3

ポカンと大口を開けて彼方を見ると、不機嫌そうに眉を寄せた。

「何?俺が帰ってきたら不満なわけ?」

「いや、違うけど…」

彼方が来てくれて嬉しいと微笑めば、再び頭を撫でられた。

「良い子。タロの観察しようと思って変装して自分を偽りながら見てたけど、他のやつには懐いてないみたいだね」

「彼方が誰とも仲良くするなって言ったんだろ」

今度は俺が眉を寄せれば、そうだったねと言って耳の裏をくすぐってくる。
こいつおれの事完全に犬扱いしてるな。
まぁきもちーからこのまま触られとくけど。

調子に乗った彼方がちゅーしてくるのを避けていると、ちょっと!と大きな声が聞こえた。

「さっきから黙って見てれば!なんなの!?2人はどんな関係なの
!?」

「だいたいてめぇ俺の名前は覚えてねぇくせに彼方の名前は覚えてんじゃねぇか!」

「彼方の名前を覚えられたのなら僕の名前だって覚えられるはずですよね!」

「名前…覚えて…!」

一斉に文句を言いはじめた生徒会に、口元が引きつる。
さっきまで黙ってたのにいきなりなんだよ。

てゆーかこいつら彼方の事好きなんだよな?
てっきり彼方と仲いい事を怒られると思ってたんだけどな。
どんだけ名前覚えて欲しいんだよ。
俺が何も答えないでいると、彼方が俺を隠すように抱きしめた。

「俺とタロは幼馴染。まぁ幼馴染より深い関係だけど。タロは俺の名前しか呼ばないよ?っていうか呼ばせないけど、ね、タロ?」

「…彼方がそう言うなら」

綺麗に微笑まれればそうとしか言えなくなる。
ほんと俺って彼方に弱いよな。

俺の言葉に生徒会は押し黙った。
なんでそんな悔しそうな顔してるんだろ。変なの。

でも、今まで俺に名前呼んでもらいたがった人なんて彼方くらいしかいなかった。
しかも俺の事嫌ってる人たちなのに…
…ほんとに変なの…。


「じゃあ、名前もう一回教えてよ。今度はちゃんと覚えるからさ。」

うつむいていた生徒会にそう声を掛ければ、彼方から怖い声が聞こえてきたけど、生徒会がすごく、すごく嬉しそうな顔をするから。

俺が名前を呼んだらどんな顔をするんだろって、ちょっぴりわくわくした。



おわり。

名前を呼んでほしい話し。


prev next
もどる

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -