間違い電話



高校時代に仲の良かった野球部の大体はプロ野球選手になった事が私のちょっとした自慢。それこそ連絡をこまめにとったりはしないが、たまにメールをしたりもする。密かに想いを寄せていた佐藤は、今ではイケメンスポーツ選手特集でしばしばテレビで見る。スポーツ番組のはずなのに、佐藤に向けられる質問はそこらの男性アイドルと代わりはなかった。

しかし、それは一枚向こうの話し。腐るほどいるサラリーマンの1人の私には全く関係のない話なので、疲れた体に従うままに帰宅してすぐベッドに就く事が1日の幸せのオフィスレディだ。

深夜2時。土曜日という事で、出勤を考える事もないのでベッドの中で今日買った本を読んでいると、携帯のバイブレーションが鳴った。慣れない時間帯に鳴るものだから、少し驚きながらディスプレイを確認する。

“佐藤 寿也”

私は急いで電話に出る。

「もっ、もしもし…!」

いつか諦めたはずの恋なのに、こんな事をきっかけでまた思い出してしまう。そして裏がえった私の声、その返事はない。しばらくの静寂が続く。

ザザザッ…

スピーカーから何かが擦れる音が聞こえる。私の頭の中では疑問符が重なっていく。

「佐藤ー…。」

私は発言はそれまでにして、間違い電話かなとかまかけて切る。しばらく謎でいっぱいだったが、次第にウトウトし始めて眠りについた。

朝、目が覚めて 最初に携帯の着信履歴をみて夢じゃなかった事を確認する。それからアドレス帳から同じ佐藤寿也を出して、メールを立ち上げる。

シンプルに昨日の電話について聞く内容にして、送信。

なんだかバイブレーションで気づかないかもしれないと、今までそんな事もなかったのにマナーモードを解除する。つまり返信の準備は万端。

しかし、返信ではなく着信だった。

すっかり不意を付かれて、私はようやく出来た余裕を崩される。慌てながらも、電話に出る。

「も、もしもし!」
「あ、もしもし。佐藤。」
「わかるよ。」
「発信履歴見たら、夜中に電話掛けてたね。ごめん!無意識とはいえ。」
「いやいや、起きてたから。」
「でもよりによって、山田への久しぶりの連絡が…」
「えっ?最後もう一回!」
「山田、明日時間ある?」
「あ、友達と買い物…」
「そっか…。」
「大丈夫、先週も買い物行ったから!佐藤と会いたいし!」

言えた。

「本当?悪いね。じゃあ朝に…」
「朝?」
「いや、昼の方が都合いいか。」
「朝でも休日だし、大丈夫だけど…。」
「昼にしよう。何か山田に会いたくて、食い気味になっちゃった。」
「え…。」

なんだそれ。なんだそれ。私だって高校卒業してから、ずっと佐藤に会いたかった。だけど野球部と仲が良かったとはいえ、佐藤を気軽に2人きりで 増してやスター選手の佐藤だ、誘うなんて難易度はベリーハード一択。電話だってしてみたかったから、その2つを今日 さらっとやって言ってのけてしまう佐藤に私はどきどきしっぱなしだ。今年24歳にもなるのに、年甲斐もなく初恋を爆発させている。

「とりあえず、電話だと伝えにくいからお店とかはメールするよ。」
「うん、うん!」

向こうから電話が終わる。

間違い電話様様だ。








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