誤算、伝染中 | ナノ
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生徒会活動も終わり、やっとご飯を食べれることに。
この時間侑くん何やってるんだろう。普段だったらご飯に行ってる時間だけど、時間変えるからなあ。

食堂に着いて、さっそく侑くんを探す。
あー、侑くん侑くん侑くん!
会いたいよ侑くん!

みんなは冤罪だっていうけど、千歳をシバく準備はできてるから!!


「走らない!」


真澄に怒られた。まじで先生みたい。
一瞬スピードを落とすが、スタスタと急いで歩く



そしてごはんそっちのけで歩くこと数分。



んー、んー、

んー・・・?


見つかんない…。
食堂をウロウロ歩きまわったが、あの可愛い侑くんは見つからなかった。



「ゆーくーん・・・」


携帯を握りしめながら項垂れた。
『一緒にご飯食べよー(ハート)』と送ったラインは既読がつかないまま

この時間に既読がつかないってなんだろう。
部活?
お風呂?
寝てる?

寝るには早すぎるしなあ…。
うーん…。


ハッ、そ、それとも…!



「まさか暴漢に襲われ・・・っ!?」



ビシャーーンと雷に打たれたような感覚が体中を駆け巡った
ブルブルと手が震えだし、脳内でモザイクだらけの映像が流れだす

ゆ、侑く、

侑君が、おそっ、おそっ、おそっ・・・!?



「涼、ご飯食べるよ」



一人でアババババってなっていたら肩を叩かれた
神経過剰になってる今の俺はビクンッと身体を跳ねるハメになる

ま、真澄か!


「真澄ぃ、侑くんがどこにもいないんだよお!!誰かに襲われてたらどうしよぉお!!」


真澄に思い切り抱き付いた
う゛っ!と苦しそうな声が聞こえたけど、すぐに呆れ声に変わる


「なんでそうなるんだよ」


俺をゆっくり剥がしながら眉を寄せる真澄
そんな真澄に「だってだって、」と腕を振る


「既読つかないし、」
「いつも10分くらいつかないでしょ」

「この時間なら大抵食堂いるのに、」
「部活見学とかじゃない」

「心配で堪らないから部屋行こうかなぁ!?」
「別にいいけど、升谷ならそこに居たから確認してみたら」


俺の言葉をすべて拾われた。そしてある集団を指さす真澄

升谷・・・?
あ、侑くんのルームメイトの子か・・・。


真澄の指の先に視線を送ると、升谷くんと目が合った。
うわ…俺のことガン見してたのかよ。

あー…でもそっちの方が手っ取り早いのか…?


「あのさ、升谷くん、」


はっきり言って面倒くさかったけど、侑君の事となれば仕方ない。
彼の元に、軽く手を振りながら向かうと彼の顔が突然真っ赤になった


「ひ、ひぇっ、ぼ、僕ですかっ!ていうかっ、えっ、名前・・・!?」


俺に話しかけられた同様のあまりか、ガチャガチャと彼の食器類がうるさい音を立てる。
・・・こぼれてるし

何故か一緒にいた集団も顔を真っ赤にしてる。
えー、なんなの・・・みんな盲目過ぎない?
俺の肩書きがそうさせてんのかな


「そう。侑くんって部屋に戻ったりしてた?」

「へ、侑、介くん・・・ですか」


内心、やはり侑君を下の名前で馴れ馴れしく呼ぶ輩にイラッとするが仕方ない。
この子は一回話を聞き返さないと次にいけないのか。


「僕が食堂に来る前に、お風呂入ってましたよ…?多分この後こちらに来ると思いますが…。あの、それが、何か」

「お風呂・・・」


お風呂入ってるのか!!
そしてこの後来るのか!!!

それならいいや!うふふ!
この後会えるなら超ハッピー!


「わかった!ありがとう!」


嬉しさのあまり、満面の笑顔でお礼を言った。
すぐに真澄の所に戻って侑くんの安否を報告する


「無事でした!」

「良かったね…それより顔が破裂しそうだよあの人」


あの人というのは升谷くんの事だろう。
えー、どうでもいいじゃないそんなこと。
それより侑くんにこの後会えるぞ!


