受け溺愛変態×平凡

俺が全寮制の学校に編入してから、3ヶ月がたった。

今まで生きてきた中で、最も濃い3ヶ月
だった。

うん、つらかった。

というのも、俺と同じ日に編入してきた、黒いもじゃもじゃ頭で、だっせぇ瓶底メガネをかけた日向奏(ひなたかなで)が原因だったりする。

同じ編入生だったからか、日向にものすごく気に入られ、なんか知らない間に、親友に格上げされていた。

同室ということもあり、仲良くなれたのは喜ばしいが、日向の友人関係に問題があった。

日向は、なんか知らないけど生徒会の人たちとか、風紀委員の人たちとか、不良みたいな人とか爽やかな人とも友達になったようで、どうやらそいつらは、この学園の生徒から人気があるみたいだ。

日向がそいつらと話すだけで、生徒たちからものすごいブーイングをされるから、人気の高さがよくわかる。

たしかに美形だもんな、そいつら。

俺は可もなく不可もなくな、ふっつーの平凡顔だからね、羨ましいよまじで。

で、話を戻すけど、その人気者達は、日向のことがものすごく気に入ったみたいで、まだ彼らに会ったことはないけど、日向に懐かれている俺が気に食わないようで、めちゃくちゃ嫌われているらしい。

うーん、理不尽。

なんでだろ?
友達取られてぷんすかしてんのかな?

そんで、生徒たちは、尊敬している人と仲良くしてる日向が許せないのか、日向に嫌がらせをしている。
…が、日向は人気者達に守られてるから中々手が出せない。
そこで被害に合うのが俺だ。
日向に何も出来ないなら日向の一番身近なやつに嫌がらせをしちゃおう!ってなったみたい。

嫌がらせっていっても、不幸の手紙とかを下駄箱に詰めたり、暴言を吐かれたりする程度だけどね。

俺からしたら、俺は人気者たちに好かれてるわけじゃないし、てゆーかむしろ嫌われてるんだから嫌がらせされる意味がわかんないんだけどさ。
てゆうか会ったことすらないし?

まじでとばっちりじゃねーか。

とにかく、編入してから今まで、日向に連れ回されたり親衛隊に呼び出されたりで、まともに授業受けれないし。ほんと最悪だった。

いや、現在進行形だけどね。

今日はめずらしく日向が俺のそばにいない。
なんでかって言うと、今朝早くに寮でかかった放送のせいだったりする。

放送したのは生徒会長で、話があるから生徒会室に来いとの事だった。

なんとなくなに言われるか想像つくけど…
てゆーか、まじで日向に過保護すぎないか?
いくら友達だからって日向の事大事にしすぎだろ。

まぁ放送のおかげで朝から日向のおっきい声聞かずにすんでよかったけど。
日向の声まじうるさいの。
まだ日向寝てるんだろうなー
あの放送で起きなかったとかすごい…

とか思っているうちに生徒会室到着。

高級そうな生徒会室の扉を3回ノックすると、入れ、と威厳のある声が聞こえた。

許可がおりたので、扉をゆっくり開けると、広い室内には、生徒会と風紀委員長が勢ぞろいしていた。

みんな一斉に俺を見て睨みつけてくるから、それに驚き、眉をへにょりと下げて目線をうろうろさせていると今度は一斉に目を見開き顔を赤くした。

しかも二度見された。なんで?そんな二度見するような顔じゃないと思うんだけど。

顔を真っ赤にして俺を見ている彼らに思わず首をかしげると、ハッと首をぶんぶんと振った生徒会長が真っ赤な顔のまま睨みつけてきた。

「お、おせぇんだよ、平凡。俺がわざわざ放送してやったんだからさっさと来やがれ。」

真っ赤な顔でまくし立てたと思えば、俺の反応を伺うように不安そうな顔をするからどう反応をしたらいいのか分からない。

「た、たたたたっ、ただでさえ奏に近づいていて腹立しいのに、えっと、あのですね…そう!こ、ここここれ以上僕を苛立たせないでくれないかな!?」

会長に引きつった笑みを返していると、今度は副会長が綺麗な王子様顔を真っ赤にして、ちらちらと俺を見ながら罵倒してきた。噛みまくりだけど大丈夫か?

「て、てゆーかさぁ、平凡顔が俺らのかわいい奏ちゃんに近づかないでくんなーい?奏ちゃんが汚れるんだけどー。」

くそ、会計め。
言いたい放題言いやがって。別に俺から日向に近づいたわけじゃないし。
でもそんな顔赤くしながら言われても全然怖くないぞ。
そんで会計の横に座ってる書記は、こくこく頷いてるけど、なに?喋るの苦手なの?

