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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



それからツナ達は順調にチョコバナナを売っていった。と、いうより必死に頑張って売った。雲雀の後直ぐにやって来た京子とハルと花火を一緒に見るためにだ。イーピンの協力もあり、着々とチョコバナナは売れて行き、あと一箱を売れば完売だ。これなら花火に間に合うかもしれない。京子と花火が見たいという思いが強いツナは俄然、やる気に満ち溢れる。そんなツナに横から山本が声を掛けた。


「わりーんだけどさあ、5分程はずしていいか?毎年屋台のボールの的当てしてんだけど、それやんねーと祭り来たって感じがしなくてさ」


この人きっと屋台泣かせだー!と、心の中で思った。ツナはこっそり的当ての店主に同情し、山本にいいよと言うと山本は景品をいっぱい取ってくるからと言ってボールの的当ての屋台に向かって行った。


「10代目すんません!自分もトイレ行ってきます!」
「ごめん。あたしも飲み物買ってくるね」
「うん!大丈夫大丈夫。まかしといて」


山本に引き続き、獄寺も舞も更にはリボーンも一時的に屋台を後にした。一人になったツナは椅子に腰掛けながら頬を緩ませて、「ん〜」と両腕を伸ばした。皆と一緒とはいえ京子と花火が見れることに今から心がウキウキしているのだ。しかし突如、売り上げの入った金庫を見知らぬ人が奪い去って行った。


「う…売り上げが!本当にひったくり犯が出たー!」


ツナは頭を抱えてひったくり犯が出たことに驚愕した。そして急いで立ち上がり、ひったくり犯の後を追いかけた。



▽ ▲ ▽



「あれ?ツナ君…?」


一番早くに戻って来た舞は首を傾げた。屋台で店番をしている筈のツナが居なかったからだ。ツナ君もトイレかな…?と思ったが、だとしたら誰かが帰って来てから交代で行くだろうから、店に誰一人居ないのは変である。そして、舞はあることに気づき「あっ」と小さく叫んだ。


「ただいま戻りました。……って10代目?」
「ツナー。景品取ってきたぜ」


舞が困惑していると同時に獄寺と山本が帰って来て、二人共ツナが居ないことに気づき舞同様、首を傾げた。そして神妙な表情を浮かべている舞に対しても疑問を抱き、何があったか…?と問うた。


「金庫がなくなってるの」


きっとツナ君は犯人を追いかけてるんだと思う。それを聞くと獄寺も山本を表情を険しいものに変えた。


「取り敢えず、ツナ君を探そう」
「「おお」」


三人はツナの捜索を開始した。金を奪うのも許せないが、ツナを傷つけていたらただではおかないと舞は息巻きながら辺りを見渡す。今になって動き辛い浴衣で来たことを悔いた。



▽ ▲ ▽



「復活(リ・ボーン)!!死ぬ気でケンカー!オラァ!来やがれ!」
「余計だな」


ひったくり犯を追いかけていたツナ。只今、雲雀と共に武器を手に持つ男達と戦闘を始める所である。周りに群がり、ツナ達に痛い目を合わせようとしているのは以前に海で出会ったライフセーバーの先輩達。なんでも海での仕返しがしたかったらしく、ツナを此処まで態と呼び寄せたのだ。その後に雲雀も登場し、死ぬ気弾をリボーンに撃たれたツナは多勢相手に喧嘩をすることになった。


「たかが中坊二人だ!一気に仕掛けろ!」


主犯の男が周りにいる男達に指示を出す。すると、ドカンと爆発が起こり何人かの男が吹き飛ばされた。土煙が上がり、目に映るのは三人の影。


「10代目!!」
「助っ人とーじょー」
「ツナ君大丈夫?」


現れたのはツナのファミリーである舞達。あの後、探しまくりやっとツナの居場所を発見したのだ。男は、気に食わねーガキどもがゾロゾロと…と眉間の皺を濃くした。


「雲雀と初の共同戦線だな」
「状態じゃない。ひったくった金は僕がもらう」
「ええ!先輩それは…」
「なぁ?」
「やらん!」
「当然っス」


ツナ達の会話に痺れを切らした男達は総がかりでツナ達に襲いかかって来た。それに皆は応戦し、逆に男達をボコボコにするのであった。


ーー…30分後。


ツナ達は快勝し、神社の前の芝生に四人で腰を下ろした。体中がボロボロであるが金はなんとか奪い返すことができたので一同は一安心。舞も下駄を脱ぎ足を楽にした。


「はーあ。やっぱり浴衣は駄目だね〜。戦闘には向かないや」


砂で汚れちゃった…と裾をパンパン払う舞に獄寺は深い溜息を吐いた。


「…ったく、だから見とけっつったのに」
「ツナ君のピンチにのんびりとしてられません」


彼女は結構、強情っぱりだ。一度決めたら絶対に曲げないし、ツナの事に関するともっとだ。それがわかってる故、獄寺は「…そうかよ」と言ってそれ以上何も言わなかった。その後、京子とハルも合流し皆で花火が上がるのを待った。揃って全員が空を見上げていると舞は目線はそのままで、少しだけ悲しげに瞳を揺らした。


「……夏が少しずつ、終わっていくんだね」


季節が徐々に移り行くのに彼女は寂しさを感じずにはいられない。この楽しい時間までも終わってしまうような気がするからだ。なんだか寂しいね…。そう呟く舞に獄寺が眉を顰めた。


「馬鹿かテメェは」
「え…」
「何、全部が終わったみてーに言ってんだよ。夏が終わったってな、これから楽しいこととか色んなことがあんだよ。今が最高って思わねーで、もっと貪欲に生きろ」


舞は目をパチクリさせた。獄寺の言動には驚かされてばかりだ。彼は自分一人じゃ絶対に考えられないような考え方を与えてくれる。それはいつも新鮮で心が温かくなるような言葉ばかりだ。


「それとよ…」
「ん?」


獄寺は少し頬に赤みをさしながら、後頭部をガシガシと掻いた。そんな獄寺に舞は、何…?と首を傾げる。そして彼は言いづらそうだが、緩慢に口を開いた。


「Sembro buono con uno yukata molto」
(…すっげぇ、浴衣似合ってる)


刹那、暗闇の空に大きな花が咲き乱れた。皆が花火に釘付けになっている中、舞だけ獄寺を見つめた。顔を真っ赤に染めて。心臓の跳ね上がる音と花火が宙で轟く音がシンクロしているように思えた。


「……」
「……」


二人の沈黙が続き舞は恥ずかしさを紛らわすように空を見上げ、そして瞳を輝かせた。色とりどりに舞い散る花火は今まで見てきたどの花火よりも綺麗で、とても美しかった。そして美しい夜空の下に集う舞の大切な人達。舞は頬を緩めてふんわりと微笑んだ。


「(…獄寺。やっぱり、私は貪欲に生きられないや。だって………今が一番と思えるくらいに幸せだから。大切な人達とこんな素敵な時を一緒に過ごせて)」


幸せすぎてなんだか怖いくらいだ。後に何か良からぬことが起きるのではないかと思うくらいに。いや、今はそんなことを考えるのはやめよう。今はただ、この幸せに浸っていたい。空に打ち上げられる大輪の花は、誰もが目を奪われるほど綺麗でそれと同時にとても儚かった。



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