こんな毎日くそくらえ。 
同じことの繰り返しにも、彼の当たり前気取りの恭しいお言葉にもあたしは散々に飽きてしまっていたから、ぎりりと奥歯を煩く鳴らす。
じゅうじゅう、腹の底の裏の辺りや真ん中の深い場所が、どうにも何かに焼かれているみたいに熱くなるのが何故かなんて考えるのすら馬鹿らしいのよ。
(だって、その原因なんてたった一つなんだから)

「‥何よ、」

苛立ちを含ませて低く呟くと、それはご機嫌なくらいに不愉快な響きであたしの耳に届いた。
掴まれた手首。
痛くて熱いそれは、気のせいでもなんでもなく、あたしの感覚器官が確かに正しく働いていることを意味している。

「ねえ、どこに行くつもりなの?」

にたり、愉快犯の眼は弧を描く。
張りつく笑みにあたしは答えた。

「あんたの居ないところよ」

それは皮肉でもなんでもなく、至極まじめに心から。
けれど聞いた男は、楽しげに肩を揺らして笑った。
掴まれた手首が離されることはない。
わかっていた。
わかっている。
どうせあたしは今日もまた、昨日と同じ1日を過ごすことになるのだろうということ。
何を成そうとどうあがいても、無駄な抵抗でしかないのだということ。
わかってる。
言われなくても憐れむように微笑まれなくても、そんなこと理解してる、ちゃんとわかってんのよ。
あたしは、あたし、は、

「、死にさらせ」

反響さえ生まれない、閉じ込められた四角い箱。
あたしは目の下に皺を刻みながら、テーブルに並ぶ夕食へ唾を吐く。
男は満足そうに微笑むと、待っていましたとばかりに蛇のような口をぬうらり、開いた。

「さあ、夕食の時間だよM・M」

そうして、あたしは男に着席を促される。
吐き気を伴う二人きりのディナー。
それは、あたしが席に着かなければいつまでも始まることはない。
けれどそれも終わったところで結局はまた繰り返し、続くのだ。
何度となく同じように、急速に冷めてゆく料理をこのテーブルの上に広げて、

「君の好きな味付けだからきっと気に入るよ」

そんな、男の白々しい科白を聞きながら。
密室の歪みへとあたしは今日も音もなく、ゆっくりと、ゆっくりと、腐るこの身を沈ませてゆく。










ああなんて日常





title:深爪




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テーマ「人外ファンタジー」
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