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この青さがいつか灰になろうとも


 透き通るような青みを帯びた空の下、たったったっと軽快に地面を蹴る。こういう日は好きだ。澄んだ空気も乾いた爽やかな風も心地が良くて。目に映る景色が何時もより鮮やかな色を纏っているように見える。  

「あっ、恵くーん!虎杖くーん!」

 探していた人物を見付けて、おーいと手を振る。男子寮の中まで入るのは流石に難しいからその前に見付けられて良かった。私ツイてる!

「羽衣さんおはようございます」
「おはよう!今日ね虎杖君にこれ持って来たの!」
「俺…?」

 はいと肩に下げていたトートバッグからある物を取り出し虎杖君に渡す。やっぱり高専に入学したからにはこれがないと感じでないよね。

「おお制服!」
「夜蛾学長に渡してくれって頼まれて。間に合って良かったね」
「あざっす!えっと、羽衣……さん?」

 私の呼び方に迷ったのか、こてりと首を傾げた虎杖君。あ、そうだ。まだちゃんとした自己紹介してなかったんだっけ。いけないいけない。

「咲下羽衣です。苗字でも名前でも好きなように呼んで。二年生で虎杖君より一つ歳上だけど気軽に話してくれたら嬉しいな」
「うっす!」
「恵君とも仲良くしてあげてね。すんごい良い子だから」
「いや、俺の保護者ですか」
「んふふ偶には先輩面したいなって」
「似合わないんでやめてください」
「あー!そんなこと言う子には最近できたケーキ屋さんに誘ってあげません!」
「羽衣さん羽衣さん!俺は?」
「虎杖君はいいよ一緒に行こ〜!そこのケーキすっごく美味しいの!」
「マジ!?やりぃ!」

 喜ぶ虎杖君の姿に思わずえへへと笑みが零れる。恵君とはまた違うタイプの可愛さでお姉さんはもうメロメロだ。後輩可愛い。

「おい小娘」

 だらしなくデレデレしていたからバチが当たったのか。突然虎杖君の左頬から目と口が現れて、驚きから「ひやあ」と声を漏らす。な、なにこれ!
 反射的に恵君の後ろに隠れれば恵君から「おい」というツッコミをもらった。さっきは調子乗ってすみませんでした。

「悪い羽衣さん。コイツ勝手に出てくるんだ」
「そ、そうなんだ。それは、なんて不気味……じゃなくて、大変だね」
「ーー貴様、変わった匂いがするな」
「え?」
「こらっ勝手に喋るな!」
「呪霊が好む匂いだ。その様子じゃ今まで苦労も多かろう」

 どくん、と心臓が嫌な音を立てる。
 呪霊が好む匂い?そんなものあるわけないと突っぱねたいところだけど、呪いの王の言うことを100%違うと断言できる程の気概も度胸も生憎持ち合わせてはいない。匂いなんて自分じゃ如何することもできないじゃないか。終わった。

「……ごめん二人共。私ちょっとダメージ凄過ぎて立ち直れそうにないから部屋戻るね」

 取り敢えず、現実逃避して部屋に籠ろう。









「なあ伏黒。羽衣さん大丈夫か?すっげえ落ち込んでたみたいだけど」
「あの人ホラー系の類い一切駄目だからな」
「えっ呪術師なのに?」
「呪術師でも呪いが苦手な人は一定数居る。まあ羽衣さんみたいに長いこと呪術師やってきてあそこまで怖がる人は稀だけどな。任務の度に泣いてるらしい」
「ふうん。でも羽衣さん良い人だよな。呪い怖いのに先輩たち助けようとしてくれたし」
「ああ。呪術師としても人としても尊敬してる。……何だその顔」
「いやあ伏黒って羽衣さんのこと好きなのかなあって、いたッ!ちょっ、何で殴んの!?」
「黙れ」