雪合戦
汚れを知らない純粋な白。いつもの見慣れた校庭も一面の銀世界。はあ…と吐く息までも白く見える。雪が積もり、澄んだ青い空が広がる下で舞達は佇みある人物を待っていた。
「うわぁ。結構積もったね〜」
「すげぇよな。こんなに積もるなんて」
「極限に一面雪だ!」
「お子様か、テメェ等は。雪降ったくらいではしゃぎやがって」
「まあまあ、落ち着けって。そろそろ来るんじゃないか?」
舞達は久しぶりに積もった雪にテンションを上げていた。空気は凍えるように冷たいが、そこまでは気にならない。雪が積もると外へ出かけるたくなる好奇心の方が寒さより勝るのだ。少しの間、皆で談笑をしていると自称"右腕"が「10代目!」と校庭の端まで聞こえるような大声で叫んだ。それに吊られるように「こっちだよ〜!」と舞も声を上げツナやランボ達を手招きした。
「あれー!?皆何やってんのー!?」
まさか此処へいると思わなかったのかツナは舞達の姿を見て目を丸くした。だが此処へツナ達を呼んだのは、舞達であった。
「俺達もたまにはチビ達と遊んでやろーと思ってな」
「えーーー!!」
今日1日自分だけで子供達の面倒を見るのかと気分が沈んでいたツナにとってディーノの言葉は嬉しい誤算である。ディーノに続くように獄寺達も手伝うと口を揃え、ツナは皆の優しさに思わず感極まった。
「(そこまで俺の事考えくれたなんて…やっぱり大人だよなーー)」
と思って瞳が潤んだのも束の間。
「やるなら俄然、雪合戦スよね!」
「お!燃えそーだなそれ!」
「やるからには負けないよっ!」
「かってー雪玉作っか」
「合戦!!なんといういい響き!」
「(いや!この人達子供だー!!)」
大人だと思ったが、やはり言っていることは幼いランボ達とはあまり変わらずツナはガーンとショックを受けた。既に此処にいる全員が雪合戦へのやる気に満ち溢れ、チーム分けはどうしようかという話し合いとなった。
「俺が決めてきてやったぞ」
そう言ったリボーンは何故か武士の鎧と兜を身に纏っており戦国時代を匂わせる格好だ。リボーンはチームのバランスを考えるために夜なべしたらしく目元にできたクマをツナへ見せ、情を訴えていた。ツナはリボーンがチームを分けるのが不服であったがツナ以外はリボーンに甘かったため、結局は彼の言う通りになった。
東軍はーーツナ、山本、舞、イーピン、フゥ太による白マフラー隊。
西軍はーーディーノ、獄寺、了平、ランボによる赤マフラー隊である。
このチーム編成に逸早く異論を唱えたのがやはり10代目の忠犬である獄寺であった。
「待って下さいリボーンさん!!なんで俺が10代目と違うチームなんですか!!?」
「謎だ」
「迷宮入スか〜〜!!?」
碌な返答が貰えず、獄寺は間髪入れずに言い返す。夜なべして作った割には結構アバウトな考えのチーム編成に舞は思わず苦笑いを浮かべた。
雪合戦のルールはこの日のための特別なもの。リボーンの相棒であるレオンを奪い合う"レオン争奪戦"。両チームは30分間この光るレオンボールを奪い合い、そして30分後にレオンを持っているチームが勝ちというルールだ。
「雪玉にはいくらあたってもいいが、気絶したらリタイアだからな。んじゃ、雪玉と塹壕作って30分後に開始だぞ」
ーー…30分後。
んじゃ始めっぞ。リボーンの開始の掛け声とホラ貝の音により戦いが始まる。だが先ずは両チーム様子見といったところなのか動こうとはせず、両者の間でビュウウウと風が吹き荒れる。
「今、出てったら集中放火だからな」
「そうだね〜」
「下手に近付けないね」
「こわ」
今、動きを見せれば相手にとって絶好の狙い目となる。だからどちらが先に行動に出るかと相手の様子を伺うのだ。早くも膠着状態で暫くはこの状態が続くと思われたが、一番に行動に出た者がいた。
「極限まで攻めずして勝利は掴めん!」
闘牛のようなスピードで飛び込んで来たのは常時死ぬ気男の笹川了平である。雪合戦であるにもかかわらず彼は雪玉も持たずにただただ勢いだけで突っ込んで来た。流石、了平さんだ。舞は敵ながらも彼の男らしさに感動で胸を打たれが、今回は自分は敵だと己に言い聞かせ、この絶好のチャンスに白マフラー隊は了平に狙いを定めた。
