「あ、」
「なによ」
「すきですー」
「‥はあ?ちょっと、アンタいきなり何なわけ?」
「だから、すきなんですって、」
「いや、それで、だからアンタはあたしに何て言って欲しいわけ?」
「、何って、別に何も」
「てゆうかさぁ、あんたがあたしをすきだなんて、とっくの前から知ってたし」
「ふ、ははは、は、さすがですねぇー自意識過剰ー」
「なによ、過剰も何も事実でしょ?」
「でも、認めるのはなんだかムカつくんですよねぇー」
「はあ?ちょっと、アンタなにそれ。あんたが、あたしに、ムカつくですって?フランのくせに生意気ね」
「いえいえ、性悪女には負けますよー」
「ふうん、あっそう、糞がつくくらいにイラっとしたから死んでくれない?」
「えぇー?そんなのいやですよー」
「っあー‥ホンット鬱陶しい蛙‥‥」
「いやいやぁ、こっちの台詞ですよそんなもんー」
「は、やっぱ死ね、今すぐ死ね」


罵倒。
軽口に、軽口を叩くように、
呟いた一言へ返るのはまるで詰まらない答えばかり。
ちらりと一瞥した瞳は、少しの隙もなく纏わせたマスカラに縁取られていていやに威圧的だ。
だけれど、自分はそんなものに怯むような質ではなかったから、ただのありふれた光景として視覚的処理をして、頭の中で彼女をうそつきだなあと罵りながらゆっくりと目を瞬かせる。

(だって、ねえ?)
(知っている、なんてそんな今にも笑い出しなるようなジョークはちょっとどうにもいただけない)
(あなたはまるで何も分かっちゃいないんです、)

ミーが、あなたをどれだけすきなのか。
その思いが、どんな色で塗り潰されているのか、
そのすべてはどのように構成されていて、どれほどにぎりぎりのバランスでこの感情を取り零さないように必死になっているのか。
慈しんで、愛してみてもあなたに伝わるのはその断片だけでしかなくて、
そしてそれすら目の前で打ち棄てられて砂ぼこりを払うようになんでもないような顔であなたはミーに目もくれることはないのに。
それが一体どれほどにこの弱々しく、体面だけを取り繕って平然とした顔を装ってしまうような見栄の塊でしかない、情けなく強がりな心根につっぷりと深い傷を作り上げているか、それをあなたは「知っている」だなんて、ね、

(そんなふうに、堂々と知ったような顔をしてしまうのは少しばかりひどいんじゃないかなあ、)

だけれど、それがもしも本当であるのならば、あなたはとても残酷で、けれどあなたらしいとも思ってしまう。
都合良く利用されることには慣れてしまったおかげで、この立場を誰かに譲る気なんかさらさらなくて。
そのくせ、時折こんなふうに酷く虚しく、身体の真ん中がきりきりと痛くなってしまうから、つんとした横顔がひどく恨めしく思えてしまう。
すきで、きらいで、はなれがたい。
ただそばにいられるだけでいいなんて、そんな考えに甘んじられるほど馬鹿に躾けられた人間で在れたならば、どれほどに気が楽だっただろう。
涙を零してしまうなんて女々しい真似はしなくとも、剥き出しにした心臓をちらつかせればただただ傷は増えるばかりで、
なのにそれをくりかえすことでしか腹の底に蓄まるものが吐き出せないこの悪循環。
(あ あ、)

「‥‥やっぱり、一回くらいは死んでみようかな」

ぽつり、自嘲気味に呟いた声。
投げ遣りなものを含んだそれを耳ざとく聞き留めたらしい彼女は、可笑しそうに白い喉を鳴らした。

「あら、いいじゃないフラン。あんたが死ぬの、とっても楽しみ」

そう笑って、
ゆるりと猫のように目を細めて。
そうして今までにないくらいに静かな素振りで手を伸ばすと、
彼女はミーの頬を柔らかく撫で上げて、慰めるようにその長い爪をやさしく肌に突き立てた。

















二人ジェンガ





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