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午後9時になった墓地にはツナと目元に涙を溜め震えているランボの二人が手を取り合い、肝試しのコースを急いで終わらそうと歩んでいた。京子とペアになれるかもと心躍らせて此処へと来たのだが、リボーンに告げられてペアとなったのは怖がりのランボ。その時点で気持ちのモチベーションが下がりつつあり、オマケにお化けの類いのものが苦手であるツナは最早、早くゴールすることしか考えていなかった。


「とっとと終われ〜!!」


タタタ…と軽く走りながらツナ達は前へと進んだ。すると目の先にいた人物にツナは「あれは、前のペアだ!」と安心で頬を緩ませた。


「獄寺君!!」
「はい」
「!!」
「なんすか〜〜?」
「でたああああっ!!」


ツナは涙を流しながら腰を抜かして叫んだ。振り返った獄寺の顔がのっぺらぼうで、しかも轆轤首のように首がにゅ〜っと長く伸びたのだ。怖さのあまり、逃げ出すこともできない。もうこの世の終わりに思えたツナであったが、「よっしゃ」と言う明るい声にわけがわからず瞳を丸くして呆然とした。


「やったなイーピン」


現れたのは首が伸びていない本物の獄寺。そして、のっぺらぼうだと思っていた顔がクルリと回転しイーピンの顔もひょっこり現れる。よくよく見ると、獄寺がイーピンを後ろから釣り竿で吊るし上げているだけであった。そのことがわかりツナも拍子抜けしたような表情となるが、反対に獄寺は満足そうにニッコリとした笑顔を向けた。


「この肝試し。10代目を驚かせれば満足です!」
「なっ!?二人とも何しんての〜!!?」
「あれ?リボーンさんに聞きませんでしたか?最初はペア組んで墓地を歩くだけだったんスけど…お化けをやっておどかす側にまわりたいって女共が言い出して、おどかす側と驚かされる側に別れることになったんスよ」


事の経緯を聞いたツナは、「き…聞いてないよ。そんなこと……」と青ざめながら声を震わせた。そんな彼に獄寺は悠々とした態度でサラッとツナの血の気が引くような言葉を発した。


「きっと言いにくかったんスよ。皆、おどかす側をやりたがって驚かされるのが10代目達しかいないなんて」
「なんじゃそりゃーー!」


ツナは白目をむいてまた叫び声を上げた。つまり、ツナとランボ以外の皆はおどかす為に待ち伏せをしているということだ。考えただけで足がガクガクとしてしまう。しかし獄寺はそんなツナの気持ちなど知らず「じゃあ失礼します!」とイーピンと共に颯爽と去って行った。


「そんな!ちょっと待ってー!!」


手を伸ばして静止をかけるが、既に獄寺とイーピンの背中は小さくなっている。そこでツナは「あ、」とランボがいたことを思い出した。ランボ!と彼の名前を呼ぶが応答は無い。顔を覗くけばランボは白目をむいたまま気を失っていた。それに対してツナは益々絶望感を抱く。すると、背後からカラン、コロン…と何やら不穏な音が鳴り響きツナは恐怖で肩をビクッと震わせた。


「(お、落ち着け…知り合いの誰かなんだ…)」


自分に落ち着けと言い聞かせ、ドクドクと大きく脈打つ心臓の音に気付かないフリをする。ツナは顔を強張らせながら、そーっと後ろを振り返った。


「べー」
「むしろ可愛いー!」


獄寺のように恐ろしいお化けを想像していたツナであったがこれは予想外。振り返れば、怖いどころかむしろ可愛い唐傘お化けの格好をした京子が「べー」と舌を出していたのだ。その可愛さに先程まで怖がっていたツナの表情は緩んだ。


「京子ちゃんってば一生懸命なのがまた可愛い……」
「ぎゃおおお!」
「!?」


新たに聞こえた声にまた振り返れば、「泣く子はいねがー!」と叫ぶナマハゲの姿。顔は見えないがこのナマハゲの正体は確実にハルだ。ツナは内心戸惑った。京子もハルも必死にツナを驚かせようと頑張っているのだが全然怖いと感じられないのだ。でも折角自分の為にやってくれてるのだから…とツナは「でたー!」と態とらしい声を発した。すると、トントンと肩を誰かに触られ、反射的にそちらへ向く。


「どろん」
「あたし……綺麗……?」
「ほぎゃーーー!」


ツナは悲鳴を上げた。目の前には顔がゾンビ化しているビアンキと口が大きく裂けて不自然に微笑む舞の二人がいたのだ。これはもう恐怖以外のなにものでもない。


「ほんと出たー!うぎゃーっっ」


ツナはパニックに落ち入り号泣しながら一目散に墓地の奥へと走ってしまった。ツナが居なくなるとお化け役である女性陣はツナの気も知らず、大成功とばかり皆で笑い合った。


「やりましたね!大成功です!」
「ツナ君すっごい怖がってた!」
「言ったでしょ。大事なのはチームワークよ」
「はい!」



▽ ▲ ▽



「え、ツナ君が来なかった!?」


舞は思わず声を上げた。舞達がおどかし後は山本と了平がおどかす算段であったのだが、おどかす側がどんなに待ってもツナは姿を現さなかったらしい。衣装を脱いで待っていた舞達は山本達の言葉に驚いた。でも確かにツナは走って行ったのだから、もしかしたらコースから外れてしまったのかもしれない。


「取り敢えず10代目を探すぞ」


獄寺の言葉に皆が頷き合い、全員で手分けしてツナを探すこととなった。



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