誤算、伝染中 | ナノ
02


オリエンテーション当日
全員に配布された白いTシャツに短パンを履いて憂鬱な気分に浸っていた

捻挫はもう何ともないんだけどさあ…
この、みんなの熱の籠った雰囲気。たかがランチ無料券で熱くなりすぎだろ…あー、やだやだ


「涼、階段とかで転ばないようにね」


足首をくるくる回して準備運動をしてたら真澄がそう言ってきた。
真澄がそう言うと本当に転んじゃいそうで怖い。俺に心配そうな顔を向ける真澄にため息が漏れる。


「真澄におんぶされて行動してたい」

「無理なこと言わないでよ…」


つか実際移動する際におんぶされていった方が早い気がする。野球部の溝内に頼んでみよっかな。


「真澄んとこは割と勝ち取りいく感じ?」

「んー、まあね。どうせやるなら1位を目指すよ」


おー、かっけえ…。
その挑戦力っつーか、向上心?っていうのはどこから来てるんだろ。俺にも少し分けてくれ。

つーことはあれかな。千歳vs真澄って感じになるのかなあ 千歳んとこは優勝候補だし。なんつっても千歳自体がやばいから。

絶対有岡さんとこ俺のチーム攻めてくんだろ…相手俺だし…紫乃さんはどうだろう、温厚だからなあ


「今回ばかりは俺は側にいてあげられないから、色々気をつけるんだよ」


真澄に両手で顔を挟まれながら俺の身を案じられた。真澄の目がジッと俺を捉える。

気をつけろって、何に。
怪我から?


「心配すんなよ、俺基本拠点から動かねーし」


真澄の顔を挟み返しながら笑う
今の情報言わない方がよかったかな?って思うけどまあいいや。真澄は変なとこで心配性だしこれで安心してくれれば


「絶対1人で行動しないで、わかった?」

「わかったってばー」

「本当かなあ…」


確かに考えてみれば、長時間真澄と離れることってあんまないからなあ。あと誰かしら一緒にいるし。だからここまで心配してるんだろうか。確かに全校生徒で色々やるから混乱しそうだけど

俺は、自分より侑くんの方が心配だ

情報が錯誤する中ドサクサに紛れてあんな事やそんなことをされたらどうしよう!!!!可愛い侑くんのことだめちゃくちゃあり得る

集団で囲まれたら手も足も出ないよ!!!!


「やばい…侑くんにGPSつけとけばよかった…」


後悔が言葉となって漏れた
「またか」と呆れ顔をする真澄。

運動神経抜群な侑くんのことだ前線で戦うに違いない

あ、あばばば…!
こうしちゃいられない!!!


「お、俺侑くんのとこ行ってくる…!」

「はあ?今から?」


今に決まってんでしょーが!

真澄の制止の言葉を無視して自分なりのダッシュで紫乃さんチームが固まってるところに行く
今回は運が良くてすぐに侑くんが見つかった。誰かと談笑をしてる侑くん。

みんな同じTシャツのはずなのに侑くんの立ち姿は輝いて見える。さ、爽やかだぁ〜!


「ゆ、侑くん〜〜〜!!」


堪らなくなって声を上げながら侑くんに近付いてった。ギョッとした顔で俺に視線を向ける侑くん


「おい、あぶねーだろ!」


侑くんの胸の中にジャンプして飛び込んだら怒りながらも受け止めてくれた。う、うへへ〜最高〜


「お前もう足大丈夫なの?」

「えっ、う、うん!元気!」


俺から一歩距離を取りながら足に視線を向けた侑くん。…本当…優しい子だ…お兄ちゃん嬉しい


「ねえ侑くん、今日って割と前線で戦うの?」

「はあ?んなの誰が教えるかっつーの。はやく帰れ」

「だって心配なんだもん!!!」


チームの勝ち負けより俺は純粋に侑くんの心配をしてるのに!!

俺の言葉に、真澄と同じように「またか」という顔をした侑くん
なんか心底鬱陶しそうにしてるのは俺の気のせいかな??


「俺のことより自分の心配をしろよ」


何回言わせんだよ、とキレられた。えっえっ、なんで怒るの!
確かに俺侑くんより運動できないしめっちゃ転ぶけど!
俺はそういうことじゃなくて侑くんの貞操を心配してだね!?お、お、お尻の心配を!

お怒りの侑くんにあわあわする俺。けれどその時ちょうどアナウンスが入った。体育委員のやつがそろそろ始めるから準備しろってやつ

え、えぇえー!おれ侑くんに充分伝えきれてないのに!!


「あっ、涼さん発見!また侑介のところにいたんですかー?」

「うわっ」

「今日は侑介も敵なんですからね。さ、行きますよ涼さん」


後ろから腰を引き寄せられた。ビックリして後ろを見ると小鳥遊がいて、侑くんから剥がされる

て、てめえ邪魔しやがって!


困って侑くんを見上げたが、俺じゃなくて小鳥遊を見ている侑くん。けれど小鳥遊もスルーして、どっか行っちゃった

ああっ行かないで侑くん!


「侑介も大概ですよね」


その様子を見て小鳥遊が笑った。なんだよ大概って。つか侑くんを知ったような口聞くんじゃねえよ。


「行きますよ」

「言われなくても動くっつーの」


もう一度言われ、癪に触りつつ仕方なく自分のチームのとこに移動することにした


くそ…
やっぱGPSを持ってくればよかった!!!





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bkm