ぴり。悲鳴を上げた冷たい袋の口を高揚した気分で裂き開いて、おれは目的のブツをとりだす。
あらわれた棒つきの真っ青な体を縋るように口のなかに頬張れば、気休めの熱ざましにため息がもれた。
体に悪そうな色、と後ろから聞こえた声に刺はないが、振り向いて確かめたその顔には暑さによってであろう不快感がじっとり滲んでいた。日焼け止めを塗りたくられた肌は夏の盛りだとゆうのにどうにも、季節を感じさせない白さのまま汗を浮かべている。
体に悪そうなもんはだいたい美味いって言うらろ、とおれは適当に返してやけに甘い青色をさくりと歯で折った。

「あついわ」

手の甲で額の汗を拭いながら弱い声が剥き出した肩の片方をあげながら光を弾く。いつもいつも暑くてたまらないと煩いくせに、それなら部屋でクーラーと心中でもしてればよかったんだと思ったが、なんだかもう体がだるくて何か言うのも面倒な気がしたから、おれの返事はアイスをさくさくと言わせる音だけだった。
でかい雲がたてにのびていく。ここじゃ夏になるとこんなふうに空が広くて狭くて胸がざわめく色に変わるのだ。それはどこかアイスと似ているような色とざわめき。
(ああ、舌の裏にひっついてくるアイスを痛く感じないのはそのせいだ)
しゃがみ込んだおれの横に来たM・Mの白っぽいワンピースが生温い風に重たく持ち上げられて、何かの花みたく広がってゆらめいた。なんだかあの空の雲みたいにも見える。
お前は、食わねーの。らしくなく聞いたおれにM・Mは、体に悪そうじゃない、とらしくなく女の子のように笑って言った。
剥き出された肌は白い。染みひとつなく混ざり気のないワンピースよりもどこか作り物のように、ただただ白い。歯をたてればきっと柔らかく突き刺さって、甘い、ああ。
(いけない)
そう思うよりも先に気付いてしまう。

(終わりは、そうか、)
(いつかやってきてしまうんだった)

いとおしい肉厚を思い描きながら木べらを噛んで熱を溶かす。
おれと同じようにM・Mが腰を下ろして、あついわと額に張りついた前髪を指で払った。ワンピースは未だ裾をしつこくふわふわさせて、夏空の真似をしているようだった。
白い肩に目を細めておれは用済みの木べらを道路をはさんだ向こう側の用水路へ投げ飛ばす。アタリ付きじゃあなかったの。呟いたM・Mに、おれはハズレだったと言ってやった。本当は見るのを忘れていたのだけれど、それはもう、手元から遠く離れてしまったから悔しがってもなんにもならない。
遮るものがないから頭のてっぺんがじりじり焼け焦げていく。撒き散らされる陽光に苛立ちが芽生えるのを感じておれは、楽しみにしていたアタリハズレの確認を忘れてしまったように、明確すぎる衝動を忘れてしまおうと目を閉じた。その間際に見たM・Mは笑っていた気がする。やはり、らしくない女の子の笑みだったような。今はその残像のみであるのに、網膜に刻まれた肩が白い皮をおいしそうに見せ付けていたのばかりが思い出されてしまい、ああ、唾を飲み込んで、今のは暑くて喉がかわいたせいなのだとおれは思うことにする。そうして無駄な抵抗だったと目を開ければ、受けとめきれなかった光がこぼれてじいんと奥のあたりが痛くなった。色が定まらない。いくつも変化して塗り変わる。なのに。どうして、それだけははっきりと見えてしまうんだろう。
それはただただ白く、それだけが白くあって、まるで女の子のように、


(あ あ)
(いけない、)

(終わりが、きた!)


知らぬ間にのびていた手は、M・Mの肩をつかんでいた。

「なに、あついわ」

ひたひたと汗に濡れた肌が、おれにうっとりと牙をむく。
瞳だけで言ったM・Mはもう、らしくなくもない、まるで女の子のような微笑みで、喉を鳴らしながらおれのけとを静かに見つめていた。

(ガッデム、)














































プリズムクラッシュ




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テーマ「人外ファンタジー」
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