「んじゃ、こっちは定石通りに」
「山本」
「行くぜ」
雪玉をガシリと掴む山本の目付きはいつもの温和のものではなく獲物を捕らえるもの。そら!と腕を思い切り振り下ろした雪玉は物凄いスピードと勢いで了平へと真っ直ぐに飛んで行った。
「わあ!すごい!」
「出た!山本の野球フォーム!!」
「武君すごっ!」
しかし山本の投げた雪玉はバゴッと了平の拳により砕かれた。両チームに驚きが走り、各々が声を漏らす。
「そんな鈍玉。この"極限ストレート"の前ではマシュマロ同然!!」
一切隠れもせずに佇むその姿は潔くかつ男らしい。了平に止められた山本は悔しそうに口元を歪め、今度は連続で雪玉を投げ放つ。対する了平はそれを全て見極め"極限連射"と叫びながら雪玉を砕き己が当たることはなかった。だがここで諦める訳にはいかない。白マフラー隊にいる舞は山本に加勢するようにツナ達を鼓舞した。
「あたし達も頑張ろ!」
「そーだね舞姉!!」
「それ!」
山本の雪玉に追加で舞達も投げ、攻めに転ずるが今の了平にはそれでも効かなかった。浮世離れした熱気と根性と極限による力。それはツナ達が畏怖の念に打たれる程であった。
「了平さんやっぱり手強いっ」
「ツナ兄押されてるよ!」
「も〜〜精一杯だよ!」
今、明らかに劣勢なのは白マフラー隊である。投げても投げても砕かれる雪玉は幾ら合っても足りない。弱音を吐き出し、士気は下がっていくばかり。しかしツナ達の勝利に貢献するために塹壕から飛び出す小さな女の子がいた。
「イーピン!!」
いきなり飛び出した彼女の名前をツナは驚きで叫ぶ。イーピンは、タタタ…と走り向かうは真ん中で光を放つレオンボール。不意打ちとは上手いっ!舞は心の中で感嘆の声を漏らした。そして、イーピンの姿を見て相手チームのディーノが動きを見せた。
「わりーがレオンは……やらないぜ!!」
「ん?」
「どこ投げてんだおめーは!」
獄寺の怒声が響き渡る。ディーノの投げた雪玉は、物凄い勢いで有らぬ方角へと飛んで行った。忘れていたが、ディーノは部下がいないと運動音痴になる体質であった。ランボは既に眠りについているし、ディーノは使えない。それでは自分がやるしかないと今度は獄寺がイーピンへ向かって雪玉を放った。
「ったく、しょーがねーなー。どいつもこいつも!」
だが投げられた雪玉はイーピンに当たることなく、地面に叩きつけられた。全て彼女の得意技である餃子拳で防いだのだ。華麗なチビだぜ…と賞賛するディーノだが相変わらず投げる雪玉は全て意味の無い場所に。獄寺もツッコミを入れる他無い。
「やっぱりすごいやイーピン!!」
「イーピンちゃんやるぅ!」
「これで互角だよ!」
イーピンの活躍により勝負は互角。ツナ達は歓声を上げるが突如、鼻が曲がるような異臭を鼻腔がくすぐった。あまりの臭いにツナ達は顔を歪める。舞は慌てて、鼻を手で覆った。
「ちがうよツナ兄〜〜!」
「うがっ!」
「なんだ…この…空気は…」
「うっ…たぶん、餃子拳の…せい」
舞の言う通り、これはイーピンが放った餃子拳の所為であった。餃子拳の餃子エキスが風下であるツナ達側に流れてきているのだ。ツナ達は異臭に苦しみ攻撃をする手を止めざる終えない。互角を保っていた均衡が崩れ、了平が先にレオンボールへと足を運んだ。
「弾幕が薄いわ!!光る玉はもらったぞ!!」
「あ!このままじゃっ」
「ピンチだよ。ツナ兄!」
「わかってるけど」
「ヤベー!」
このままでは白マフラー隊が負けてしまう。ツナ達も攻撃をせねばと理解はしているが体が自由に動かない。ツナ達を囲むように充満している異臭は中々、過ぎ去ってはくれなかった。
ーー…ドガァン
うおっ。無念!大きな音と共に了平はそう叫びながら吹き飛ばされた。突如、校庭で爆発が生じたのである。爆風により、皆の髪が靡く。その予告の無い爆発に両チームとも唖然として、口をポカーンと開いた。
