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「#幼馴染」のBL小説を読む
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会場の明かりが全て消され、灯し火をあげるのはビアンキが持っているキャンドルだけとなった。次に行われるのはキャンドルサービス。ビアンキとリボーンがそれぞれのテーブルにあるキャンドルに火を灯すのだ。キャンドルの優しい灯りに、見ている皆の心まで温かくなっていく。が、ツナはそんな気分にはならなかった。


「ランボさんもっと運転したいなー」
「駄目だよ!お前のせいで大変だったんだぞ!」
「違うよ。ランボじゃなくてあのメガネが下手くそなんだよ。秘密だけどあいつ馬鹿なんだよ」


秘密と言いながら全然秘密ではない。ランボの悪口はしっかりと本人の耳に届き、獄寺の眉間に青筋がたった。


「このアホ牛が!てめーぶっ殺すぞ!」


獄寺は椅子から勢いよく立ち上がり、ランボに向かって罵声を浴びせた。というより、本人はそのつもりであった。実際はというと…


「ご…獄寺君。話す相手が」
「?」
「隼人。よく来てくれたわね」


ツナの言葉を不思議に思い、獄寺は掛けていたサングラスをを外した。そして目の前の人物を見ると見る見る内に顔を青ざめさせ、「ほぎゃー!」とテーブルをひっくり返す勢いでガターンと倒れ込んだ。その拍子でリモコンは宙に飛んで行く。「いかん」とディーノはソレを追おうとするが、自分の足を踏んでしまい大転倒。そのままリモコンを頭突きで破壊してしまった。


「あっ。部下の人達いないんだった!」
「リモコンがーー!」


リモコンが壊れてしまえばロボットの動きを制御できない。リボーン型ロボットは狂ったように不可解な動きを始め、ビアンキはその行動に「どうしたのリボーン?」と首を傾げた。そして「オイルビュー!!」とロボットはビアンキに向かって火を吹いた。


「ああ!」


これはもう誤魔化しようが無い。ディーノが「話し合おう」と必死に宥めようとするが、今のビアンキには何を言っても無駄だ。怒りで髪が浮かび上がり、彼女の接している部分が次々とポイズンクッキングになっていく。一体何が起きているのだろうか。


「ど、どうしよツナ君。このままじゃ、」
「式場が全部ポイズンクッキングに!」


もう万事休すか。舞とツナが命の危機を感じた時に、救世主がやって来た。それはビアンキが愛して止まない本物のリボーンだ。


「よく上達したなビアンキ」


上達したな、というのは今ビアンキがやってのけた触れた部分をポイズンクッキングにする大技のこと。ポイズンクッキングの究極料理“千紫毒万紅”だ。波乱万丈な結婚式であったが、リボーンがビアンキにピアノ線が飛び出す武器の指輪を贈ったことで命の危機は去った。結局、ビアンキの攻撃力が格段に上がった1日となった。



▽ ▲ ▽



結婚式も終わり、それぞれが自分の家の岐路を辿っている最中。舞はドクンドクンと胸を弾ませていた。額には薄っすらと冷や汗をかいて。沈黙のこの重い空気に耐えきれないのだ。チラリと横で歩いている彼を見る。何故、家が彼と近いのだろうか。 タバコを咥えながら普通に歩く彼は何を考えているのかわからない。


「(さっき喋れたのは勢いだし、面と向かうと何て話したらいいかわかんないよ…)」


愛される良い子を演じていたのは彼は知っている。バレている人に偽った姿を突き通す者などいないだろう。けど、わからないのだ。幼い頃から偽ってきたから本当の自分が。どう接したら良いか。


「気持ちをぶつけるのは、それだけ相手に心を許してるのと同じことだもの。それは相手にとっても嬉しいことよ」


ふと頭の中でビアンキの言葉が浮かんだ。どう接したら良いかわからないならその気持ちをそのまま、ただ真っ直ぐに伝えればいい。そう言われた気がした。

舞はスカートの裾をギュッと掴み、その場に立ち止まった。今まで、相手のことばっか考えて素直な気持ちをぶつけたことなんて無い。本当は怖くて堪らない。でも……


「獄寺!」


舞が呼びかけると数メートル先にいる獄寺は振り返って止まった。射抜かれるような眼差しは、ジリジリとまだ固まりきっていない決意を鈍らせるように感じた。でもこのままではいけないとわかっているから。言うんだ。自分の気持ちを。


「あのッ。…あたし、獄寺に自分の話しをしたことに後悔なんてない。けど、」
「………」
「ッ獄寺にどう接したら良いかわかんないの」


はぁはぁ。舞は荒い息を上げながら、獄寺を見詰めた。自分でも一体何がしたいんだかわからなくなってきた。でも相手の瞳から獄寺から目を背けてはいけないと思った。これは自分が変われるチャンスだと頭が感じた。


「テメェは、」


今まで言葉を発しなかった獄寺が緩慢に口を開いた。


「俺の前だけは何も考えんな」
「…!」
「迷惑とか我儘とか、んなもんは俺に考える必要はねぇ。おめぇは誰かに甘えろ。おめぇが甘えたってな…そんくらいで俺は離れていかねーんだよ!」
「ーーッ」


“自分の素直な真っ直ぐな気持ちを相手にぶつければその分、相手からも素直な気持ちが返ってくる”そんなこと知らなかった。それはとても単純でとても大切なこと。胸の中に光が灯るような、そんな優しさを貴方はくれた。溢れ落ちる涙は彼を滲んで見えなくする。


「獄寺ぁ。………私を、ギュッとして」
「なっ!」


その言葉を100%信用できるわけじゃない。だって、いつまで言葉通りにしてくれるかの確証なんてない。ただ、今は嬉しかったから。その喜びを噛み締めて覚えて置きたいから…今は、強く強く抱きしめて欲しいの。獄寺は舞に近づき、言葉通りに彼女の背中にぎこちない腕を回した。ふわっ…と伝わって来た温かさは決して偽物なんかではない。鼻腔を擽るタバコの香りも全部全部。


「これからは一人で泣くな。胸だったら、いつでも貸してやる」
「ッ、うん」


雲一つ無い空には満天の星空が浮かんでいて道端で抱き合う男女を照らした。眩い煌めきを放つ星は美しく、人々の心の奥まで照らしているようだった。



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