誤算、伝染中 | ナノ
03

よーいドンの合図でみんな一斉にスタートした今回のイベント。体育館の中も騒がしくなってあちこちの出口から人が流れていく

うわあ…地獄の始まりだ
そう思いながら俺も味方に囲まれながら頑張って走った

ちなみにボスだと狙われやすいのでヅラと眼鏡で変装中の俺。眼鏡邪魔すぎ。

そんでもって、俺の前を走る小鳥遊が俺を見て笑った


「似合ってますよ、眼鏡と黒髪」

「適当言ってんじゃねーよ」

「僕も素敵だと思います住吉様!」


升谷まで…!
別にオシャレで変装してるわけじゃないし!気使うのやめろよ!

つかみんな足はえーな!


「とりあえず、北棟の三階までダッシュですよ!本当は5階が一番いいんですけどこの感じだと厳しいんで!」

「俺置いてってもいいよ!」

「馬鹿かボス置いてけるわけねーだろ!あと教室には他にも向かわせてるから!」


溝内に怒られた
俺完全に足手纏いだやばい

きっと今頃他の生徒会の奴らいい場所取ってんだろうなあ!それこそ最上階の端教室!

泣きそう!


「っはぁ、ひっ…!」


ヒィヒィと息を上げながら頑張って階段を上っていく。溝内たちはすでに俺より1階半先に進んでいて、小鳥遊と升谷が俺に合わせてくれてる状態

はやいよー!
つかこの学校の階段段数多いんだよ畜生!エレベーターつけろ金有り余ってんだろ!!


「俺抱っこしましょうか?」


そんな俺の様子を見てか、小鳥遊が俺の腰に触れてきた。全然息があがってない小鳥遊。なんだその爽やかな笑顔、腹たつな


「お前に抱っこされるくらいなら升谷をおんぶする!!」

「えっ、ぼ、僕ですか!?」


無理だけど!
でもこいつにおんぶ抱っこされんのだけは嫌だ。屈辱。


「もー、頑張り屋さんですね。あともう一踏ん張りですよ」


かわりに手を握られた。俺より大きくて、真澄より温かい手。なんだ?俺は子供扱いか?

引っ張られるがまま走らされさっきよりペースが上がる。
やっとの思いで階段を上りきった時、残り1分です!と升谷に言われた

まああと走って教室に入るだけだし!
第3会議室!


「とりあえず第3会議室は抑えた。はやく来い!」

「はぁっ、死ぬっ」


俺らのところに戻ってきた溝内が俺を急かした。ゼエゼエする俺を気遣うようにオロオロしてる升谷。逆に恥ずかしいからやめて升谷!

廊下の段ボールに置いてある俺らチームのカラーボールを持てるだけ持って、第3会議室に入る。

中にはもう20人はざっといて、みんな早いなって驚いた。

そんでもって、ちょうどその頃アナウンスが入った。「今から攻撃可能時間になりました、制限時間は2時間です。皆さん頑張りましょう!」…頑張りましょうって、他人事だな。羨ましい限りだよ体育委員さん。

北棟の西側からだとグラウンドとか全く見えないからどうなってんのかわかんない。けど、どっかからかすごい悲鳴が聞こえるからもう始まった証拠なんだろう。怖すぎ。

そんな中でも呑気な小鳥遊はブニブニしたカラーボールを見ながら首を傾げた。


「俺らのチームのインクが黄色なのは涼さんのイメージカラーだからですか?」

「知らないよ…俺って黄色かな」


喧しいってことか?
でも考えてみればそうなのかもしれない。千歳は赤。真澄は青。紫乃さんは紫。有岡さんはピンク。なるほど、イメージカラーだ。

ひとまず疲れたから座って休憩を取ることにする。

息は大分落ち着いてきたけれど、その代わり汗が大量に出てきてうざい。ハアハア肩を微かに揺らしながら、首筋に垂れる汗を手の甲で拭う。

クソ、ヅラのせいだこのモアモア感。
余計にあついわ。


「…ん?」


ふと視線を感じて見上げたら、升谷と小鳥遊にガン見されていた。升谷にいたってはなんか頬を染めている

なんだよ鬱陶しいな!!
こんな距離で汗だくでだせえってか!!


「なんだよ!」

「いやぁ、涼さん肌白いなあって思いまして。雪みたい」


しょうもな。
どうでも良すぎて小鳥遊を無視する。確かに俺は色白だけどだからどうしたっていうんだ。具合悪そうってか。


「溝内、他の人たちってどこいるの」


小鳥遊はほっといて溝内に話しかけた。
一応グループラインがあって、そこで情報のやり取りをするんだけれど中々の情報の混雑具合でわけわかんない。
すでに何人かぶつけたりぶつけられたりしてる。


「とりあえず、隣の準備室にも15人いて北棟だと4階の第二物理室と1階の多目的室にそれぞれ15人。南棟は3階の1-7、1-6に10人ずつ、2階の2-4には15人。残りは10人グループの6チームで色々回ってるって感じ」

「お、おお…」


溝内すげえ把握してんな。
同時にその情報がノートに追加されてみんなに共有される。…有能かよ。俺よりよっぽど有能だよ。さすが真澄に選ばれただけある。


「やっぱ千歳さんと真澄さんとこは一番いいところいるみたいですよ。北棟5階の西端と南棟5階西端」


だろうな。あいつらだもん。
しかも5階は渡り廊下もねーから侵入もされにくいし。渡り廊下あるのは4階と2階のみ。

北棟5階か…そういや4階にも俺らのチームいんだよな。大丈夫かな。物理室って東端にあるけど…

とか言ってる俺らは千歳チームの二階真下にいるんだけど。怖。あいつの画面にインクぶちまけてやりたい気もするけどたぶん返り討ちにあう。

待ってる間にもラインが更新されて、この場所は誰々チームが占拠とか書かれていった。みんな有能かよ。

なんか…
もはや何もしない俺が申し訳なくなってきたな。


「暇ですね。指相撲でもして遊びます?」


そわそわする俺を気遣ったつもりなのか、小鳥遊がそんなクソみたいなこと言ってきた。ぶっとばすぞ、誰がお前なんかと遊ぶかよ。
ギッと小鳥遊を睨みつけると笑った小鳥遊


「あはは、喋ってないのに何言ってるのか伝わってきますね。なんでそんな俺の事毛嫌いしてるんです」

「侑くんの友達ポジだから」


言わなくてもわかんだろ
それ以外にあるとしたらただキャラがウザい。キラキラしててウザい。金髪だから余計。


「あー、成る程!でも親友だからこそ、涼さんにあげられる情報っていっぱいあると思うんですけど、そこんとこどうですか?」


突然自分を売り出し始めた小鳥遊。
ニコッと爽やかな笑顔を浮かべながら携帯をフリフリしてる

な、
なんだ、




「や、べつに、そんな、お前が持ってる情報とか、たかが知れてんだろ」


動揺ぶりが声として漏れた。言葉が詰まりに詰まってコミュ症みたいになってる

親友だからこその情報とは一体
俺がさっき妄想してた、侑くんの授業風景とかそういうあれか?

え、もし、
写真とかだったら、俺、俺…

ゴクリと、喉が鳴った




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bkm