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海水浴


何処までも続く青い海と真っ白な雲のコントラストが地平線で混じり合う。此処は海水浴場。ツナ達お馴染みのメンバーは皆で遊びに来ていた。


「やっぱ夏はいいよなー」
「じじいかテメェは」
「(なんか感動だなー。友達と海に来る日がくるなんて…!)」


海に来てツナはテンションが上がっていた。この間、特訓を重ねてできるようになったクロールで海を泳げるからだ。すると、周りの男達がザワザワと騒いでいることにツナは気付いた。どうやら雑誌モデルのような可愛い子がいるらしい。ツナはその男達の視線の先を見ると、目を見開いた。


「お待たせー」
「着替えてきましたー」
「ちょっと時間かかっちゃった」


男達の注目の的であったのは京子にハル、そして舞の三人だったのである。ツナは心の中で、超可愛い!と叫んだ。特にツナの大好きな京子は余計に可愛く見え、この子と一緒に遊べる自分が何故か誇らしく感じた。


「お、舞の髪型が違ぇ!水着もよく似合ってるのな」
「…!」
「(山本ってサラっとすごい事言うよな〜)」
「(山本君って舞ちゃんのこと好きなのかなぁ)」
「(はひ!山本さんからラブラブ光線が見えます)」
「(ケ。…赤くなってんじゃねーよ。チビ)」


皆の胸の内など知らない山本は太陽が似合うような笑顔を舞に振り撒いた。舞は褒められて恥ずかしかったのか顔を赤らめながら、お礼を言うが、それを見た獄寺は気に食わなかった。自分も可愛いとは思う。でも山本のように口に出すのはどうしてもできないのだ。


「そーいえば、舞ちゃんの水着はスカートなんだね!」
「う、うん。パレオのにしたんだ」


なんだかくすぐったいような甘い雰囲気になったのでツナは慌てて空気を変えるべく舞に話しかけた。彼女の水着は水色ベースのクラーデーションが掛かっているパレオのものであった。京子とハルはビキニなのだが、この水着は舞にとって意味があった。


「だって足隠さないと、拳銃見えちゃうしね〜。ホラ」
「えええ〜!!か、隠して!見せないでいいからっ!」


いつ何処でツナを狙う刺客が現れるのかはわからない。如何なる状況でも対処できるように武器は常に持って置かなければ駄目だ。右太腿のホルスターを隠すためのパレオで、舞がチラリとめくってみせるツナは顔面蒼白になりながら慌てて舞を止めさせた。

と、まあ初っ端から色々あったがツナ達は先ずはある人物の元へ行った。彼等を海に誘ってくれたのもその人物で今は泊まり込みでライフセイバーの手伝いをやっているらしい。


「よく来たなお前達!ライオンパンチニストで並盛のランブルフィッシュは夏の一時をライフセイバー見習いとして過ごすのだ!」


よくわからない暑すぎる挨拶を交わすのは我等の並盛中、ボクシング部の主将である笹川了平だ。以前の市民プールで妙な動きで泳いでいた了平が人命救助できるかどうかは些か疑問ではあるが、本人がやる気で満ち溢れているからきっと良いのであろう。


「さっそく俺の仲間を紹介しよう。と、その前に夏バテ気味のパオパオ老師だ」


パオパオ老師ことリボーンはぐてーっと項垂れ、夏の酷い暑さにやられているようだった。何でいるんだよ、とツナは怒鳴るが小さな赤ん坊はそれに答えようとはしない。そして、了平は仲間を探すために周りをキョロキョロと見渡していると、背後から気になる声が聞こえた。


「困るんだよね。ゴミ捨てられっと」
「俺等の仕事増えるっつーの?」
「ご…ごめんなさい」
「わかりゃいいのよ」
「じゃあここら一帯掃除しといてくれよ」


それは大の男が数人で小さな男の子を囲み理不尽な物言いをしている、なんとも気に触る光景であった。それを見て獄寺、山本、舞は眉をグっと顰めた。ああいう態度だけデカイ男達の存在は気に喰わない。そして気分を害した三人は更に顔を険しくさせた。了平のライフセイバーの先輩が先程の男達だったのだ。


「先輩達は元並中ボクシング部だ」
「お、もしかして了平の妹ってコレ?へーなかなか俺好みかもしんない」
「こ…こんにちは」


あまりの男の馴れ馴れしさに話し掛けられた京子はいつもはしないような怪訝そうな表情で返事を返した。そして、その男は京子の隣にいる舞に視線を移した。


「…って、君もめっちゃ可愛いじゃん。俺等と遊ぼうぜ」
「お断りします。貴方と遊ぶ暇ないんで」


取り繕う暇させ与えない舞の冷たい言葉が男に浴びせられた。だが男は「へー」と愉快そうに口元をクッと上げた。


「俺、気の強い女タイプ。ほら強がんないで俺等と行くべ。そこの男なんかより満足させてやるよ。男等は海の平和でも守ってればいいんだからよ」
「だから嫌って言ってるでしょ!…って、触らないで」


男は舞の肩に腕を回して自分の体へと引き寄せた。彼女は汚い手で触れられたことに嫌悪感を抱き、声を荒げた。


「だから触ん」

「「舞に触んじゃねえ」」
「…!」


彼女の言葉を遮ったのは山本と獄寺の二人である。獄寺が男の手を払い、舞を庇うように二人は前に立った。その二人の真剣で怒気が混じったような表情に舞の胸はドキンと高鳴る。



「てめーらの仕事するスジはねぇぞ」
「その通りだセンパイ!こいつらを呼んだのは遊ばせるためでライフセイバーを手伝わせるためではない!」


了平が獄寺の言う通りだ、と言い返すと男達はニヤニヤとした顔でつまらないことを言ってのけた。ライフセイバーの素晴らしさを後輩に知ってもらいたいんだ、と。そんな都合の良い言葉に誰が乗るだろうか。しかし熱血男である了平は単純明解なのだ。


「なるほど」


上手いこと男の口車に乗せられた了平はポンと手を打った。


「ポンじゃねーだろ!」
「(お兄さん。先輩達に利用されてるー!)」


了平に最早ツナ達は呆れしか感じない。ここまでアッサリと騙される人物も珍しいだろう。そして今度は京子とハルが男達に恐れずに自分の意思を伝える。


「だったら兄を手伝います」
「そーです!ハルはツナさん達と泳ぎに来たんですから!」
「ああ?」


ハルの言葉を聞いて男は目をキラリと光らせた。


「へーー。どいつがツナさんだ?」
「え!(ハルの馬鹿。俺の名前出すなよ!)」
「ツナってマグロのことだろ?」
「そーとー泳げるんだろーなぁ」
「それウケるー!」


ツナを嘲笑うかの如く、男達は声を上げて笑う。それに直ぐに反応したのが二人いた。


「てめーらバラすぞコラ!」
「それ以上言ったら海に沈める」
「獄寺君と舞ちゃん!」


ボスであるツナを馬鹿にされて素直に黙っていられるわけがない。男達は睨み殺す勢いのオーラを二人は放っていた。


「ほーうやるか?だが喧嘩はパスだぜ。俺達はライフセイバーだかんな」


先程、仕事放棄をしようとしていた癖に何が自分達はライフセイバーだ。そして、こういういい加減な奴らは悪知恵が良く働く。男はある提案をツナ達に告げた。


「やるならフェアにスポーツで勝負してやる。3対3のスイム勝負!敗者は勝者の下僕となるんだ」



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