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「次俺な」
「山本!!」
「……!」


選手交代。獄寺を庇うようにしてトンファーを受け止めたのは山本。手には山本のバットが握られおり、それで雲雀の攻撃を防いだのだ。そのことで雲雀は不機嫌そうにムッと眉を吊り上げた。


「これならやりあえそーだな」


雲雀に以前倒されたという借りがある山本は、今日なら倒せる…!と口角を上げて全ての攻撃を防いだ。しかし雲雀は少したりとも焦る素振りは見せず、「ふうん」と目を細めた。


「どーかな?僕の武器にはまだ秘密があってね」
「?秘密……!?」


秘密…?と山本が首を傾げるとガキッと今までとは違う金属音が轟く。それは雲雀のトンファーに組み込まれていた仕込み鉤による音であった。それにより山本までも地面に膝をつかされてしまい、これで後に残るのはツナただ1人だ。


「次はツナだぞ」
「ええー!?俺は無理だよ。何にも強くなってねーし!」


獄寺君と山本が敵わなかった相手に俺が勝てるわけない…!無理だよ、とリボーンに必死に嘆きで訴える。だがリボーンにはそれは通じなく向けてくるのはいつもの銃口。ああ、もうダメだ。そう思いツナは双眸を閉じる。その時…春風が吹き荒れ、桜の花びらが華麗に舞い散る。それと同時に小さな声が耳に通り抜けた。「ん、?」と緩慢に目を開き、微かに聞こえた声の方向へ顔を向ける。そして視界に飛び込んできたものに思わず硬くなっていた表情を緩めた。


「ツナ君!只今参上致しました…!」


ニコっと笑いながら敬礼をするという茶目っ気たっぷりの舞の登場。まだこの場所に来るのは先のことだと思っていたツナ達は彼女が現れたことに少々驚き、口々に声を発した。


「舞ちゃん!!」
「舞!来たのな!」
「ケッ、」
「リボーンに呼び出しくらちゃって…抜けて来たんだ!」


先に来ちゃって京子ちゃん達には悪いけど…桜綺麗だねー、と舞は桜並木を見渡すようにその場でグルリと回転をする。そこで彼女の双眸に映り込んだピンクの桜によく映えた黒。その人物の姿に「ん!?」と目を丸くさせた。何故雲雀先輩が此処に…?ツナも先程思ったことを舞も思い、隣にいるツナに今の状況を尋ねた。


「ツナ君。先輩も一緒にお花見するの…?」
「いやぁ、そーじゃないんだけど…」
「あの群れるのが嫌いな雲雀が俺等と花見なんざするわけねェだろ」
「俺等、雲雀と花見場所賭けて勝負してんのな」


山本が雲雀と勝負をしてると言えば舞は目をパチクリさせた。そして「ええっ、」と驚きの声を洩らした。勝負…?雲雀先輩と…!?花見をする筈が勝負をすることになっているなんて。ツナ君も大変だな、と首謀者である赤ん坊をチラリと見ればニヒルな表情を浮かべていて尚のことツナへの同情心が芽生えた。


「ねぇ。小休憩はもういいかい?早く沢田綱吉を咬み殺したいんだけど」
「ああ。待たせて悪かったな。ツナ、とっとと雲雀を倒してこい」
「ええっ!だから無理だって…!俺があの雲雀さんに勝てるわけないだろ!」


戦う前に猶予が与えられたところで戦うことに気持ちを傾ける筈が無い。「俺は戦わないからな、」とリボーンに豪語する。そのやり取りは舞が来る前にも行われたもので、ずっと佇んで待っている雲雀はイラつきを募らせていた。


「戦う気が無いんだったらこの場所は僕の物だよ。………それとも、」


それとも君が相手をするかい?そう告げた雲雀の視線は紛れもなく真っ直ぐに舞のことを射抜いていて、「え、あたし…!?」といきなり指名された彼女は肩をビクっと跳ねさせた。舞は、うーん…と頭を悩ませる。別にあたしがやってもいいんだけど、きっとこれもツナ君を10代目にするための訓練じゃないのかな…?リボーンがそれで納得する……


