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肝試し


外はまだまだ暑く、蝉が鳴り響く今日。舞はクーラーの効いた涼しい部屋で、唸り声をあげていた。シャーペンを持つ手に力を込めながら凄い形相で問題集を見つめる。そして、集中が切れたように深い溜息を吐いた。


「はー。もう無理…」


コロンとシャーペンを転がし、机に顎を置いて項垂れた。舞は夏休みの宿題をしている最中だ。しかし、勉強が苦手の舞にとって数学という強敵は手強く、教科書を読んでもよくわからなくて結局、挫折をしてしまった。


「数学なんて将来使わないじゃん」


段々わからないことが腹ただしくなり、舞はジト目で問題集を睨んだ。頭が重く、やる気もどんどんと低下していく。舞は目を閉じて、もう一度深い溜息を吐いた。


「お疲れだな。舞」
「……ん?」
「俺が息抜きさせてやるぞ」


舞一人しかいない筈の家に何故か聞こえた自分以外の声。舞は瞳をゆっくりと開き、目の前の人物を確認した。


「あ。リボーン」
「ちゃおっす」
「珍しいね。いつもは電話なのに」
「偶にはお前の家にも来てやろうと思ってな」


鍵を開けていないのに何故リボーンが此処にいるのかは追求はしない。神出鬼没に現れる。それが最強のヒットマンであるリボーンなのだ。舞は未だ、机と顎を合わせたままで彼に話し掛けた。


「で、今日は何するの?」
「今日は墓地で肝試しをやるぞ」
「肝試し…!」


リボーンの言葉を聞いて舞はバッと顔を上げた。その表情は先程とは見違えるような輝きぶりだ。そう。舞は前から肝試しをやってみたかったのだ。


「ペアはくじで決めるぞ。この中から一本、好きなのを引いてくれ」
「へー。本格的だね〜」


リボーンが何本かの割り箸を出したので、舞はワクワクと胸を弾ませながら一本を選び取った。そこには“B組"と書かれてあり、ペアは墓地で発表されるらしい。


「じゃあ、並盛墓地に9時に集合だからな」



▽ ▲ ▽



昼間の騒がしい蝉の音も聞こえず、夏の匂いが鼻腔を擽る。人々を照らすのは月明かりのみ。そんな闇夜の中、ツナを除く舞達は集合時間の少し前に既に墓地に集まっていた。


「なんか夜に集まんのってドキドキするよな」
「それわかる!」
「ケ。餓鬼かテメェ等は」
「獄寺にはわかんないよ。日本の風情なんて」
「オメェだってイタリア育ちだろ!」


何よ。やんのか。二人は対峙するようにして睨み合いを始めた。今回はストッパー役であるツナがいないため、言い合いが長引くと思われたが、ハルの一声により舞の意識が獄寺から削がれた。


「そういえば…お化け役っていないんですか?」


リボーンが説明してきた肝試しは単に墓地を歩いて回るだけというもの。でもそれでは少し物足りない。舞はハルの言葉に賛同するように声を上げた。


「そうだよね…!やっぱ肝試しはお化け役がいなくっちゃ」
「うん。その方が面白いかも!」
「極限にその通りだ!」
「俺もお化け役は居た方が良いと思うぜ。な、獄寺?」
「まーな。肝試しには鉄則だろ」


どうやらお化け役に対して異論を唱える者はいないらしい。そうと決まれば、問題はお化け役をやる人物だ。


「誰かお化け役やりたい人いる?」


舞の声が音も無い静かな墓地ではっきりと聞こえた。



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