なんれお前なんかが、
と歪められた唇から音が漏れてきて、そこではっと、これは私に向かって放たれた言葉なのだと次の瞬間に理解する。
くしゃくしゃと泣いてしまいそうな顔で私を見つめていた彼は今うつむいていて、その表情は分からない。
生温くて、
もっとそれよりも、熱さを孕んだ風が金の毛色をした彼の髪をさらりさらりと揺らして私はひどく申し訳ないような気分になる。

(なんで私なんかがって、うん、本当に、そうだよね、)
(ごめん)
(ごめんね)
(ごめん、なさい、)

ああ、だけど謝罪を口にしても何一つも変わりやしない。
どうにもならなくて、肺の中の空間が潰れていくみたいな苦しさが伴う。
そうして、きっとそれを分かっているから彼もこんなふうに私から目を逸らすしか出来なくって、私は罪悪感を抱きながら彼のきらきらとうつくしい髪の毛を眺めては口を小さく結ぶしかないのだとおもった。
だから、幾ら役立たず、のろま、おまえなんか要らないと言われても私はきちんと口をつぐみ、頭の中でごめんなさいを繰り返すしかないのだ。
役立たずなのは本当だし、のろまなのも本当だし、私なんか要らない存在だというのだって本当だと私は分かっているから。
ちくんちくんと胸が痛くなってもそんなもの、彼と、もう一人の彼に比べたら大したものではないのだから。
悲しいな、なんて思ってしまうことすら許されない。
そう、おもうのだ。
彼の嫌悪の眼差しや裏切られたような傷ついた表情。
流れ出そうになる熱の波を押さえ込むみたいに唇を噛む彼のすべては、私の鳩尾を鉛のように重くするに易いものだった、




勿論存じております





title:深爪




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