八神家の執事さまっ!〜八神家長男の場合〜2
つ、椿様かわいすぎる…!
思わずトロンとした目で椿様を見つめると、笑みをもっと深くした。
椿様が綺麗すぎて、ぼーっと見とれていると、気がつけば俺はベットに横たわっていた。
顔を前に向ければ、先ほどまで見下ろしていた綺麗な顔がある。
あ、あれ?いつの間にか体勢が逆になってる?
予想以上の積極的さに心臓が高まってしまう。
「そんな積極的なところも素敵です椿様っ!」
たまらず口に出してしまえば、そう?っと少し頬を染め、いたずらっぽく微笑まれた。
か、かわいい…
てゆーかこの状態から見ると、椿様も俺の事が好きって思ってもいいんだよな?な?
「私…すごく嬉しいです…」
椿様に優しく指先で頬をくすぐられ、椿様を見つめながらその手に擦り寄ると、椿様の碧色の眼が妖しく光ったように見えた。
「僕も嬉しいよ、アズマ。アズマのはじめてだもの、ちゃんと優しくするからね?」
え?っと思ったのも束の間、俺の尻に違和感。
なんで尻触られてんの?
え、はじめてって何が?
優しくって何を?
椿様はなんでそんな雄くさい目で俺を見てるの?
「つ、椿様?」
恐る恐る見上げれば、上唇をやらしく舐める椿様が。
「やぁっとアズマの事を抱けるんだね、嬉しいなぁ…」
ひぃいいいいいっ!?
こ、こいつ俺を抱く気だ…っ!
「違います椿様っ!逆です!逆ですよ!」
私が椿様を抱くんですよ!
そう言って椿様を押し倒そうとするけど、椿様の力が強くてなかなか押した押せない。
「なぁに言ってるの?可愛く抱かれるのはアズマでしょ?」
「違います!椿様です!失礼ですが、私の身長が182pで、椿様の身長が171p…。身長的にも椿様が抱かれる側なのでは!」
そう!そうだよ!俺めっちゃ身長高いんだよ!
そんなやつ抱こうなんて思う奴いねぇよ絶対!
「そんなの寝転がれば同じでしょ?それにこう見えて僕結構力あるし」
ね?っと微笑んでくる椿様はかわいいけど…かわいいけどぉ!
俺が抱かれるなんてありえない!せっかく抱いても支障がないように椿様達が育つのを何年も待ってたのに!
「…っ!お、俺!顔も普通だし可愛くないし抱いても楽しくない!」
「僕には君が可愛く見えてしょうがないよ?だから問題ないね?」
俺が必死に言いすがってもケロリと言い返され、思わず言葉に詰まってしまう。
ま、まさか男に可愛いって言われてときめく日がくるとは…
早くなった心臓の辺りをギュッと握り締めれば、ほら可愛いっとおでこに唇を落とされた。
「執事がお坊っちゃまの性教育をするのが普通なのに…」
「そう?ご主人様が執事を躾けるってゆーのもあったっていいじゃない」
こ、こいつ譲る気ねぇな…
お、俺の方が八才年上なのに…っ!
ってか高二の子供に言葉で勝てない執事ってどーよ?
悔しくて椿様を睨みつけると、困ったように笑って肩を竦めた。
「いつものように温厚なアズマも可愛いけど今みたいな、言葉使いも乱暴で表情が豊かなアズマも可愛くて困っちゃうよ」
「…あっ!」
やっべぇ!
ほんとだ!テンパり過ぎて敬語使うの忘れてた!
「も、申し訳ございません!椿様に無礼な態度を…っ!」
椿様に慌てて謝れば、ゆるゆると首を横に振り、またおでこに唇を落とした。
「気にしないで?新しいアズマを…本当のアズマを見れて嬉しいよ?」
「…っ、とか言いつつ何俺の尻を触ってやがるんですか!やめやがれですよ!」
懲りない椿様の腕を掴み、なんとか阻止をする。
油断も隙もあったもんじゃねぇな…
「だって今そういう雰囲気だったじゃない?ね、いいこだから大人しくしてて?」
椿様の優しい微笑みに、思わず頷きそうになり、慌てて首を横に振った。
「やです!」
何度も何度も、駄々を捏ねるように首を横に振っていると、椿様がしょうがないとでも言うように、困ったように笑った。
わ、わかってくれたのか…?
思わず目を輝かせ、キラキラと椿様を見つめるが、それは長くは続かなかった。
「そんなに僕の言う事が聞けないなら、躾けないとね…?お仕置きだよ、アズマ」
語尾にハートマークが付きそうなくらい甘い声でとんでもない事を言い放った椿様に、思わず笑顔が固まる。
え、お、お仕置き?
冗談かと思って椿様を見るけど、うん、ダメだこれ。マジなやつだ。
思わず逃げようと、押し倒されたままの体に力を込めれば、押さえつけられた両手に強く力を込められる。
「アズマ…?」
俺の腕を押さえつける力はとんでたもなく強いのに、顔は笑顔のままの椿様に小さく震える声ではいと返事を返した。
「主人の言う事は、絶対…だよね?」
言い放たれた執事殺しな言葉に、俺は悲鳴をあげる事すらできなかった。
(わ、私っ!ほ、他のお坊っちゃま達を起こさなくては…!)
(今日は休日だし、もう少しくらい寝させててもいいじゃない?ほら、続きするよ?)
(いやぁあああああああああああっ!!)
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