「あ、はぁ…」

大分間を開けてしまったから誤魔化すようにへらりと無理矢理作った笑みを浮かべ、気の抜けた返事をすると、顔を真っ赤にして眉間にシワが寄せた風紀委員長がソファーから腰をあげ、入口付近に立ったままの俺のほうに近づいてきた。はぁはぁと呼吸が荒いのが心配だ。

てかなに、心配してる場合じゃないし!
これ殴られる感じですか?
やだやだ無理来んな

ダンッと物凄い音が耳元で鳴り、恐る恐る音の発信源を見れば、俺が寄りかかっていた壁を殴りつけたのか、風紀委員長の拳があった。
冷や汗をかき、風紀委員長の顔に視線を向けると、思っていたよりも近くに顔があり、さらに冷や汗をかく。

ちかすぎ。息荒いから顔にかかりまくり。こわ。

「お前…っ、さっきからいちいち可愛すぎんだよ!穴がガバガバになるまで犯してやろうか!?」

ぁあん?と、不良じみた低い唸り声を出す風紀委員長に、思わず首を傾げる
可愛いって何?
いや、それよりも、

「おか…す?」

なにを?穴?ガバガバ?

よくわからない単語に頭にはてなマークが浮かび上がる。

俺がよっぽど不思議がっている顔をしていたのか、風紀委員長が怪訝そうな顔をする。

「…っ、あっは、風紀いいんちょーそんなちんちくりん抱けるのー?まぁ無理だろうから仕方なく俺が抱いてやってもいいけどー?」

訳がわからずしばらくお互い無言で見つめあっていたが、けらけらと笑いながら話に入ってきた会計の言葉に、やっと風紀委員長から目を逸らす。
周りが何やら抜け駆けするなとか言ってるけどさっぱりわからん。

え、ていうか…え、抱くって…

「俺男なんですけど…」

「はぁー?見れば分かるんだけどー?」

会計に、何当たり前の事言ってんだって目で見られてるけどこっちからすればお前が何言ってんだって感じなんですけど

「いや、だって抱くって言うから…俺男なんで無理ですよって…」

言う意味で…。
皆さんが目を見開いてこっちを見てくるから思わず言葉尻がもごもごしてしまった。
なんでそんな顔してんの?

「ど、どうして無理だと思うんですか?」

今まで静かに俺を見つめてた副会長がどこか焦ったように問いかけてくる。

どうしてって…

「いや、だって入れる場所ないじゃないですか…」

今度はこっちが、何当たり前な事言ってんだって顔で見てやると、全員が驚いた顔をしていた。

「…お前…まじで言ってんのか…?」

今だに俺を囲むようにして壁に手をつけていた風紀委員長の手が、俺のほっぺたを恐る恐るさわってきた。

なにいきなりくすぐったいんだけど…

「何がですか?別に普通の事言っただけじゃないですか…」

うっとおしくて、委員長の手を退かしながら言うと、委員長は信じられないものを見る目で俺をみてきた。

感じわるー。

内心ぷんすかしてると、生徒会室に並んでいる他の机よりも更に豪華な感じの机に頬杖をつきながらこちらを見ていた会長が、くつくつと笑いながら此方に歩いてきた。

げー、またなんか来たんですけどー

此方まで歩いて来た会長は、俺の前にいる風紀委員長を腕で強引に退かし、俺の顔をまじまじと見て来た。

こんな面白みのない顔見てもたのしくないですよー。

俺の思いとは反対に、何が面白いのか、顔を真っ赤にしてにやにやと顔を緩め何故か興奮しているのか小さく深呼吸をした。

「編入生とはいえ、編入してから3ヶ月も立つのにまだ学園の風潮に染まらずにいるのか…」

内心びくびくしながら生徒会長を見ると、さっきまで浮かべてたにやにやとした笑みではなく、うっとりとした笑みを見せてきた。

え、なにその変わりよう…

「男同士でヤる時はここを使うんだよ」

「…っ、ひ!?」

はぁはぁと息を乱し、笑みを浮かべたまま俺の腰に手を回したかと思えばそのままスルリと俺の尻を撫でてきた。
え、なに?ここを使うって…え?

