元天使、お休みを頂きました。 | ナノ
01

佐沼 羊(さぬま よう)は、朝、決まって同じ時間帯に目を覚ます。

室内はカーテンによって陽が遮られ薄暗いにも関わらず、規則正しい生活を送るのが得意な彼は間違うことなく、そして二度寝することもあまりない。

目覚ましが鳴る前にはベッドから起き上がり、カーテンの外の景色を眺めて今日一日のことをぼんやりと考えるのが彼のルーティンだった。


…今日も、相変わらず賑やかな夢だったなぁ…。


長い睫毛をぱしぱし瞬かせながら、夢の内容を振り返る。
羊は人よりも夢を見ることが多いほうで、かつ鮮明にそれを覚えていた。

時間が経過すると共に、頭が徐々にクリアになった彼は、無意識のうちに自分の背中に手を伸ばしていたことに気付く。何もない空間で、自身の手は何度も空を切っており、完全に寝ぼけていたと笑ってしまう。


一つ大きな伸びをし、完全に目を覚ました彼は、杏眼型の穏やかな目で天候を確認した。
今日は曇っていて、あまり良い天候とは言えなさそう。あとで雨が降るか確認したほうがいいかな?と考える。

ベッドの上の布団を整えた後、クリスチャンである彼は瞳を再度閉じて日課である朝のお祈りをし、自身の主に朝の挨拶をした。


『おはよう御座います、今朝もミカエル様が夢の中で会いに来てくださいました。本日もどうか私達を見守りください』


ミカエル、というのはあの天使の中で最も有名な三大天使のひとりの事。

一般の人から聞いたらギョッとされてしまう内容も含まれていたが、彼は実際、大天使聖ミカエルとよく夢の中で会話をしていた。

それは、彼が敬虔なクリスチャンであるから、というわけではなく、生前の頃の出来事が関係しており彼は大天使と親しかったためである。

佐沼羊として生まれたあと、大天使は頻繁に彼の夢の中に現れ、好き勝手していた。それは今日も同じ。

日課の朝のお祈りが終わったあと、軽やかな足取りで洗面所に向かう彼。
天候は曇りではあるが彼の心は晴れ晴れとしていた。

そして意気揚々と、心の中で元気に今日の抱負を掲げる。


よしよし、今日も人間界・有給ライフを満喫するぞー!


佐沼 羊は人間界に生まれ20年。
=天界を去ってから、20年経過していた。



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bkm