「ボスはテメェだろ。自分でやりやがれ」


…わけながった。やっぱりそうだよね、と舞は眉を下げながらクスリと笑う。ズガン、という音と共に放たれる死ぬ気弾。ツナの意志とは関係無く身に纏う衣服が切り裂かれた。


「復活(リ・ボーン)!!死ぬ気で雲雀を倒す!」


そう叫ぶと、ツナは次に「レオン!」とリボーンのペットを呼び付ける。形状的記憶カメレオンのレオンはツナの指示により形を“はたき”へと変化させた。どうやらこれがツナの武器のようだ。はたきでトンファーに立ち向かう姿はなんともシュールな光景だ。それでもツナは「うおお!」と腹の底から声を出し一歩も退かずに果敢に攻める。


「君は変わってるね。強かったり弱かったり、よくわからないから…」


殺してしまおう。無慈悲な冷え切った声を雲雀が溢すと益々戦いは激しさを増す。今のところ勝負は互角といったとこで、目の前で繰り広げられる戦いを見ている舞達は瞬きもせずに観入ってしまっていた。しかし互角で保たれていた平行線は直ぐに崩れてしまう。シュウウウ、と情けなくツナの額に灯った死ぬ気の炎が消えてしまったのだ。ツナは正気にもどり今の置かれている状況に目を見開き「い"!?」と声を洩らした。今直ぐにでもやられてしまいそうなこの状況。「わっ、ちょっ、待って!」、止めてと叫ぶのも虚しく目の前のトンファーは自分にどんどんと近づき、キラリと妖しい光を放っている。


「(や、やられる!!もう駄目だ!)」


腕で頭を抱えギュッと衝撃に備えて目を瞑った。ああ、咬み殺される!直ぐにやってくるであろう未来にツナはブルリと体を震わせた。しかし待てども攻撃は一向に自分に当たらない。どうしたのか…と、そーっと目を開いていく。そして視界に入った光景にツナは驚愕した。負かされていたのは確実にツナの方であったのに目の前の雲雀は何故か膝を着いていたのだ。当の雲雀本人も状況が呑み込めていないのか瞳を丸くさせて驚きを露わにしている。


「えー!?嘘っ!?俺がやったの〜!?」
「違うぞ。奴の仕業だぞ」


ツナが慌てふためいているとリボーンは「違うぞ」と声をかけある方向へと指を差した。その指の先に全員が視線を向け、またも吃驚する。それは先程の雲雀に呆気なくやられた人物で、


「おー痛。ハンサムフェイスに傷がついたらどーしてくれんだい」
「Dr.シャマル!」


雲雀が膝を着いた原因はシャマルの所為で、彼は雲雀に殴られた瞬間にトライデント・モスキートを発動していたのだ。かけた病名は「桜クラ病」。この病気は桜に囲まれると立っていられなくなるという不思議なものだ。あの酔っ払っていたシャマルがそんな器用なことができるなんて。やはり彼も人から恐れられる殺し屋の1人なのだ。


「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ」


そう淡々と告げる雲雀だが“桜クラ病”にかかった所為で体はフラフラと揺れている。体調が悪いのは明らかだ。そんな状態にもかかわらず足を動かしてこの場所から立ち去ろうとする雲雀に心配の眼差しを向ける少女が1人。その少女は隣にいるツナに視線は向けないまま話しかけた。


「あの、ツナ君」
「ん?」
「…悪いんだけど、あたし心配だから行くね」


え、舞ちゃん!?ツナが声を上げるが舞は既に走り去った後で、彼女は真っ直ぐに雲雀の所へと向かって行った。小さくなった舞の後ろ姿を残されたツナ達は眺めていたた。そして少し眉を顰めた者達がいたことは誰も気づきはしなかった。


「(舞って雲雀のこと…)」
「(もしかして舞ちゃん雲雀さんのことが好き、なのかな?)」
「(あのチビ女、雲雀のことが好きなのか?……って俺には関係ねェっつの)」


男子の心、少女は知らず。



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