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出てって!と再度強く言う葵様に、我慢していた涙がポロリとこぼれ落ちた。


「ひ、酷いです…!私は葵様が大好きなんですっ!いらないなんて言わないでください…っ、葵様ぁ…」


涙を拭う事もせずに葵様の名前を呼び続けていると、葵様は満足気な笑みを浮かべた。


「捨てられたくなかったら僕の言う事をちゃんと聞くんだよ?」

「は、はい…葵様ぁ…」


涙で濡れる頬を葵様の手のひらで拭われ、その暖かい手が心地よくて、頬をすり寄せた。
葵様に甘えるのに必死な俺はそれを生徒会の皆さんが食い入るように見ていたのに気づかなかった。


「なぁ、そいついらないなら俺にくれよ」


葵様の綺麗な手にすりすりと頬を擦り付けていると、それを邪魔するようにぐいっと肩を誰かに引かれた。


葵様の手から離れさせられたのが不満で、振り返り睨みつけると、
会長さんにそのまま抱きつかれた。
どうやら俺の肩を引っ張ったのは会長さんだったようだ。
ていうか会長さん今なんて言った?もらうとか言わなかった?


「え〜っ!かいちょーばっかりズルいよぉ!俺だってアズちゃんほしいしぃ!」

「…もらう。」


なんか皆して欲しいとかいい始めたぞ。
え、欲しいって俺の事?


「アズちゃんって年上なのになんか甘やかしたくなっちゃう〜」

「もぐもぐ…アズマの手作り旨い…いい嫁になる…」


俺の事を見てくるたくさんの目に居心地が悪くなりうろうろと視線を彷徨わせる。
書記さんが葵様のお弁当食べてたの見えた気がするけど気のせいだな。
いや食べてたわ。めっちゃもぐもぐしてる。
俺の視線に気づいた書記さんがほっぺたいっぱいに頬張りながら親指をグッと立ててきた。
意味わかんねぇ。てゆーかその弁当作ったの俺じゃなくて八神家専属のシェフだし。

特に意味もなく、俺を今だに抱きしめている会長の白いシャツをジッと睨みつけていると、今度は葵様に腕を引かれ、葵様に抱きしめられた。
あ、葵様の匂い…!はぁはぁ舐めまわしたい…!押し倒したい…!


葵様の匂いを嗅ぐように首筋に顔を埋めると優しく頭を撫でられた。
葵様お優しい…っ!
葵様素敵!


「何をいってるんですか?アズマは僕の執事です。あなた達は志乃の事を追いかけていればいいじゃないですか」

「それはお前もだろ?昨日までは志乃に興味なんかなかった癖して今日のその態度…執事に嫉妬でもしてもらいたかったのか?弁当もわざと忘れたんだろ?」


会長が薄ら笑いを浮かべながら言った言葉に、葵様の俺を抱きしめる力が強くなった。
葵様…?


「そぉだよぉ!まぁ俺は志乃ちゃんよりアズちゃんの方が好きだけどねぇ。志乃ちゃんって面白いけどうるさいしぃ。」

「アズマ…かわいい…欲しい」


俺にウインクをしてくる会計さんと、何かを訴えかけるようにジッと見てくる書記さんに苦笑いを返す。
会ったばっかりの人にかわいいって言われてもなぁ…


「俺も志乃はどうでもいい。暇つぶしには丁度いいけどな。それよりもアズマだ。今時そんなに従順な執事はめずらしい。」


俺のとこの執事は無駄に口うるさいからな。と苦虫をかむように顔を歪めた会長さんに首をかしげる。
今時の執事ってそんなもんなのか?
まぁ俺が従順なのは坊ちゃん達が好きすぎるからだと思うけど…。


「アズマが従順なのはぼくに対してだけですよ。そうだよね、アズマ?」


優しく頭を撫でられ、嬉しくなり何度も頷く。


「はいっ!俺には葵様だけです…!」





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