×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


繋がっていたい言葉


 嫌も嫌も好きのうち、なんて初めに言い出した人はもう一度考え直した方が良いと思う。幾ら相手から好かれたって苦手なものは苦手だし、嫌なものは嫌だ。まあ結局何が言いたいかと言えば私は呪霊が嫌い、ただその一言に尽きる。

「……はあ」

 呪いの王である両面宿儺から、呪霊に好かれる体質であるという絶望的なカミングアウトを受けて早三日。私はかなり真剣にへこんでいた。

「おいあんま気にすんな。今までと何かが変わるわけじゃあないし」
「しゃけ」
「全然違うよ…なんかあれから呪霊に追いかけられる夢ばっかり見るし。現実でもそうなったらどうしよう。ああ逃げたい。任務行きたくないいい」
「暗っ!ネガティブの洪水か!溺れるわ!」

 パンダ君には申し訳ないけれど元より私は陰気な性格だから悪い方に悪い方につい考えが及んでしまうのだ。周りからしたら面倒の塊だろうけど。うう…面倒くさくてごめんなさい。
 ネガティブが徐々に加速しぐるぐるとした自己嫌悪が始まったその時、頭に温かな手が乗る。何だろうと思って上を向けばそれは棘君のもので、ぽんぽんぽんとリズミカルに優しく叩いてくれるから毎度お馴染みの感覚が私の目元を襲った。

「……ありがとう棘君。ちょっと元気になった」
「高菜」
「相変わらず棘は羽衣に甘いな」

 パンダ君の言うように、泣きそうな私に逸早く気付いて甘やかしてくれるのは何時も棘君だったりする。同い年だけど私にとっては優しいお兄ちゃんみたいな存在だ。棘お兄ちゃん、なんてちょっぴり図々しいかな。

「そう言えば真希ちゃんは?」
「あー真希なら一年ズのとこ行ってる……ってやべえ!!アイツ絶対地雷踏んでるわ!!」
「こんぶ!!」
「二人共いきなり如何したの?」
「そっか。羽衣は部屋に籠ってたから知らなかったんだな。実はーー」











 虎杖君が死んだ、なんて全然知らなかった。
三日前まで普通に話していたのに。
一緒にケーキ屋さんに行こうって約束したのに。
何でこうも人の死って呆気ないのだろう。
 誰かを救いたいと願い行動した人が死んでしまう世界線なんて消えて無くなってしまえばいいのに。

「………こういう時、泣かないんですね」

 恵君が私の隣に座る。
真希ちゃんたちに会って来たのだろうか。

「泣けないの。涙で救済できるのはあくまで自分だけで、死んでしまった人を救済することはできないから」

 まあ別に私は私を助けたくて泣いているわけではないけれど。全ての感情が涙に直結しているだけなんだ私の場合。それでも、時には我慢することだってある。

「……初めてだったんです。同級生が死ぬのは」
「うん」
「だから、どういう顔をしたら良いのか分からなくて」
「うん」
「羽衣さんは、誰か身近な人が亡くなったこと」
「………あるよ。」

 大好きな人だった。温かくて朗らかで優しくてまるで春みたいな人だった。泣いてばかりの私に怖くならないお呪いを掛けてくれる人だった。
 けれど私はそんな彼の優しさばかりを受けて彼の心の叫びに気付くことはなかった。
 そればかりか最期私は、大切な人を二人も傷付けたのだ。

「すっごい悲しかったしもう消えてしまいたいって思うくらい寂しかった。でもそれは私のものだし、恵君の感情は恵君だけのものだから……虎杖君を忘れるも思い続けるも全部恵君の自由で良いんじゃないかな」

 いつかあの世でもう一度会えたのならば。
私は。ねえ、傑君。