葉に目を見開いた。
数分ぶりの視線を男に向けると、俺の首に顔を埋めてる様子。けれど、カメラはばっちりこちらに向けられている。
目、あけるべきじゃなかったと思っていたら、首筋にジリッ!!と鋭い痛みが走った
「ン゛ン゛ッ」
その痛さに呻く
なにこれ、首噛まれたのかと思った、一瞬だけど
奴が頭を上げそうになったから慌てて目を閉じる。こいつの顔なんか見たら俺は気絶するだろう。いや、もういっそ気絶して目が覚めてたら事が終わってた、の方が幸せなのかもしれない。レイプするなら俺が気を失ってからにしてくれ。
チリチリする首筋に嫌な思いをしていたら、今度はTシャツをたくし上げられた。
腹はもちろん、胸まで空気にさらされる。
「エッロい腰してんな。え?」
男が楽しそうな声で呟いた。
直接腰を撫でられて「最悪だ」と思う。
これどうせあれだろ、もう、この後、身体さんざん弄られた後俺ケツ掘られるんでしょ?
なんで俺意識失わないの。
それともこいつの性器みたら気失えるかな。
想像して吐き気を催しながら涙を浮かべていたら、トイレのドアが開く音がした。
えっ?
俺の気のせいかと思うが、男も手を止めたため、それが現実だと知る。
誰かが室内にいる、その事実にさらに泣きそうになった。
「ン゛ーーーーーーー!!!ン゛ンンンー!!!」
自分が出来る限りの声を上げて主張した。
足で扉をガンガン蹴って、存在をアピールする。
誰か!
誰でもいい!
俺を助けて!!!
すると、男にバキッ!!!と顔を殴られた。その傷みに言葉を失う俺。
当たり所が悪かったのか、耳がキーンとする。
い、痛…
なに、なんで…
殴られた左頬が痛くて、ボロボロと涙が零れた。
そんな時、『コンコン』と、静かな室内に響いたノック音
その音に、心臓が期待に揺れた。
もう一発殴られようが、構わない。
とにかくこいつから離れたい。
そう思いながら、もう一回叫ぼうとしたその時、
「涼?」
聞き慣れた声が、
俺の鼓膜を揺らした。
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bkm