スキップをしながら、真澄の後についていく。
生徒会役員用の席につくと、会長以外の皆が先に食べていた。
しかもすでにご飯が用意されてる。

麻婆定食!
今日は辛いの食べたいって思ってたんだ!真澄が用意してくれたのか!
そういう気が利くとこ好きだぞ!


「何してたのぉ?ウロウロしてさぁ」

「侑介関係です」

「いっつも弟だねぇ、ほんと」


有岡さんに感心半分呆れ半分の声色でそう言われた。
俺は気にせず目の前の麻婆にありつく。んー、美味しい。

侑くんあと何分で来るかな
5分かな?10分かな?

んー、もうじれったいからGPSもっかい付けちゃおっかな。
今度は、財布にでも・・・。


「涼、・・・零れてる」

「ぅぁ、ほんとだ」


ぼーってしながらご飯食べてたら紫乃さんに口元を拭われた。
綺麗な指に麻婆がベッタリついてしまっている
うわ、申し訳ない!

「すみま、」

「すみません紫乃先輩」


俺の代わりに何故か真澄が謝った。
慌ててティッシュを紫乃さんに渡している

おい、なんでお前が謝るの


「真澄は涼のお母さんか何かぁ?」


俺の気持ちを有岡さんが代弁してくれた。
めっちゃ同意。
てかティッシュハンカチいつも持ち歩くとか女子力たけーな。


「嫌ですよこんな手のかか、・・・」


真澄の言葉が詰まった。


なんだ。


つか、俺もやだよこんな厳しいお母さん!



「とにかく、涼はもっと落ち着きを持って行動して」

「えー、充分落ち着いてるじゃん」

「アハハ、おもしろぉい。どの口が言ってんのそれぇ」

「有岡さんに言われたくはないですね!」


紫乃さんは落ち着きすぎて、逆にもっと急いで!って言いたくなるけど…。
なんで真澄が言葉に詰まったのかよくわかんないけど、気にせずご飯を食べ続ける。
いつでも侑くんを迎え入れられるように早く食べ終わらないとね!


「あ、お疲れぇ会長ぉ」


その言葉に左を向くと、千歳が俺の隣の席に座るところだった。
今戻ってきたのか。
ご苦労なこった。


「お疲れ様です。鍵返却までやらせてしまってすみません」

「ついでだしな」


居残り仕事。
なんか別の仕事の処理もしていたみたい。

それにしても千歳の夜飯うまそうだな。
エビチリに塩ラーメン!
おいしそう!


「いっただきまーす!」


千歳が真澄と話してる間に千歳のエビチリを奪う
真澄から制止の声をかけられたが無視して口の中へ。

ん〜エビ美味しい〜


「毎回俺の所から摘まむのやめろっつーの」

「俺が食べたいもの頼む千歳が悪い〜」


もう一回エビチリを掬おうとしたら手首を掴まれた
これ以上食わせねえよ、と目で訴えられる
ぐぬぅ
まあいいだろう3匹食べたし


「あとピアスの件、俺はまだ信用してないんだからな…」


そう言うと千歳が面倒くさそうにため息をついた


「お前のその狂気じみた弟愛はどうにかなんねえの」


き、狂気じみたってなんだよ!
失礼だな!!!


「あいつももうすぐ16だろ。ほっとけよ」

「それでも俺の弟だから!弟を守るのが俺の使命!」

「身長もガタイもあいつのが良いだろ」


その通りのことを言われた。
確かに、身長もいつの間にか抜かされ、筋肉量も違う。侑君の方が圧倒的に引き締まってる。

だけれども、可愛いもんは可愛いんだからどうしようもないじゃない!


うぐぐ、と唸りながらレンゲを強く握りしめながらどう反論するかを考える
キッ、と千歳を睨みつけると目を逸らされた。

そして、


「正直、面倒くせえ」



ため息交じりのこの一言。
シーーンとなる座席。


同時に、俺の中で戦いのゴングが鳴り響いた



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bkm