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「・・・え?部活?」
「うん、そう。部活、トマくんはどうするのかなって。」
呆気にとられる入学式が終わって、HRが始まるまで暇になったから部活についてきいてみた。この学校は部活にもがっつり力をいれている。まあ、運動神経抜群な人たちが集まってるんだから強いに決まってるんだけど。
部活、と聞いてあからさまに嫌そうな顔をするトマくん。
な、なんだよ…。
「入らない方がいいよー、あんなの」
胸につけてる新入生の造花バッチを外しながら、トマくんは苦い声をあげる。
「どうして?」
「疲れるだけだし、この学校の先輩うざいし、」
「え?先輩?」
トマくんの発言にキョトンとしてしまった。
まるで、この学校の部活動を知ってるような口振り。
「俺推薦で入ったんだよねえ。だから学校入る前から部活は少し経験済み。今日から部活も本格的にスタート」
やんなっちゃうよね、とトマくんが盛大にため息を吐いた
あの穏やかな顔が一変、不機嫌そうな顔になっている。
す、推薦・・・。
トマくん、まさかの推薦組だったの…。
「すごいね…何の部活?」
「りくじょう」
「おああ…。」
さすが豹属。
運動能力が優れてるからな
部活も予想外だったけど、色々予想外すぎて変な声が出た。
外の部活の割には日焼けしてない気がするけど…。
あと部活に真剣に取り組んでるトマくんも想像できない。まだ会って数時間なのに勝手にそう思っちゃってるのも失礼な話だけど。
「そんなに意外?」
「ご、ごめん。」
「俺も何やってんだろうなぁって思う時あるけどね」
へら、とトマくんは笑ってみせた。
でも、嫌だと言いつつ推薦合格だろ。…才能なんだろうな。
俺にとったら羨ましい話だけど。
「だから、ニコちゃんは部活入らない方がいいって絶対」
「えぇ…?そうかな…。」
「あといろんな意味で危ないと思う〜」
「どういう意味?」
「えー?へへ」
机に頬杖をついて、俺を見るトマくん。
相変わらずヘラヘラ笑ってるけど、なんか、目の色が変わった。
俺の足先を見たかと思ったら、徐々に上に上がっていって俺の目の位置で止まる。
なんか、
嫌な目つきだな。
「この学校、閉鎖空間の上野獣ばっかだからさあ、・・・ねえ?」
そう言って首を傾げたトマくんの髪がサラリと揺れた。
金色の綺麗な目は微かに細まっていて、三日月のよう。
その言い方と目の色からして、淫らな意味が含まれてるのだと気づいて呆れた。
ため息が漏れる。
さっきの下心がどうとかも、結局そういう事ね。
「そういうこと言わないでよ、きもちわるい」
「心配してるんだよ、友達第一号なりに。」
まあ…。雄しかいないし、そういうことがあるってのも知ってるし、俺身体小さいから、そういう危険性、無いわけではないと思うけど…。
でも出会って数時間の友達にいきなり性的な話されるのってキツくない?
「体術くらいは心得てるから、平気」
あと一応、ここは学校だから、人目もあるし。
強いて言うなら危ないのは寮かな…?
つっても俺を襲うなんてどんだけ欲求不満なんだよ、って呆れてしまうけれど。
「そう言われるともっと心配になっちゃうなあ。」
そう言って眉を下げて笑うトマくん
その言葉に、余計なお世話だ、と思った。
いくらこの学校で最弱な猫属とはいえ、
俺だって雄なんだぞ。
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bkm