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いい子と言われ、頬を撫でられてご機嫌な俺は、葵様が自慢をするように会長さん達に笑みを向けていた事に気づかなかった。
「なるほどな。まぁいい。要はアズマを懐かせればいい話だろ?」
「俺そういうの得意だよぉ〜!」
「お菓子…あげる。」
「いや、懐かせるって俺動物じゃないんですけど。ってゆうかお菓子貰って懐くほど子どもじゃありません!」
彼等の言葉に引っ掛かりを覚え、睨みつけると、彼等の目が何故かギラついた。
え、なに?
「なぁんかアズちゃんの事本気で懐かせたくなっちゃったぁ。俺こんな気持ち初めてぇ。副会長お弁当忘れてくれてありがとお」
葵様ににっこりと笑顔を見せた会計さんに葵様が舌打ちをした。
な、なんかお弁当届けに来ただけなのにめんどくさい事になったな。
てゆうか俺の何が気に入ったんだよ。
まぁ今は勢いだけで俺の事気に入ったとか言ってるだけで、俺の事なんかすぐ忘れるだろ。
そう自己解決すると、腕時計に目をやった。
なんだかんだで生徒会室に来てから30分くらい経ってしまった。
もうそろそろ出ていかなきゃ葵様の休憩の時間が無くなってしまう。
あいつらまだ言い合ってるみたいだけどそろそろ帰るか。
「葵様、私はそろそれ失礼します。」
まだ俺を抱きしめている葵様の袖を引っ張れば、優しく微笑まれた。
「そう。じゃあまた後でね?」
「…はい?」
何故かまた後でね?を強調して言う葵様を不審に思いつつそれを顔に出さないようにするりと葵様の腕の中から抜け出した。
うう、名残惜しい…
家に帰っても機嫌がよかったらおねだりしてまた抱きしめてもらお。
「では私はこれで失礼致します。」
書記からお弁当を奪い、言い合いを止めて俺をじっと見つめる生徒会の皆さんに一礼すると、生徒会室を出た。
俺を見ていた生徒会の皆さんが怪し気に笑っていたけど何だったんだろう。
まぁもう会う事も無いだろうし気にするだけ無駄か。
「葵様にまた抱きしめて貰えるかなぁ?」
葵様に抱きしめてもらう事で頭がいっぱいだった俺は、会長さんと会計さんと書記さんが嫌がる葵様を無視して、俺たちの屋敷に無理矢理押し入ってくるなんて事が起こるなんて考えもしていなかった。
おわり
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