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- ナノ -



「もー駄目かと思いましたよ」
「まさか強引に飲ませるとはな。これならすぐ直せる」


ツナは、ふぅ…と安堵の息を吐いた。今日は自分の家庭教師であるリボーンとビアンキの結婚式。今、ツナとディーノが居る新郎控え室にはリボーンがいるのが当然なのだが、目の前にいるのはリボーン本人ではなく精妙に作られたリボーンのロボットであった。なんでもリボーンはビアンキとの結婚を承諾したつもりは無いらしく、このロボットを身代わりに置いて逃げたのだ。だが事実を知ればビアンキの怒りは計り知れない。その為、ツナとディーノは彼女にバレないように、ハラハラと己の寿命を削りながら行動をしていた。先程はビアンキがリボーンに飲み物を飲ませてショートしかけたがなんとか誤魔化すことができた。この調子であれば上手く行くかもしれない。と、ツナが思った矢先。


「やっぱり偽物だったんスね」


ギクッ。ツナとディーノは新たな声と隠していた事実がいきなり判明されたことに体を硬直させた。恐る恐る振り返ると扉の前には新婦の弟である獄寺隼人が腕を組みながら佇んでいた。


「姉キは騙せても俺は無理っスよ。俺、聴覚は良いんです。モーター音がするので怪しいと思いまして!」
「いや…あの獄寺君!!」


獄寺は険しい表情を浮かべており、ツナは引き攣った笑みを零した。姉の結婚式がロボットだったら誰でも怒るよな〜。ツナは心の中でそう呟くが、予想とは反対に獄寺はニカっと歯を見せて笑った。


「俺にも協力させて下さい!10代目」
「え"っ!?」
「どーせ姉キが勝手に式開いてリボーンさんが身代わり置いて逃げたってとこじゃないスか?」
「(100点!!さすが弟!!)」


寸分の狂い無い獄寺の仮説にツナは驚愕の表情が隠しきれない。獄寺は「これは10代目の右腕である俺の仕事だ」とディーノの手から無理やりリボーンロボットのリモコンを奪い取った。


「獄寺君あの見えないサングラスつけてて大丈夫なの!?」
「大丈夫っスよ!時々はずして薄目て見ますから!!」


ツナが心配するのも無理はない。獄寺はビアンキを見ると腹痛で倒れてしまう異常体質の所為で今日の結婚式の間はサングラスを掛けていたのだ。しかも全く周りが見えないサングラスで。本人は大丈夫と豪語するが一体大丈夫なのであろうか。すると、この部屋の扉が重々しくギィと動いた。「誰だ!!?」と獄寺の怒声にも似た声が轟く。


「それ、おもちゃかなー?おもちゃだなー」
「もう〜。ランボ君が開けるからバレちゃったじゃん」
「ランボに舞ちゃん!!」


やはりツナとディーノの様子がおかしいことが気になった舞は会場を抜け出して、この部屋に来ていた。ランボは近くに居て、「一緒に行く」ときかないので連れて来たが、ランボの所為でバレてしまったので連れて来たのは良くなかったのかもしれない。しかし話は全て聞くことが出来たので、内容はバッチリだ。


「あたしも力になるね!」
「ランボさんもスイッチをポチっと押して見ようかな…ちょっとでいいんだけどな〜〜」
「駄目だアホ牛!これには高度な技術が必要なんだ!」


獄寺に続いてランボや舞までにも知られてしまいツナは内心、大丈夫かな〜と心配の気持ちの方が大きかった。何事も起きずに終わることを願うばかりだ。



▽ ▲ ▽



お色直しも終わり新郎新婦が戻って来たところで次は披露宴の見所でもあるケーキ入刀だ。三段にもなっている豪華なケーキはビアンキ自らが作ったものでポイズンクッキングになっている所為か、悍ましい紫色の煙が漂っている。ケーキの二段目には新郎新婦が象られているが突如、リボーンがケーキにダイブしたのだ。


「んなーーっ!」
「ち、ちょっと獄寺ッ!ちゃんとやってよ!」


リモコンの操作をしているのは獄寺の筈だ。早く何とかしてよ、と舞は獄寺を叱咤するが彼の手にはリモコンが無く、周りが見えないサングラスの所為で有らぬ方向に手を伸ばし「リモコン、リモコン」と探していた。ちなみに今、リモコンを持っているのはトラブルメーカーのランボだ。


「もう!リモコンはあっち!!」
「どこだ!」
「ええ!きゃあッ」


舞も焦っていたのだろう。何も見えない獄寺に「あっち」と指差してもわかる筈が無いのに、そう声を上げてしまった。すると獄寺が急に立ち上がり、リモコンがある方向とは真反対の舞が立っている方へと歩き出した。当然、前が見えないのだから遠慮無しに突撃をしてくる。舞は獄寺に体当たりされ、後ろに倒れてしまった。


「痛たた、」
「チっ。いってーな。何しやがんだ」
「こっちの台詞なんだ……けど」


上半身を起こして獄寺に文句でも言おうと思ったのだが、舞の言葉は途切れ途切れになってしまった。舞の瞳いっぱいに獄寺の顔が映ったからだ。これは俗に言う、舞が獄寺に押し倒されていると言う奴。舞はこの状況がわかると、プシューっと頬を赤らめた。


「ご、獄寺ッ。早く退いて!!」
「わーったから、耳元で叫ぶなッ」


獄寺は訳が分からず取り敢えず体を起こそうとするとその時、掛けていたサングラスが僅かばかりズレ、彼の翡翠色の瞳が露わになった。バッチリと混じり合う2人の翡翠色。獄寺はやっと状況が飲み込めた。そして舞と同じように白い肌に朱色を刺した。


「なっーー」
「わかったら、早く退いてってば!」
「お、おう」


舞と獄寺が甘いハプニングを起こしていた間、ランボからディーノがリモコンを奪い返しなんとか上手く誤魔化すことに成功をしていた。ツナもディーノも精神的疲労度がマックスで、この結婚式が無事に早く終わることをただただ強く願った。



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