俺ってちょっと頭がおかしいのかもしれない。
と、笑うのは少し皮肉めいた声を落とした俺の相棒でルームメイト。
何だよいきなり、そんなの前からなんだから気にするなって。
ふざける俺はそう言ったくせ、探るようにリョウの目を笑いながらじっと見つめた。
読心術なんてものを知らない俺に、言葉の真意を読み取るのなんか不可能に近いだろうっておもう。
だけどこうやってなにか、物思うふんいき、とかゆうようなやつを纏ってそんなことを言われてしまったらどうにも少し、気になってしまうものである。
パーカーの長い袖を引っ張って女の子みたく口元を隠すリョウは怒るでもなく、うん、とかそうゆう類の返事とも言えないような声を漏らしてぼんやり笑った。
しわだらけのシーツの上でだらだら過ごす夜の友、テレビもゲームもウォークマンも携帯もない。
だから俺は読んで字のごとく、いや、友とゆうよかそれ以上に大事なやつになったこいつのこんな顔に目が行って、不安になる。
たぶんこの先、キスして帰国、になるかどうかは分からないけど二人ともいつかは日本に帰る日が来て、
それから俺はきっと、
リョウよか先に日本の土を踏むことになる。
考え方も、生き方も。
住んでるとこも何もかんも違う、でも、憎めない存在になったこいつがもしも何か困ったことになったなんて聞いたりしたら俺はそこまで飛んで行って、
助けたいとおもうしどうにかしたいっておもうだろうって、考えたりする。
男相手にどんだけ必死になってんだよ、だとかそのもしかしたらな事態を想像してる自分がおかしくて少し笑えたけれど、けっこう真面目な気持ちでかんがえる。
俺の中で、リョウは大事なやつだ。
「なぁんかね、俺、カルボナーラが超好きかもしんなくってさ。どうしよっかな、って」
でもリョウは表情を変えないまま俺にゆった。
だから、なんだそんなことかって笑って俺がゆうとリョウは少し苦笑いして、うん、そんなこと、とため息混じりに小さく呟く。
「つーか俺もお前のこと、すげえ好きだぜ?」
「はは、うん、そーですね」
「ってちょっと俺ら男同士で何いってんだか!」
「うんうん、そーですね」
「‥おいこらリョウ、何この軽いいいともノリは」
「えへ、そーですね」
「‥明日は来てくれるかなー?」
「お、いいともー!」
「‥‥アホ」
「やだーカルボナーラひどい!俺泣いちゃうから!」
「勝手に泣いててください」
「うわ、すごい棒読みー」
しかめっ面して、でもすぐ歯を見せてにっかり笑う。
だから、思った。
(神様とか仏様、もしもほんとに居たりするんなら、そんならお願いするからね)
(お願いだから、)
(あともうちょい、俺をしあわせで居させてね)
なぁんて、
神様なんか信じてないくせにさ。
祈り、なんて美しい響きには程遠い。
だけどきっとそれだから、叶わないと理解していながらも、俺は願わずにはいられないんだろうなぁ。
きっと同じ意味ではないけれど、
一緒に帰れは、しないけど。
(おれも、すきだよ)
なあ、だから神様、
もしも本当に居るならさあ、あとほんのちょっとだけ。
(ねぇ、)
俺に、せめてひとにぎりのしあわせをちょうだいよ、
(そしたら、信じてやってもいいぜ)
(なんて、な。)
まあ結局、神様なんか信じちゃいないんだけどさ、
祈り、なんて
美しい響きには
程遠い