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ツナは先ずプールサイドで、獄寺に自分は病気ではないことを告げた。そうすれば獄寺は安心したように「良かった」と笑みを零し、何処からかホワイトボードを設置し何かを書き始めた。


「いいですか10代目。このように上手く泳ぐには重力と浮力の重心が重要になります」
「(理論指導だーー!!)」


頭の良い獄寺はツナに勉強を教える時もこの理論指導を使うのだ。確かに理にかなっているちゃんとした教え方なのだが説明が難しすぎるためツナには理解ができない。よって今回の泳ぎ方の説明も全くと言っていいほどわからなかった。


「獄寺の説明難しくてわかんない」
「ああ"?それはテメェが馬鹿だからだ!チビ女!」
「(いや、俺も全くわかんないんですけどー!?)」


プールサイドに元から座っている舞は聞こえきた獄寺の説明を口を尖らせながら非難をした。すると反射的に獄寺は眉を顰め、ツナは心の中で舞に同意するのであった。二人の言い合いは数分続き、獄寺はふと気になったことを口にした。


「つか、テメェは何で泳がねーんだよ」
「えっ!」


獄寺がそう言えば、舞は異常に驚き、冷や汗をかきながら瞳を泳がせた。確かに舞は水着は着ているのに何故か上にはTシャツを着ており泳ぐ気配が全く見えないのだ。


「い、いいでしょ。今は泳ぐ気にならないのっ!」
「10代目が頑張ってらっしゃるんだからテメェも協力しやがれ」
「だ、だから今日のあたしはマネージャーポジションなのっ!それとも…あたしの水着姿、そんなに見たい?」
「はっ!?」


舞は態と瞳を潤ませ恥らないながら着ていたTシャツをお腹が見えるように捲った。すると獄寺は茹でダコのように顔を真っ赤に染め上げ、ドキっと胸を高鳴らせた。好きな子にこのような行動を取られてしまえば嫌でも、胸が弾んでしまうだろう。獄寺は照れを隠すように舞の頭に手刀を入れた。


「痛っ!」
「テメェがふざけるからだろ!」
「殴んなくてもいいじゃん!」
「うっせぇ!(人の気も知らねーで)」
「まーまー獄寺君」
「チ。…わかりました」


獄寺の方からしてみれば舞の小悪魔ぶりが悪いのだが、主君のツナに言われてしまえば従うしか他ない。獄寺は舞に対する悪態をなんとか呑み込んだ。それにしても…と獄寺は舞をチラリと見る。こんなに泳ぐことを拒否する理由は一体何なのであろうか。


「舞も泳げねーのか?」
「ッ!た、武君」
「はひ!舞ちゃんもそうだったんですか?」
「えっ!そーだったの?」


プールから上がってきた武の一言により、舞が獄寺に必死に隠したことが崩れるようにあっさりとバレた。そう。舞は泳げなかったのだ。それがわかると獄寺はニヤりと口角を上げた。


「テメェ泳げなかったのか」
「う、うるさい。人類は水から進化して来たんだから態々、退化しなくてもいーの」
「負け犬の遠吠えにしか聞こえねー。ふーん。チビ女が泳げなかったとはなぁ」
「つ、ツナ君!獄寺が苛めるッ!」


なんだが分が悪いと感じると舞は同じ泳げない同士のツナに泣きついた。ツナは優しく励ましてくれたが獄寺は見逃してくれず、舞を嘲笑い続けた。こうして舞も泳げないことが判明されたが、泳ぎの特訓をすることを彼女が極端に渋ったため今回、彼女はマネージャーポジションとなることが正式に認められた。



▽ ▲ ▽



「ダ…ダメだぁ…全然上達しない!15mなんて夢のまた夢だよ〜〜っ!」


ツナはプールサイドに手を掛けながら、ゼーゼーと息を乱していた。あれからハルと山本と獄寺の三人が講師となり30分毎にそれぞれが一人ずつ教え、誰が一番ツナを泳げるようにさせるのかを競ったのだが、1時間半経っても5mより長く泳がせた者は誰もいなかったのだ。


「そ…そんなことないっスよ!かなりフォームは良くなったっス!」
「俺も良い線いってると思うけど」
「あたしよりもツナ君は泳ぐの上手だよ!」
「何がいけないんですかねぇ?」


ツナは皆が自分を励ましてくれてることを充分に感じていた。自分なりにも今までよりは努力したつもりだ。それでも泳げないというのならしょうがないのかもしれない。ツナは眉を下げながら、覇気ない言葉を紡いだ。


「…皆。ありがと…でももういいよ。そんな簡単にダメツナから変わんないよ…これが俺の実力だよ。急に泳げるようになるわけないって」

「10代目…」
「ツナ君」
「ツナ」
「ツナさん…」


切なげに話すツナに舞達はどう声をかけたらいいかわからず、ただ彼の名前を呼ぶことしかできなかった。


「ヘコたれるんじゃねえぞ。お前に足りないものを教えてやるぞ」


現れたのはナマズのコスプレをしながらプールに浮かんでいるリボーンであった。


「じしんだ」
「ひぎゃあああ!!」


リボーンが“じしん”と言えば大量の電流がツナの体へと流れた。どうやら地震と自信をかけたそうだ。ナマズなのは地震を予知する魚であるから。そう嬉々として話せば「うるさいよ!」とツナが怒鳴り声を上げた。


「でもリボーンちゃんの言ってること正しいかもですよ」
「ああ。自信って大事だぜ」
「え…」


ハルと山本はリボーンの言葉に賛同するように頷いた。でも自信はどうつけたらよいのだろうか。ツナは首を傾げると「俺の出番のようだな」、と聞き覚えのある勇ましい声が耳を通り抜けた。



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