「…何、それ」

わななくようにふるえる黒川の唇があんまりにも明るい赤色をしていたことに、おれはその時はじめて気が付いた。
あんまりにも長いことおれは黒川の白くて美しい指先に見とれてしまっていたから、それは仕方がないことであったといえるかもしれない。だけど、こんなに怯えた声を出す彼女をおれは今までに見たことがあっただろうか。真っ青で今にもばったりと倒れてしまいそうな顔におれはちょっぴりだけ胸がいたんで、ちょっぴりだけ、嬉しくもなった。

「なぁ黒川、そんなことよかそろそろ寝たほうがいいと思うけど」
「………」
「徹夜続きなんだろ?すげー顔色わりぃしさ」
「…だから、何なのよ、それ。あんたにとって、そんなこと、なの?」
「うん?」
「っ、どうせ、もう帰って来る気なんかないんでしょ」
「ああ、うん。そーだなあ。コンジョーの別れ、とかってやつ?」
「……大して、意味も分かってないくせに」
「…うん。ごめんな」
「っ、あたしが欲しいのは、」
「……」
「そんな、台詞じゃ、ない」

ふらつく体を支えるように差し出したおれの腕につかまって、黒川は唇をぎゅっとぎゅっと、だけどとても弱々しく噛み締め


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