『〜♪』


朝。

お馴染みのアラーム音で起こされて、意識が浮上した
手探りでなんとか音を止めてゆっくり目を開くとまだ目の前の人物は寝ていて。


……あー……


微かに唇が開いていて、伏せられたまつ毛は長い
寝ていても、こんな色気を出してるんだから起きてるときなんて堪ったもんじゃない


ほんっと……俺ばっかり振り回されてる気がするんだけど。
なんでこんなカッコいいわけ。


「おーい津田。朝だよ」

「………んー…」


起きる気ないだろうな。
ギュッと頬を掴むと微かに眉を寄せた津田。ウケる。


「……いたい」

「おはよう」


微かに目をあけた津田に笑いかけると、津田も小さく笑った
その笑顔に、いつまでたってもほだされる


「……ねむい」


寝惚けながら肩に顎をのせて、そのまま腰に手を回してきた津田
暖かいのは、嫌いじゃないけど…


「…それやめろ」

「なんで」

「それやられると息がじかに首にあたるんだよ」


わざとやってるのか、無意識なのか。

それでもやめようとしないのはわかってるけど、くすぐったい。


「…てかミヤ、いつのまに服着たの」

「津田だっていつも着てるじゃん」

「えー…残念」


…意味わかんない
おっさんみたいな発言に呆れてると、ゴソゴソと服を捲られた

オイオイオイ。


「津田くーん。何してんの」

「俺ミヤの肌触るの好きなんだよね」


知らんがな。
触られる俺の気持ちになってみろって。

俺の肌の感触を確かめるように撫でてくるのは、別に、嫌じゃないけど…


「ミヤさあ」

「…なんだよ」

「恥ずかしいのに我慢してじっとしてるところ、本当可愛いよね」


顔真っ赤だよ、とその言葉によけいカァアと熱があがるのがわかった
こいつはすぐに可愛いって言うのやめないかな!

顔をみなくても、こいつは今絶対楽しい顔をしているのがわかる



「可愛いって、言うな…!」

「えー本当の事じゃん。昨日だって…」

「言わなくていいから!!」


思い出されるのは情事中のこと。
何かあればすぐに可愛い、と囁き俺をドロドロに溶かす

俺はその言葉に本当に弱くなってる


そんな俺の反応を見て、津田は口許を緩めた


「ふは、かーわい」

「っ……も、それ、やめろ………」


口を軽く手で押さえると、チュ、と指先にキスされる
そのままカプリと甘噛みをしてきた津田

っ、こいつ…!


反射で手をはがすと、その手を捕まれて指を絡ませられた
そしてそれと同時に顔が一気に近づいてくる


「キスしてもいい?」

なんとなくこの流れになることは気づいてたけど


「…………聞くなよ」

「そうだね」


おとなしく目を伏せると、チュッと可愛らしいキスをされた
パチリと眼があったら、そのまま深くなる


……朝からこんな……なんか……不埒だなぁ


とか思うけど、津田とのキスは気持ちいい
ちょっと舌を絡ませるだけで頭がぼーとして夢中になってしまう


「……ん…はぁッ…ン」


津田の頭を引き寄せて津田の舌の感触を味わうと、津田が笑った
どうせ、がっついてるなぁ、とか思ってんだろ
だって、俺、津田とのキス好きだし……こんな事、絶対言わないけど。


……つか、


「っ、変なところ、触んな」

「えー?変なところって?」

「し、尻、とか…」


めっちゃ揉まれてんだけど、なんなの、こいつって本当欲望に素直っつーか。こんなイケメンなのに。

反応しちゃったらどう責任とってくれんだよ



「…ムラッとしちゃった時どう処理すればいいかな」

「知らねえよ!つか、もう、時間も………」


あれ?時間………



今、何時だ。




「わああああああっ!!!」

「いたっ!えっ?」

「い、いいいいま、はちっ、八時過ぎてる!」


遅刻じゃん!


慌てて飛び起きたせいで、津田を突き飛ばしてしまった
「下手したら肋おれてるよ」なんて拗ねたこと言ってる津田を無視して服を着替える


俺の制服!
シャツどこだ


「えー…遅刻なら、いっそさぁ…」

「ヤんねえよ、バカ」


近くにあったシャツを被りボタンを閉める
俺の一言に津田は不満足気だ


こいつ、こんなに顔に出すやつだっけ。
いつも飄々と余裕たっぷりだったのに。

最近は、結構顔に出すことが多くなった気がする。
なんか、……嬉し、かったり。



「んじゃ、俺先学校行ってるわ」

「…じゃあまた後で」


最後に腕を引っ張られておでこにキスされた
赤くなる前に、顔を背けて部屋から出ていく


あー、もう、津田
結局俺はお前に振り回されるわけか。




ーーー






「(あれ……。)」


授業中、あることに気づいた

なんか今日やたら津田の匂いするんだけど…


泊まったとはいえ、こんなに残り香が漂うのははじめてで、軽く戸惑う


……な、なんで……


意識すればするほど、匂いを感じてしまって頭がクラクラとする
嫌いじゃないからこそ、この匂いに弱い


手で顔を覆うと、より匂いが強くなった



「・・・?」


そして同時にある予想が生まれた


これ、たぶん、

津田の、シャツだ。



「・・・」




うわーやらかした。だからだよ。
津田のシャツ来て登校とか、めっちゃ恥ずかしい。


津田が着てたシャツ着てるとか気が気じゃない。
匂いが、なんか、本当…


あ、あぁぁ・・・



自然と顔に熱が集まって行くのを感じながら、机に伏せるとガラリと教室のドアがあいた



……津田だ。



みんな一斉に後ろをみたが、津田だとわかり『またかよ』とニヤけてる皆。先生は呆れた顔をしたが授業を続けてる


思わずシャツに視線がいったが、津田の家にシャツの替えがあるだろうしわざわざ俺のシャツをきるわけないよな。


そう思ってるとパチッと眼があった。


イスに座ったところで、なんだか意味深な笑顔を浮かべた津田


「……。」


まさか。


嫌な予感がした俺だったが、まさに予想は的中



少し伸ばした袖を口許に運んでってニッコリ微笑んだ津田をみて、完璧に机に沈んだ



もうこれ以上飼い主を振り回さないで。