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汚れを知らない純粋な白。いつもの見慣れた校庭も一面の銀世界。はあ…と吐く息までも白く見える。雪が積もり、澄んだ青い空が広がる下で舞達は佇みある人物を待っていた。
「うわぁ。結構積もったね〜」
「すげぇよな。こんなに積もるなんて」
「極限に一面雪だ!」
「お子様か、テメェ等は。雪降ったくらいではしゃぎやがって」
「まあまあ、落ち着けって。そろそろ来るんじゃないか?」
舞達は久しぶりに積もった雪にテンションを上げていた。空気は凍えるように冷たいが、そこまでは気にならない。雪が積もると外へ出かけるたくなる好奇心の方が寒さより勝るのだ。少しの間、皆で談笑をしていると自称"右腕"が「10代目!」と校庭の端まで聞こえるような大声で叫んだ。それに吊られるように「こっちだよ〜!」と舞も声を上げツナやランボ達を手招きした。
「あれー!?皆何やってんのー!?」
まさか此処へいると思わなかったのかツナは舞達の姿を見て目を丸くした。だが此処へツナ達を呼んだのは、舞達であった。
「俺達もたまにはチビ達と遊んでやろーと思ってな」
「えーーー!!」
今日1日自分だけで子供達の面倒を見るのかと気分が沈んでいたツナにとってディーノの言葉は嬉しい誤算である。ディーノに続くように獄寺達も手伝うと口を揃え、ツナは皆の優しさに思わず感極まった。
「(そこまで俺の事考えくれたなんて…やっぱり大人だよなーー)」
と思って瞳が潤んだのも束の間。
「やるなら俄然、雪合戦スよね!」
「お!燃えそーだなそれ!」
「やるからには負けないよっ!」
「かってー雪玉作っか」
「合戦!!なんといういい響き!」
「(いや!この人達子供だー!!)」
大人だと思ったが、やはり言っていることは幼いランボ達とはあまり変わらずツナはガーンとショックを受けた。既に此処にいる全員が雪合戦へのやる気に満ち溢れ、チーム分けはどうしようかという話し合いとなった。
「俺が決めてきてやったぞ」
そう言ったリボーンは何故か武士の鎧と兜を身に纏っており戦国時代を匂わせる格好だ。リボーンはチームのバランスを考えるために夜なべしたらしく目元にできたクマをツナへ見せ、情を訴えていた。ツナはリボーンがチームを分けるのが不服であったがツナ以外はリボーンに甘かったため、結局は彼の言う通りになった。
東軍はーーツナ、山本、舞、イーピン、フゥ太による白マフラー隊。
西軍はーーディーノ、獄寺、了平、ランボによる赤マフラー隊である。
このチーム編成に逸早く異論を唱えたのがやはり10代目の忠犬である獄寺であった。
「待って下さいリボーンさん!!なんで俺が10代目と違うチームなんですか!!?」
「謎だ」
「迷宮入スか〜〜!!?」
碌な返答が貰えず、獄寺は間髪入れずに言い返す。夜なべして作った割には結構アバウトな考えのチーム編成に舞は思わず苦笑いを浮かべた。
雪合戦のルールはこの日のための特別なもの。リボーンの相棒であるレオンを奪い合う"レオン争奪戦"。両チームは30分間この光るレオンボールを奪い合い、そして30分後にレオンを持っているチームが勝ちというルールだ。
「雪玉にはいくらあたってもいいが、気絶したらリタイアだからな。んじゃ、雪玉と塹壕作って30分後に開始だぞ」
ーー…30分後。
んじゃ始めっぞ。リボーンの開始の掛け声とホラ貝の音により戦いが始まる。だが先ずは両チーム様子見といったところなのか動こうとはせず、両者の間でビュウウウと風が吹き荒れる。
「今、出てったら集中放火だからな」
「そうだね〜」
「下手に近付けないね」
「こわ」
今、動きを見せれば相手にとって絶好の狙い目となる。だからどちらが先に行動に出るかと相手の様子を伺うのだ。早くも膠着状態で暫くはこの状態が続くと思われたが、一番に行動に出た者がいた。
「極限まで攻めずして勝利は掴めん!」
闘牛のようなスピードで飛び込んで来たのは常時死ぬ気男の笹川了平である。雪合戦であるにもかかわらず彼は雪玉も持たずにただただ勢いだけで突っ込んで来た。流石、了平さんだ。舞は敵ながらも彼の男らしさに感動で胸を打たれが、今回は自分は敵だと己に言い聞かせ、この絶好のチャンスに白マフラー隊は了平に狙いを定めた。