「…お尻ですよ?」

「尻にもあるだろ?穴が」

会長と同じように左の尻を撫でてくる風紀委員長に耳元で囁かれた言葉に思わず固まってしまう。

あ、穴…そりゃあるけどさ、穴。
だからってこんな所使うのか!?
頬を真っ赤にしてあわあわと視線を泳がせていると、ガタン!と派手な音がした。

恐らくソファーから勢い良く立ったであろう副会長を見ると、口に拳を当てて何かを耐えるように潤んだ目で俺を見ていた。

「だ、だめだもう!可愛すぎです!可愛すぎるんですよお!」

「かわいい事ばっか、め!」

「もう我慢できなぁい!さっきから可愛すぎぃ!奏なんかもうどうでもいい!」

いきなり叫び出した副会長にびっくりしていると、書記や会計まで叫び出した。
何を言っているんだろうこの人達は。


「あ?こいつの可愛さがわかったのは俺のお陰だろーが、だから俺のだ」

「は?こいつが生徒会室に入ってきてから既に目付けてんだよバカ風紀、お前奏が好きなんだろ?そっちは譲るからお前にこいつはやらん」

「こいつの方がいい。奏はお前にやる。」

え、今更だけどこいつらって恋愛的な意味で日向が好きだったのか?
なるほどな、確かにこいつらの日向に対する態度は友達って感じじゃなかったしな。
でも、なんなんだこいつらの変わり様は…
日向が好きで、日向と同室で仲のいい俺に嫉妬して今まで俺を嫌ってたみたいだけどなんか今は日向を譲り合ってるし。

さわさわと俺の体を触りまくる生徒会と風紀委員長にぞわぞわと鳥肌が立つ。
主に尻を触ってくるのがすごく嫌だ。
いつの間にか、ソファーに座っていた会計や書記や副会長まで俺の尻を揉んでくるから抵抗しようにも周りを囲まれて身動きが取れない。
さっきから穴を触ってくるやつがいるんだけど誰だよ!
男同士ではそこを使うと教えられたばかりだから触られると凄く不愉快!

「や、ちょっ、やめろよ変態!」

尻に群がる手を退かそうと、手を掴むと誰かに逆にぎゅっと握られ、そのままさわさわとやらしく撫で回される。
わ、さらに抵抗出来なくなった!
俺の変態!という言葉に興奮したのか、生徒会長が耳元ではぁはぁ言ってるのがすごくうるさい。

「触り心地がいいお尻ですね…ぁあっ!その嫌がる顔も溜まりません!なんてやらしいんだ!」

「ずっと触ってたいなぁ」

「ん…」

心地良さそうな顔をして俺の尻を撫でる副会長とさわさわと強弱をつけてやらしく俺の腰を撫でる会計と俺の胸元を一心不乱に撫で回す書記を冷めた目で見る。
こいつらもさっきから何してんだ。
変態ばっかりじゃないか!

「あの、セクハラしたいなら日向にやったらどうですか?」

好きなんですよね?と首をこてんと傾げると、より強く体を弄られた。
な、なんで!

「やべぇなんかこいつの行動全部可愛く見えんだけど。」

「安心しろ、風紀。俺もだ。興奮し過ぎてやばい…くそ、なんでもっと早くにこいつの可愛さに気づいてなかったんだ…!」

そんな初めていらない。
ところで日向の話はスルーなの?
真顔で会話を聞いているとほっぺたをふにふにとつつかれる。

「さっきの真っ赤になった可愛らしい顔をもう一度見せてください、ね?」

「かわいいかわいいって、してあげる!」

「いじめたくなっちゃうね〜!そそられるなぁ。もっといろんな表情みせて?」

副会長と書記と会計にそれぞれ頬をふにふにと触られているから俺の顔は大変恥ずかしいことになっている。
う、うわぁ、俺絶対変な顔してる…!

恥ずかしさに、ぶんぶん首を振り手を離し顔を俯かせるとぎゅうぎゅうと抱きしめられた。
可愛い可愛いと言っているけど、彼等には俺にどんなフィルターがかかっているんだろうか。
思えば日向の事だってオタクスタイルなのに可愛い可愛い言ってたしな。
変態だな。
まぁ要するに誰でもいいんだろ。
きっと俺にこんなセクハラしてくるも今だけだ。
明日にでもなればまた日向を追いかけ回して、日向に連れ回される俺を睨むんだろう。

「セクハラはやめろ変態!!」

体を這い回る手を払うのに必死な俺はこれからずっと彼等に追い回される事になるなんて、微量も考えていなかった。




おわり。


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