「んじゃ、こっちは定石通りに」
「山本」
「行くぜ」
雪玉をガシリと掴む山本の目付きはいつもの温和のものではなく獲物を捕らえるもの。そら!と腕を思い切り振り下ろした雪玉は物凄いスピードと勢いで了平へと真っ直ぐに飛んで行った。
「わあ!すごい!」
「出た!山本の野球フォーム!!」
「武君すごっ!」
しかし山本の投げた雪玉はバゴッと了平の拳により砕かれた。両チームに驚きが走り、各々が声を漏らす。
「そんな鈍玉。この"極限ストレート"の前ではマシュマロ同然!!」
一切隠れもせずに佇むその姿は潔くかつ男らしい。了平に止められた山本は悔しそうに口元を歪め、今度は連続で雪玉を投げ放つ。対する了平はそれを全て見極め"極限連射"と叫びながら雪玉を砕き己が当たることはなかった。だがここで諦める訳にはいかない。白マフラー隊にいる舞は山本に加勢するようにツナ達を鼓舞した。
「あたし達も頑張ろ!」
「そーだね舞姉!!」
「それ!」
山本の雪玉に追加で舞達も投げ、攻めに転ずるが今の了平にはそれでも効かなかった。浮世離れした熱気と根性と極限による力。それはツナ達が畏怖の念に打たれる程であった。
「了平さんやっぱり手強いっ」
「ツナ兄押されてるよ!」
「も〜〜精一杯だよ!」
今、明らかに劣勢なのは白マフラー隊である。投げても投げても砕かれる雪玉は幾ら合っても足りない。弱音を吐き出し、士気は下がっていくばかり。しかしツナ達の勝利に貢献するために塹壕から飛び出す小さな女の子がいた。
「イーピン!!」
いきなり飛び出した彼女の名前をツナは驚きで叫ぶ。イーピンは、タタタ…と走り向かうは真ん中で光を放つレオンボール。不意打ちとは上手いっ!舞は心の中で感嘆の声を漏らした。そして、イーピンの姿を見て相手チームのディーノが動きを見せた。
「わりーがレオンは……やらないぜ!!」
「ん?」
「どこ投げてんだおめーは!」
獄寺の怒声が響き渡る。ディーノの投げた雪玉は、物凄い勢いで有らぬ方角へと飛んで行った。忘れていたが、ディーノは部下がいないと運動音痴になる体質であった。ランボは既に眠りについているし、ディーノは使えない。それでは自分がやるしかないと今度は獄寺がイーピンへ向かって雪玉を放った。
「ったく、しょーがねーなー。どいつもこいつも!」
だが投げられた雪玉はイーピンに当たることなく、地面に叩きつけられた。全て彼女の得意技である餃子拳で防いだのだ。華麗なチビだぜ…と賞賛するディーノだが相変わらず投げる雪玉は全て意味の無い場所に。獄寺もツッコミを入れる他無い。
「やっぱりすごいやイーピン!!」
「イーピンちゃんやるぅ!」
「これで互角だよ!」
イーピンの活躍により勝負は互角。ツナ達は歓声を上げるが突如、鼻が曲がるような異臭を鼻腔がくすぐった。あまりの臭いにツナ達は顔を歪める。舞は慌てて、鼻を手で覆った。
「ちがうよツナ兄〜〜!」
「うがっ!」
「なんだ…この…空気は…」
「うっ…たぶん、餃子拳の…せい」
舞の言う通り、これはイーピンが放った餃子拳の所為であった。餃子拳の餃子エキスが風下であるツナ達側に流れてきているのだ。ツナ達は異臭に苦しみ攻撃をする手を止めざる終えない。互角を保っていた均衡が崩れ、了平が先にレオンボールへと足を運んだ。
「弾幕が薄いわ!!光る玉はもらったぞ!!」
「あ!このままじゃっ」
「ピンチだよ。ツナ兄!」
「わかってるけど」
「ヤベー!」
このままでは白マフラー隊が負けてしまう。ツナ達も攻撃をせねばと理解はしているが体が自由に動かない。ツナ達を囲むように充満している異臭は中々、過ぎ去ってはくれなかった。
ーー…ドガァン
うおっ。無念!大きな音と共に了平はそう叫びながら吹き飛ばされた。突如、校庭で爆発が生じたのである。爆風により、皆の髪が靡く。その予告の無い爆発に両チームとも唖然として、口をポカーンと開いた。
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